沼らせ女

影神

沼らせ女??



「手伝ってくれたらぁあ、、


私ぃ~。好きになっちゃう、かもぉ?」



そんな甘い言葉に惑わされ。


今日も僕は彼女の言いなりになる。  



「これ、。」


彼女「わぁー!!ありがと~。


すご~いっ!」



女性A「またやらせてるよ」


女性B「ってか、自分でやれよ。」



彼女はパソコンが苦手だ。


いや。


そう取り繕って、楽をしているだけなのかもしれない。



男性A「何か手伝おうか??」


男性B「何か出来る事は無い??」



会社での男性からの人気はすごい。


その分。女性からの反感もすごい。



「また押し付けられたの??」


「いえいえ。


たまたま同じ様な感じだったので。」


「あなたも彼女みたいなのが好きなの??」


「そういうのじゃぁ、、」



期待していない訳じゃない。


いや。


期待しているのか??


いや。


ただの免疫が無いだけだろう。



「ふぅーん。」


上司は、僕を心配してくれているのだろうか??


それとも、彼女の嫌味を言っているだけなのか、、



上司「まあ、程々に。


"沼らせ女"には、気を付けなね??」


沼らせ女??


「、はい。


ありがとうございます。」


人付き合いが苦手な僕に。


上司は、優しく接してくれる。



上司「はいっ?」


「、、え?」


机に置かれたのは、お店の袋だった。


上司「いつも頑張ってるから。


ちゃんと、食べなさいよ??」


「あっ。


ありがとうございます。」


上司「あい。」



上司の容姿は、綺麗で。


上司じゃなかったら、僕には縁の無い様な女性だ。



僕のミスをサポートしてくれたり。


こうして。気も、使ってくれる。



彼女とは正反対で。


どちらかと言うと、物事はハッキリ言う性格だ。


だからか、男性からはあまり良くは思われてないが。


僕は、そんな上司がわりと好きだ。



好きと言う感情がどうなのか。


どう言った事なのかは難しいが。


上司として、いい人だと思う。



彼女「うわぁあ。


これってぇ、


最近出来たお店のやつじゃぁ、ないですかぁ??」


そんな考え事をしていると、彼女がやって来た。


「そうなんですね。


さっき頂いたんです。」


「超~!人気でぇ。


いつも行列が出来てて、、


私ぃ。まだ行ったことが無いんですよぉ、」


聞き耳を立てていた男性陣は、


ボードに外回りのプレートを貼ると。


急いで何処かへと向かった。


「あはは。


そうだったんですね、」



彼女「じゃあ。


これ、要らないかなぁ。」


そう言いながら売店の珈琲を渡すのを躊躇う。


彼女「この間。


助けて貰ったからぁ。


せっかく買って来たんだけど、なぁ?」


「あぁ。


ありがとうございます、」


彼女「じゃあ、今度。


私にも、これっ。



下さいね??」


何故か至近距離で見つめて来た顔に、


恥ずかしくて視線を反らす様にして返事をした。


「時間があったら、、今度。」


彼女「何かぁ?


私には。冷たいですねっ、、



もしかして。


私みたいなタイプ。嫌いですかぁ??」


胸を強調させるかの様に、彼女はすり寄って来た。


「、、いえいえ。


そんな事は。」


もう、限界だった。


僕は彼女の方を向く事すら難しかった。


上司「もう、就労時間ですよ??



持ち場に戻った方が、良いのでは?」


彼女「はーい。」


上司は、彼女に注意した。


上司「優しいのも程々にしないと。


あぁやって、調子に乗るのよ。



彼女。あなたに気があるじゃない??」


「いやいや、そんな訳は。



あのっ!


これ。ありがとうございます。



人気のみたいで、、」


上司「良いのよ。


"たまたま"用事があっただけだから。



さっ、あなたも早く仕事しなさい。」


そんな風に。


上司はいつもと変わらなかった。



だが。そんなある日、、



これは。どういう状況なんだ。



上司「何で、貴女が居るのよ。」


彼女「え~。先輩だってぇ、


どうして彼と。居るんですかぁあ??」


上司「もともと彼と仕事の事で話があったのよ。」


彼女「奇遇ですねぇ??


実は、私もなんですよ。」



久しぶりに開かれた会社の飲み会。


世間の流行り病でずっと逃れる事が出来たのに。


飲み会(時間外労働者)も。


遂には、再開してしまったのだ。



特に帰って用事がある訳では無い。



職場での交流は、必要最低限に留めてある、、


休日の付き合いや、仕事終わりの付き合い。


そんなものをわざわざ自分から求める、


機会を作る場すらも無くす様に努めてきた。



「じゃあ。僕はこれで、、」


自分に配られた食事と飲み物を収める。


1人あたりの支払い額が決まった所で、お金を置き。


二次会の話が行われる中。静かにその場を離れる。



上司「私も帰ります。


明日も仕事なので、ハメを外し過ぎない様に。」



男性C「仕事以外でも、氷の女だなぁ。」


女性C「ちょっと。聞こえるってぇ。」


これで。良いのだ。



彼女「私も帰りま~すっ、」


男性D「えぇっ。


もう帰るの??」


男性E「二次会。行こうよ??」


彼女「すいませぇ~ん。


ちょっとぉ。呑みすぎちゃったみたいでぇ、、」


無駄な付き合いはしなくて済む。



女性D「、、早く帰れよ」


女性E「マジ、ウザい。」


駄々を捏ねずに参加しただけ、偉い。



上司「ちょっと。待って、、」


??


上司「もし良かったら。。


違う所で呑み直さない??



月末の仕事の事で。話し、があって。」


「、、ふぇ。??」


不意に話しかけられて、つい。変な声が出てしまった。


上司「その、、


何か用事があったりしたら、


無理にとは、言わないけど。」



酒に酔っているのか。


何だか、照れている様にも見えた。 


きっと見間違いだ。



上司には、いつもカバーして貰っている。


僕も丁度仕事の事で聞きたい事があった。


「はい。


大丈夫、です。」


上司「良かったぁ。



じゃあ、、行こう。か?」



何だか変な感じがした。


こうやって、呑みに行くのは初めてかもしれない。


やっぱり。面倒見が良いんだなぁ、、



こういう所は、上司として。


無くてはならない部分なのだろう、、


僕には到底出来ない事だ。


にしても、、気まずい。



「何か、。気を使わせちゃいましたか??」


上司「ぅうん!??違うの。


たまたまタイミングが良いかな-って。さ?



さて、何処行こうか?」


何だか今日は、上司がいつもと違って見える。


久しぶりに外で呑んだからだろうか、、


僕は、酔っているのか。



「あ~。


いたいたっ、」


不意に腕に柔らかいものが当たる。



その声の主は彼女だった。


彼女「私と。


呑み直しましょう??」



こうして。


先程の会話に戻る。



彼女「はぁ、、


あっつぅうういっ。」


上着を脱ぐと、何故か開いたボタンから。


彼女の素肌が見える。


上司「何にする??」


「えっと、、


何にしましょうか。」


目のやり場に困った。


彼女「私にもメニュー見せて下さぁいっ。」


彼女の肌が視界に入る。


上司「そこにあるわよっ。」


上司のメニュー表がそれを阻止する。


彼女「何か、冷たいなぁ。



あっ。そうだ、これっ。


いつも御世話になっているからぁ、


ど~ぞっ??」


渡されたのは、可愛くラッピングされた箱だった。


僕は夢でも見ているんだろうか、、



何を隠そう。今日は僕とは無縁の。


『バレンタインデー』だった。



「あっ。


ありがとう、ございます。」


彼女「私が、一生懸命作ったからぁ。?


よく味わってぇ、食べて、下さいねっ??」


それは紛れもないチョコだった。



上司「チッ,」


「はぃ。」



僕は、今日。死ぬのだろうか、、


手作りのチョコなんて。初めて貰った。


「ちょっと、失礼します。」


とりあえず、トイレに行った。


「はぁ、、どうしよう。」



何だか上司は機嫌悪そうだし。


それに。舌打ち?したような、、



ちゃんと彼女の誘いを断れば。


でも、ずっとくっついて居たし、、


「どうすれば、、」 


そんな状況に。


再び助け船は出された。



上司「会計。済ませたから。


荷物だけ、持って来て?」 


「えっ??」


上司「行くわよ?」


「はい、、」


何だか物凄く怒っている。


僕が彼女を断らなかったからだろうか、、


つい、ふたつ返事をしてしまった。



トイレから戻ると、彼女は呑んでいた。


彼女「お帰りなさーいっ。


隣。座っちゃいましたぁ。」


「あの、すいません。


急用が出来まして、、」


彼女「えぇー、、


私ぃ。寂しいなぁあ。??」


「すいません。


チョコ、ありがとうございました。」


僕は逃げる様にして、荷物を取った。



すいません、、また今度。


そう、心で謝った。



上司は先に外で待っていた。


上司「はぁ。」


「すいません。


先に誘って頂いてたのに、


ちゃんと断れなくて、、」


やっぱり。不快な思いをさせてしまったのだろうか、


上司「良いの、、


何だかさめちゃったわね。」


「すいません、、」


上司「うぅん。


私が大人げ無かったわ。」



難しい、、


流される様に生きてきて。


こういう時。


どうしたら良いのか分からない。



そういう恋愛経験は。


相手が居ないと、出来ないのだから、、



しばらく会話も無く。駅の方へと歩いた。


上司「困らせちゃったわ、ね??


これっ。」


渡されたのはまた、箱だった。


上司「手作り。


じゃ、無いけど、、」


上司は苦笑いした。



「ありがとうございます。


嬉しい、です。」


上司「良かったっ。」


上司は、僕に優しく微笑んだ。



上司「また明日ね。」


「はい。」



そのやり取りは、いつもと変わらなかった。



僕は、少しだけ重くなった手に。


2つのチョコレートを持って。


反省と、ドキドキを抱えながら。


家へと帰るのでした。
























彼女「、、馬鹿ッ。」


上司「どっちが沼らせなのか、ねっ。」
























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沼らせ女 影神 @kagegami

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