第3話
午後の十五分ほどの小休憩の時間は大抵、仲良しの女子社員でつるんで自販機や給茶機のある休憩室に行く。コーヒーを飲みながら、テーブルの一角を陣取っておしゃべりをしていると、周吾さんも飲み物を買いに休憩室に入ってきた。買うのはいつも決まってコーラ。そんなちょっと子供っぽいところにも、キュンとする。
「ねえ、ミキちゃん」
周吾さんは、親しげにこちらに声をかけてきた。
「仕事が終わったら夕飯一緒にどう? いい店教えてもらったんだ」
また外食? それより、そんなに大胆に誘ったら付き合ってるのバレるよ?
「ええ、いいけど……?」
私の手料理は気に入ってくれなかったのかな。
「よかった! じゃ、終業後にね」
彼は嬉しそうに言って、コーラを手に休憩室を出た。残された方には、女性社員からの視線が集まる。
「ちょっとぉ! いつの間にか仲良いじゃない!」
「食事に誘われる仲になってたなんて、抜け駆けしたわね?」
「周吾さん、私も狙ってたのにぃ!」
一緒に休憩をとっている女性社員たちは、口々に言った。
「え、そ、そんなんじゃないよ!」
「だって他にもこんなに女がいるのに、彼が声をかけたの、ミキちゃんだけよ?」
「あの、前にね、仕事手伝った時に、いつかそのお礼をしてくれるって言ってて。それだと思う」
「へぇぇ。あやしいぃ」
「もうっ、なんでもないから! ほら、休憩時間終わっちゃうよ!」
時計を見ると実際にもう休憩時間は終わりで、みんなで慌てて休憩室を出る。ふふっと私は内心で笑った。いい店ってどこだろう。周吾さんとの食事がとても楽しみ!
私は自分のデスクに戻ると、イヤホンを片耳につけた。かなり自由な社風だから、音楽を聴きながら仕事をする人は結構いて、こうしていても咎められることはない。流れてくる音を聞きながら、定時までに終わらせるべく残りの仕事に取り掛かった。
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