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「あっ、ねぇ心霊番組やっているよ。テレビでやるの久しぶりじゃない?」
同僚である舞の家に今日は遊びに来ていた。
「こういうのはもう昔みたいに視聴者は信じなくなったからね。ってかテレビってどれも少なからずヤラセで出来ているんでしょ? それが分かっちゃうともう観る気無くすよね」
「ネットで調べれば心霊写真の作り方とか、タネ明かしが出てくるくらいだしね〜」
普段は観ないテレビも夕食の時くらいは点けていると途切れた会話がまた弾むきっかけになるから助かる。現代のテレビとしての役割は夢中になって観るものではなく、寂しさを紛らわすためにあるのかもしれない。
「真由って今まで怖い体験とかしたことある? 心霊的な意味で」
「怖い、体験か」
その質問に天井を見上げながら考える。あると言えばあるかもしれない。でもこれってどうなんだろう?
「う〜ん、怖い体験とはまた違うのかもしれないけど、他人の怖い話を聞いてゾッとしたことはあるかな」
「他人の話?」
「そう。大学生の時、夏に集まっていて皆んなで怖い話をしようってなったの。そこで聞いた話で未だに記憶に残っているのがあるんだよね」
「なにそれ、聞かせて」
舞が前のめりになって興味を示してきた。私はあの時、感じた胸騒ぎの寸分の一も舞に伝えることができないと思いつつもラフに話した。
「……ってな感じの話をしたんだけど、内容自体はいかにもフィクションぽかったんだけど、話している時の雰囲気がすっごく吸い込まれるように独特のオーラで一瞬でも本当の話かもって思っちゃたんだよね。だから私は話の内容よりも話し手に恐怖しちゃったって感じ。あれが演技だったら俳優になれるよ」
一通り話したところで舞の反応を待ってみたが黙っていた。
あれ? どうしちゃったんだろう。そういえばあの時も話終わってから皆んなしばらく黙っていたな〜。
「最初に話した二人はさぁ、確か小学生の時に広まっていた学校の怪談とか近所にあるいわくつきの建物の話だったのに、そいつだけ友達が幽霊に連れ去られて一時期、行方不明になったとか謎のお兄さんから君は霊感があるって教えられたとか、そのお兄さんは一般人は知らない世界を知っているとか色々とてんこ盛りで、そういう意味でも記憶に残るよね〜。あっ、そういえばこの話はあんま他人に話すなって最後に言ってたかも。私、話しちゃったよ」
はぁ、一気に喋ったから疲れちゃった。テーブルに置いてあるコップに手を取り喉を潤す。
「……ねぇ、どうしたの真顔のまま黙っちゃって。あっ、そうだ! それで私その連れ去られた友達のことが気になっちゃって……」
「翔くんでしょ?」
「えっ」
「その幽霊に連れ去られた友達って翔くんでしょ?」
私は名前を伏せて話していたはず。なのに舞はなぜ名前を知っているのだろうか。
「なんで知っているの?」
「実家が翔くんの家の近所なの。だから私も知っているよその話」
「そうだったんだ」
一気に空気は重くなる。まさか舞が翔君のご近所さんだったなんて。ってことか舞もあの騒ぎの中にいたってこと。つまり翔君とヤスとは知り合い、同級生。
「そのあと翔くんはどうなったのかは知っているの?」
「あぁ、で、私、まさにそのことが気になってヤスに後日、聞いてみたの。そしたら過剰に一人でいることを怖がったり、中学に進学すると今度は不登校になったり色々と大変だったみたいだけど高校生になったら完全に元通りになたって」
「それだけ?」
「それだけってどういうこと?」
「翔くん、高校生の時にまたどこかにいなくなっちゃったんだって。今度は自ら消えたっぽい。今も行方不明の、はず」
辺りは静かなのにピーという音が鳴っているような気がした。ヤスはどこまで知っていたんだろう。きっとまた行方が分からなくなったことも知っていた気がする。
あぁ〜やっぱり私の勘は当たっていたか。どうもあの話を聞いても納得いかなかったんだよね。そもそも私がヤスに改めて聞いたのも翔君がとてもその後も無事だとは思えなかったからなわけで。
これからは何か違和感を感じた時、何の根拠が無くても私はやはりこの直感を信じようと思う。何かに迷った時もこの勘を頼りに、自分がこっちだと思った方向へ従うのみ。
この世に霊感みたいな不思議な力があるなら、人の嘘を見抜けたり隠してあることがあるなら察知できるのも立派な能力じゃない?
私の勘は思った以上に当たる、そう確信できた日でもあった。
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