変わりたい
捻挫
プロローグ 蔓延る『青』
東京の、それも人通りの多い通りを真っ昼間に歩いていると、ふと思う。視界が真っ青だと。
目の前が真っ青なのは、俺の精神が
文字通り、目に写る人々が真っ青なのだ。いや、正確に言えば、二度と会わないだろう人々、その一人一人の髪が青いのだ。
皆、濃淡に違いはあれど紛うことなき『青』を
しかし、これが海だと言うのなら、次に起こることはわかっている。『青』ではない俺はここで泳げずに
初めは踊るように。そして、
そんな想像をしたからだろうか。周りの酸素が急に薄くなった気がした。不味い。
背中から伝わる冷たい壁の感触に安堵を覚えるが、それも長くは続いてくれない。『青』がここまで溢れてくるのではないかという不安がふつふつと湧いて、目深に被ったフードをぐいぐいと引き下げる。
俺は『青』ではない。かといってその対を為す『赤』でもない。ただ、『青』にも『赤』にもなれない半端者だ。
フードを握っていた手から次第に力が抜け、壁づたいにズルズルとへたり込む。
「クソッ、なんで俺だけが……こんな思いをするくらいなら、いっそ……」
いっそ『青』になってしまいたい。
口にはせずとも心の中で強く願う。
叶うはずもない願いに熱はなく、無性に身体の奥が凍えた。
それが高一の秋だった。
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