第24話 密室の謎《デクリメントとインクリメント》

『なんでノコギリ?』

『扉を裏から見たらどうなると思う』


 縦板が何枚も並んでいて、横板を渡してある。

 これで間違いないはずだ。

 表から横板はほとんど見えないが、裏からは丸見えのはず。


https://kakuyomu.jp/users/455834/news/16817330653981649976


 こんな感じかな。


『想像できた』

『じゃあ端の縦板を一つ切り離してみて』


 ここでノコギリの出番だな。

 縦板の一つを切り離すのか。

 当然、横板も短くなる。


https://kakuyomu.jp/users/455834/news/16817330653981678736


『想像できた』

『そうすれば中に入れるでしょう』


 なるほどね。

 細い手なら部屋の中に入る。

 当然つっかえ棒も外せるはずだ。


 中に入ればしめたもの。

 眠っている蜂人はちとを絞め殺した。


『でお次は』

『高圧洗浄機あったわよね。あれでポンドを剥がしたのよ。それから扉を組み立てて出る』


 ええとこうか。

 横板が短くなったから半分ずらしてくっ付けるわけだ。

 現場の映像の扉もそうなっている。


https://kakuyomu.jp/users/455834/news/16817330653981700917



『端の切った所はどうするんだ。そこだけ木が新しいだろう』

『塗料を塗るのよ。木を古く見せる奴ね。キーホルダーにも使われていたわ』

『それで欲しがったのか。バイク便で送れとか言うから、おかしいと思ったんだ』


『密室は条件設定の問題なのよね。棒で開かないようにしていたという事はそれ以上は開かない。逆だと条件をすり抜ける』

『ノコギリで切って、扉を小さくしたってわけだ。出る時はポンドでくっ付けたと。もう警察はそのトリックを見破っているだろう』

『ええ、トリックのつもりじゃなかったと思うわ。とりあえず逃げる時間が欲しかったのだと思う。たぶん逃げた先は合錠岬ね』


 その場所に行った時のラブポイントは+10だった。


 部屋の外に出ると大家さんが待っていた。


「死体はありませんでした。ですが、自殺するかも知れません」


 自殺するかも知れない、そんな予感がした。


「大変だわ」

「僕は今から行って彼女を止めてきます」


 駅に向かう。


『証拠はどうする? 筒には僕が触ってしまった』

『あんなの証拠にはならないわよ。誰にでも手に入るものよ』

『じゃあどうするんだ』


団符だんぷ刑事に密室トリックの事を報せて、コンビニの防犯カメラの映像を送ってもらったわ』

『で?』

『彼女、映ってたわよ。サングラスしてマスクしてたけど、彼女だわ。あの筒がボンネットに載ってたもの。車のナンバーから所有者を辿れるでしょうね。レンタカーなら借りた人物をね』

『それだけだと弱い』


『忘れたの』

『何を?』

『あなたの髪の毛を採取したわよね』

『したよ』


『犯人のDNAと比べたとおもうわ』

『それがあったか。亜振あふりさんのDNAと比べれば』

団符だんぷ刑事の話ではロープに皮膚細胞が残っていたようよ』

『素手でやったのか』


『手袋をなんで使わなかったのか分からないけど。たぶん作業する時は素手なのね』

『そうか。証拠は沢山残っているんだな』

『ええ、そう簡単に完全犯罪なんかできないわよ』


 何となく彼女は捕まっても良いと考えていたんじゃないかと思う。

 あの筒を処分しなかったのがその証拠だ。


『自殺を止めないと』

『だから、合錠岬に行くのよ。それに、自首をすすめるためにね』


 ニュースを見るとアークウィズ社が何十億の修正申告したというニュースが流れていた。

 労働組合が頑張ったらしい。

 会社はリベートの金を清算するつもりらしい。

 税金を払う事にしたようだ。


 専務が辞めると書いてあった。

 記事には修正申告との関連性が疑われるとある。

 疑獄に発展する可能性があるらしい。


 賄賂に関してはそのうち告発されるんだろうな。

 僕は賄賂が行われているかは知らない。

 ただ裏金の流れを追えば分かると思う。

 税務署と検察がその辺は調べているだろう。


 修正申告したからそれで終わりだとは考えてないはずだ。

 逮捕者が何人か出るに違いない。


 会社を正しい道に戻せたようでなによりだ。

 いよいよ事件も大詰め。

 亜振あふりさんには死んでほしくない。

 無理心中では結末があまりにも悲しい。

 どうか間に合ってくれ。

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