第3話 殺人事件《割り込み処理発生》
ええと、状況は絞殺で間違いないな。
意外と心は落ち着いていた。
病死しているかもと思っていたからだろうか。
入る前から何となく死を予感してた。
超能力とかそういうものはないが、こういう時の予感は当たる。
部屋を見てみる。
割と片付いている。
ベッドとコインシャワーみたいなのが設置してあって、スーツロッカーもある。
電気も来ているみたいだ。
簡単な料理を作れるようにキッチンもある。
あとは本棚に釣りと家庭菜園と日曜大工の本がある。
これは趣味なんだろうな。
釣り竿が置いてあるのが見えた。
壁には魚拓が沢山。
魚はバスかな。
大工道具が置いてあるのが見えた。
日曜大工が趣味らしいからな。
くんくん。
木の香りがする。
芳香剤かな。
お洒落な事だ。
「とにかく動かないで下さい」
「はい」
駐在さんに注意されたので、隙を見てこそっと部屋の様子を撮影した。
「外で待ちましょう」
僕は外に出された。
小屋の外観も撮影しておく。
小屋の電気は室外に設置してある小型発電機から引いてあるようだ。
換気扇もあるから密室とは言い難い。
木の引き戸も、穴が簡単に開けられそうだった。
扉の鍵はどうだったかな。
写真を確認してみる。
どうも棒を置いて開かなくしてあるだけのようだ。
原始的だな。
この鍵なら、針金を隙間から差し込めば、開けられる気がする。
扉に細工したような跡は写真でみる限り分からない。
駐在さんが連絡している間に、久美子へ事件の写真をメールで送った。
それからはパトカーが来るわ来るわ。
30台ぐらい来たんじゃないだろうか。
こんなに来るものなんだな。
「この人は?」
刑事らしき人が駐在さんに尋ねる。
刑事さんは目立たないカーキ色のコートを着ている。
とっても刑事さんらしい服装だ。
髪は角刈りで四角い顔。
柔道をやっていそうな体つきの良さ。
きっと強いのだろう。
「第一発見者であります。害者の同僚だそうです」
「名前は?」
「
尋ねられたので素直に答える。
「身分証明書はあるかな」
免許証を取り出すと、ナンバーを手帳に控えられた。
「じゃあ、最初から話してくれるかな」
雰囲気に反して優し気な刑事さんの声。
「課長から
「課長の名前は?」
「総務部の
「でここへはどういう足で?」
「ええと会社から電車に乗って千葉の
「さっきと違うじゃないか」
刑事さんの声に怒気がこもる。
違うと言われても、困るんだけど。
そんなのが重要なのかな。
「署で詳しく喋ってもらうぞ」
雲行きが怪しくなった。
何かあるとスマホで写真を撮って、後で整理する癖をつけたけど、今回もそれが役に立ちそうな予感。
「会社に電話してもいいですか?」
「駄目だ」
そう言われてパトカーに乗せられた。
参ったな。
容疑者になってしまったのだろうか。
犯人像を考えてみる。
僕を陥れる事が出来たのは課長だ。
それと久美子だ。
二人を良く知ってる僕からすれば、あり得ない。
特に久美子はあり得ない。
課長はちょっとあり得るかも。
でもみんなの見ている前で
濡れ衣を着せるつもりなら、二人だけで会うはずだ。
もっとも、僕に頼まなかったと白を切ってもすぐにボロが出そうだ。
僕の推理なんてこんなものだ。
向いていない事は分かっている。
課長と久美子の所にも警察は行っているだろうな。
二人が怪しければ、捕まえるはずだ。
僕は日本の警察は優秀だと思っている。
世界一だと言っても良いと。
だけど当事者になると色々な事が頭を巡る。
警察署に着くと、すぐに取調室に入れられた。
取調室は灰色の机と椅子があるだけの殺風景な部屋。
壁に向かって記録を取る刑事さんと、対面に刑事さんが座った。
完全に容疑者扱いだ。
訴えたら勝てるかな。
それよりも無罪放免になるだろうか。
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