第14話 遠峰が、来てない?
二時限目が終わり、スマホを手に持った美海に芳乃は手をひらひらと振る。
「美海。またみんなにチョコ渡してきなよ。あったとしても今取りに行けないだろ?次の休み時間に確認して、あったら昼休みに取りに行って、届いてなかったら考えよう。私達がいろいろと確認してるから、今は任せろ」
「で、でも……私がやらかしたのに、二人にばっかり……悪いよ……」
そう言って肩を落として美海に、菜々子が背中から抱きついた。
「みうみう!今はやる事を決めちゃおう!焦ってアレもコレも、じゃなくってさ!こういう時こそひと〜つひと〜つ、できる事をキッチリとやって『どーだ、こんにゃろう!へこたれてねえぜ!』ってイタズラの神様にドヤ顔したろうよ!」
「そうそう。今やれる事とやれない事、はっきりしてんだ。役割分担だな」
「菜々子、芳乃……」
菜々子と芳乃は、泣きそうになっている美海の両頬を
「ほらほら、笑顔笑顔!チョコ配ってこぉい!」
「時間は有り余ってないぜ?ほら行った行った」
柔らかい笑顔を浮かべながら手を伸ばしてきた二人に両頬を
「ありがとう……!行ってくるね!」
そんな言葉を二人に残して、駆けだしていく。
●
美海がまた、クラスメイト達にチョコやお菓子を手渡す姿を眺める芳乃が菜々子に自分のスマホを差し出した。
「……なあ、菜々子。これ、どう思う?うちの高校のテニス部男子が絡んできた」
「ん?見して見して……あ!私も私も!こんな
差し出されたスマホを受け取って、食い入るように見つめる二人。
「……これ、遠峰君に聞いてみようよ!」
「そうだな、行くか。遠峰の個チャとか連絡先知らんから、アイツのクラスまで散歩すっか」
「んだね!」
芳乃と菜々子は、状況の変化に元気よく立ち上がり、歩き出した。行先は、二つ隣の遠峰のクラス。
二人がスマホを使わないのは、親友の好きな相手の連絡先を知らないからである。
●
「え?遠峰、来てない?」
遠峰のクラスにたどり着いた芳乃と菜々子は同じ中学だった女子、
「そうなのよ!何か急用ができて遅れてくるって学校に連絡があったらしいんだけど、詳しい事は教えてもらえなくってさ!もー、女子達がすごい勢いで私に聞いてくるから大変だよ!」
「あー、入口の真ん前だもんな、お疲れさん」
「ホントだよ!それにあれ、見てよ!」
千夏は遠峰の机の上、脇のカバン掛けにぶら下がる色とりどりの可愛い袋、教室の後ろの締まり切らないロッカーを次々に指差していく。
「ありゃりゃー……」
「中学よりスゴイことになってんな、こりゃ」
●
遠峰がいなかった事で用事が無くなった二人は、菅生千夏の剣幕に退散し。教室に戻ってコソコソ話を始める。
(……結局はさ、チョコが手元にあるか無いか、だ。行方がわかっても美海がそれを持って遠峰に今日告白できなかったら意味がない。いったん昼休みまで置いておこう)
(にゃるほど。だったら昼休みは三人で遺失物取り扱い所や警察の担当課に電話をして、なかったらみうみうがチョコを買ってきて……)
と、そこまで話したところで。
「なあ。さっきの絶叫といい、こそこそっぷりといい、何を面白そうなことしてんだ?」
「……ああ、何だ
「お、かたりんだ♪」
美海のチョコを食べきった片山が、好奇心いっぱいの表情で二人に近寄る。芳乃はふと思い立ち、片山に聞いた。
「ちょっとバタバタしててな。そういえば雄二は遠峰の連絡先、知ってるんか?」
「んあ?知ってるが、何でだ?」
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