第11話 あたしらの事が信用できないってのかあ~?ああ~ん?


 朝7時頃、●●ヶ丘駅で美海見たやついる?




” 私は見てない。今、個チャ個人チャットグルグループチャで聞いてみる ”

” 美海は何時頃の電車乗ったの? ”




 通知に震え続ける、芳乃のスマホ。







 朝、●●ヶ丘駅で小学生くらいの女の子を介抱する制服の子、見かけた方いますか?




《77stepperさんのお知り合いなんですか?》

《私、その沿線だけど●●ヶ丘は降りないからなあ……何かあったんです?》 




 通知に震え続ける、菜々子のスマホ。







 一時限目が終わった休み時間。

 

 自分のスマホをチェックした芳乃が、電話を終えた美海に声を掛けた。


「どこに電話したん?」

「教えてもらった駅と警察の落とし物を預かってくれるところ……届いてないって」


 しょんぼり、と肩を落とす美海。


「そっか。ま、これからこれから。あたし達も落とし物が届きそうなところ探して電話してみるからさ」

「みうみう、私もいろいろ聞いてみるよ」

「う、うん……ホントごめんね、ありがとう」


 ばっしん!


 泣きそうな顔をする美海の背中を芳乃が叩く。


「だあ?!」

「落ち込むな。ハプニングはイベントに付きもんだろ?今は『こっから挽回してやる!』って気合い入れなおさないと。初志貫徹!決めた事はやり通そうぜ!」

「そっか……そうだよね!」


 美海が、ふんすっ!と気合いのガッツポーズを見せる。


「それはそうと、みうみうは休み時間にやる事なかったっけ?ん!ご褒美の先払い!」

「やる事……?」」

「チョコ、溶けまくってカバンの中からたっぷたぷに零れてきやしないか?」

「え……で、でも」


 美海は戸惑いを隠せない。


 自分がやらかした事のフォローをしてくれている二人を差し置いて、義理チョコを配ったりは出来ないと美海は思ったのだ。


 が。


 芳乃と菜々子が片眉をしかめて、首を傾げながら大げさに美海に近づいていく。


「あたしらの事が信用できないのか?ああん?」

「私らに手作りチョコ、食わせないってのか?ああ~?泣くぞこら。こらこら~」

「ひゃあ!ふ、二人とも!近いよ!顔近い!」


 美海は、超至近距離から不良の小競り合いの様に視線を飛ばす二人に慌てる。


「くれないとお腹と背中がひっくり返るぞお~」

「いや、それはお前だけだ。なあ、美海」

「うっそ?!ちょっと芳乃ぉ!」


 裏切り者ぉ!と目を見開いた菜々子を横目に、芳乃は美海に語り掛ける。


「それも大事な事だろ?今年も頑張って情報集めて、みんなの分のチョコとお菓子作ってたじゃん。昼休み以外の休み時間は予定通りにチョコ配りな。ん」

「ん!」


 芳乃と菜々子が、笑って手を差し出した。


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