ユニークスキルで無双できると思ったけどパッシブスキル「EXPリミット」のせいでダンジョン攻略はままならない

三行半

第1話

 俺の名前はオワタ ナニモカモ、19歳の無職だ。


 狂は俺の親父の四十九日、と言ってもお坊さんや遠くから来ていた親戚は昼頃にはもう帰っており今家にいるのは俺一人だけ、


 親父は亡くなる前、自分の口座から預金を俺の口座に移していて向こう一年間ぐらいは一人で暮らしていけるだけのお金が俺の手元にはあった。

 親戚も一応俺が成人しているということで特にああしろこうしろとは言わず、

「困った事があったら何でも相談していいから」と言って俺のことを特に疑うこともなく帰っていった。


 本当はもう俺の手元にお金なんてほとんど残ってないけど、そんなこと言えば一悶着起きることくらい想像が付くので話していない。


 面倒くさいのは嫌だし、働きたくもない、そんなことしか頭に無い俺が、

「そうだ、FXで一発当てれば」などと考え、そのまま一発で退場したなんて、

あの親戚たちは夢にも思うまい。


「俺の人生終わった。何もかも」


 かくして、文無しの無職になった俺は、

「次に目が覚めたらタイムリープで4年くらい過去の戻ってないかな」と現実逃避しながら、まだ、日も落ちる前にふて寝した。


◇  ◆  ◇


 2023年 2月18日 土曜日 日本時間19:26

 その日、世界は未知の理に因る浸食を受ける。

 のちに、ダンジョンと呼ばれる事になる、それは世界各地で同時多発的に発生し、

 大きな地鳴りをあげながら、元々そこにあった土地を、物を、そして人すらも飲み込んでこの世界に現れた。

 

 地上に現れた未知の理に支配された場所は、フィールド型ダンジョンと呼ばれ、

 地下に現れたものは、迷宮型ダンジョン、と呼ばれた。

 また最初にダンジョンが発生した際、環境と共に多くの人達が飲み込まれ、運よくダンジョンから帰還を果たした者たちによって、ダンジョン内を闊歩するモンスターの存在と、ステータスの存在が明らかになった。


◇  ◆  ◇


 目が覚めると辺りはすっかり暗くなっていた。

 まぶたを薄っすらと開け枕元に置いていたスマホで時間を確認する。


「もう七時半か...」


 (そろそろ晩飯の用意でもしないとな)、と思い体を起こし目を開けると、そこには、何故か長い通路が広がっていた。


「はぁ?」


 周りを見渡して見ても、剝き出しの岩肌の一本道に、場違いな現代のベットとそこに座る自分、あとは部屋にあったはずの私物が通路に散乱していた。まるで現実感の無い光景だが手に持つスマホの感触は本物だ。


「マジか...俺、本当に異世界転生したのか?」

 

 どうやら、寝る前に考えていた事とは違う形で現実から逃走に成功したらしい。


 オワタの足りない頭ではそれくらいの感想が精一杯だった。

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