第31話 聖(性)獣:Sリア
すぐ隣ではナーリアが可愛らしい寝顔を浮かべ、静かに寝息を立てている。今朝ほどのたおやかで美しいナーリアだ。
先ほどまでの美しき『聖(性)獣ナーリア』、そう、Sリア様はもうおられない。またそのうち降臨いただけないだろうか。いや、いつもだとちょっと身が持たないから、たまにでいいけど。
結局、【剣士】の職自体は失ってないし、『賢者』でいられたのも一時だった……
ナーリアのかわいい寝顔を眺めていたせいもあるのだろうが、これはおそらく、
「……【回復促進】だな」
このスキルは、体力や内在魔素、怪我等を回復するだけではなく、おそらく
「はぁ~、まぁ何にしても……」
『剣士ショック』からは立ち直った。と言うか、それ以上の
と言うか、別に【剣士】としてこれからも戦いに身を投じる必要があるわけではない。当面はこの村で平和に過ごしていけそうだし。一つ一つ、置かれた状況や抱える
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「確かに、アーサム王国の軍人ですね」
「ええ、それは間違いありません」
ザリアは集会所に安置された盗賊団の遺体を前に、先遣隊の騎士と話をしていた。初老の域に差し掛かった、ベテランと言っていい、所作に隙のない男だ。そんな男が恐縮した面持ちでザリアに話しかける。
「しょ、小官ごときに敬語などお止めください、閣下」
「もう閣下と呼ばれる身分ではありませんから。今はただの村長さんですよ」
「い、いえ、しかし……」
ザリアは流し目でそれ以上の男の反論を封じる。男は顔を赤らめながらも、踵を合わせ直立して口を閉じた。
「それより、冷却の魔晶石に余裕がありません。早く盗賊たちの遺体を引き取っていただきたいのです。村人たちの遺体は……明日埋葬します」
「了解しました。どうやら懸賞金首もあるようです、急ぎ
「ありがとうございます」
「お辛いでしょうが、今しばらくは民の動揺を抑えていただきたい。私は急ぎバスラ本隊への報告へと参ります。念の為、騎士を複数名を村に残しておきますので。それでは」
年配の騎士は足早に集会所を出ていった。
「……バスラから誰が派遣されるかにもよるけど。さすがに隠し通すには無理があるか……さて、フィル様のことをどう説明しようかしら」
ザリアは軽くため息をついた。
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「ん、ん〜」
ナーリアが目を覚ましそうだったので、軽く口付けをする。無意識にナーリアは俺の首に腕を回してきた。思わず舌を入れてしまったが、このままでは3回戦が始まってしまいそうなので、仕方なくナーリアの唇から離れる。
「ナーリ、ナーリア」
「ん〜、ふぃる…さま……フィル様!」
ナーリアが飛び起き、優しい手つきで俺の頬を手のひらで包む。
「大丈夫ですかフィル様? 何か悲しいことが……はっ? 私……まさか、寝てしまっ……た?」
顔を青くしてナーリアは恐る恐る俺に訊ねた。俺は少し冷やかすように微笑みながら答えた。
「ああ。最後、気がいくと同時に崩れ落ちたから心配したよ」
『モード:Sリア』を思い出したのか、今度は顔を真っ赤にしながら、「す、すみません」と小さくつぶやいた。顔色を一瞬で変えるとは何と器用な。
「でも、ナーリアが慰めてくれたから、だいぶ落ち着いた。ありがとう」
「お役に立てて……よかったです」
その溢れるような笑顔に、心が暖かくなる。小春日和に日向ぼっこでもしてるみたいだな。Sリア様は晩秋の心地よさがあったが……
それにしても、母の魂石を手にして以降、少しづつだが、固まった心が溶けていっているような気がする。特にナーリアと契りを交わして以降は。まぁ、人の心なんてゲンキンなものだ。
「ところでナーリア、仕事はもういいのか?」
「あ、すみません。フィル様のお昼のご用意をしようと思って、戻ってきたのでした。何か食べたいものは……と言っても、食材が不足しておりご要望にお応えできるかわかりませんが……」
申し訳なさそうに見つめてくるナーリア。かわいい。美人だけど、可愛い。思わず押し倒しそうになる気持ちをぐっと抑える。おのれ、【回復促進】め……いい仕事するぜ。
「……これから少し体を動かしたい。昼は軽くでいいよ。それと、どこか身体を動かせる、広場みたいなところはないか? できれば人目に付きたくない」
「であれば、村を出てヴェンダの森に行く途中にありますが……魔獣は出ないとは思いますが、まだ盗賊の残党がいる可能性もあります。お一人では……」
「その盗賊どもを追い出したのは誰だ??」
「あっ、それは……あなた様です、フィルさま」
恥ずかしそうに、それでいてどこか嬉しそうに、とろける様な笑みを浮かべ身体を絡ませてくる。あ、ちょ、さりげなく内ももをさすさすしないで……
まぁ、今の俺は華奢な美少年らしいからな。見た目だけだとつい心配になってしまうのだろう。……にしても美少年って。
「すぐに役場での仕事を終わらせ、私もフィル様の下に向かいます。森の入り口付近に私とレイリスの住んでいた家があり、そこも片付けに行かなければなりませんので」
ああ、あの軍人崩れどもと闘った付近か。あの時は本気で死ぬかと思ったな。
ナーリアは軽く俺にキスをしてベッドを出てい……くつもりだったのだろうが、結局、軽くないキスをたっぷりとして、名残惜しそうに下に降りて行った。
そして、おれは……悶々とした。
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【あとがき】
古き良き異世界転生ものが好きで、書き始めちゃいました。お暇なときにでもフォローや『★★★』いただけると書き続けるモチベが爆上がりします! よろしくお願いします!
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