七話
「なるほど、そういう状況だった訳か」
ここまでの経緯をブランゼンから聞き、シャオンはうんうんと頷いた。
「それなら、もう足も治しちゃっていいんじゃない?」
「そうだな。もし竜の名残が残ってもここにいるなら問題ない」
続けて言われたシャオンの言葉に、ヘイルも同意した。
「? ……治すって、どういう事でしょう?」
アイリスは首を傾げる。
「そのまま、足の傷を治すのよ。アイリスは人だからピンと来ないかも知れないわね。自分の治癒力を外側から高める感じかしら?」
ブランゼンがポンと、掛布の上から足の辺りを軽く叩いた。
「治癒力を、高める……ですか」
傾げた首を元に戻し、アイリスは足をもぞもぞと動かす。いつもの靴下と違う、布が当てられている感覚を確かめるように。
「でも、すでに手当てをして頂いているのに……」
これ以上は、と続けようとした口を噤む。ヘイルに真っ直ぐ見つめられ、その万華鏡の様な虹彩にアイリスは息を呑んだ。
「一応の処置はしてあるがな、今のままだと恐らく立ち上がれん」
「えっ」
「鎮痛剤が利いているんだろう。しかしそれも人用だ、高が知れている」
肩を竦めるヘイルの言葉に、アイリスは恐る恐る視線を自分の足先へと移す。
「ち、違う違う! 言うほど危ない状態じゃないから安心して!」
絶句するアイリスを宥めるように、ブランゼンは慌てて手を振った。
「骨は問題ないし、打撲とか捻挫とか擦り傷とかが酷いだけ。少しでも動かすと痛みがあるから痛み止めも使っているけれど、ヘイルの言い方は大袈裟なのよ」
それも結構な大怪我では? という疑問がアイリスの頭を過ぎる。
「ただやっぱり、人間は私達より脆い生物だし早く良くなるに越した事はないでしょう? だから、どうかしらって」
「……どういう風に、行うんですか? 治癒力を高める、と仰っていましたが」
安心させるように微笑むブランゼンに、アイリスはまだ少し不安の混じる声で聞く。
「私達の、今回は私かしら? その魔力をアイリスの魔力に混ぜて底上げをするの」
言いながら、ブランゼンは右手を上に向ける。
「それを操作しながら患部に持っていって、活性化させて治す。一気にやると疲れるから、今のアイリスの体調なら七割くらいまでかしら」
その掌から金色の粒子が浮かび、舞い上がって収束し、小さな光の珠が出来た。
「それでも大分良くなるだろうし、歩ける位には回復する筈…………アイリス?」
「それ、あの、魔法……ですか?」
アイリスの目は光の珠に釘付けになり、半ば呆然としたように呟く。
「え? ああ、これは魔力の塊ね。魔法の前段階の」
「私、魔法を体験出来るんですか?!」
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