21品目 半熟トロトロオムライス

「ピクシーに用意してたチャーハンがいつの間にか無くなってる‥‥‥もしかして、食べに来てくれた?」


「本当ね。いつの間に来たのかしら?」


 確かに俺はチャーハンを夢中で食べていたけど、気付かないなんて事あるか?もう一回作って、次は目を離さないようにしとこう。


 ササッとチャーハンを再度作り、テーブルの上に置いておく。すると、


「おっ‥‥‥少しづづ減ってないか?」


「本当だ‥‥‥姿は見えないけどピクシーがそこにいるのかしら?」


 俺達が会話をしている間にも、どんどん量が減っていくチャーハン。その光景をただただ唖然としながら見ていた。


「ピクシーが食べてるって事を知らなきゃ、ただの怪奇現象にしか見えないな‥‥‥」


「そうね‥‥‥姿を見てみたいけど、村長さんも見た事はないって言っていたものね」


 この村に居る人たちは、ピクシーの姿を見た事はないけど、ピクシー達に食事を毎日用意して森の近くに置いているそうだ。


 朝になり見に行くと、食事は空になっていて、傍にはジャイアントボアなど、魔物の死体が代わりに置いてあるらしい。


「多分、食事のお礼に森の魔物を狩って、村人に渡してるって事なんだと思うけど、俺達は妖精のスープを飲んでみたいんだよな‥‥‥」


「村のお祭りの時くらいしか、妖精のスープはもらえないって言っていたもんね。とりあえず、明日の朝まで待ってみる?」


「そうだな‥‥‥ダメ元で、空の鍋をテーブルに置いておく位の事はしておくか」


 結局、俺達に出来る事はこれ以上は無いという事で、その日はここで野宿をする事にして、明日の朝に期待をする事にした。



 その日の夜、俺はいつもの様にノワルに寄りかかりながら寝ていると、なんだか鼻がムズムズして目を覚ます。


「へーっくしゅッ!!」


『ふふふっ』


「‥‥‥ん?子供?」

 

 寝ぼけながら、小さな笑い声の方に視線を向けると、6歳くらいの女の子が猫じゃらしの様な物を持ち、俺の目の前に座ってた。


『これをね?人間の鼻に入れるとね?凄い面白いの!』


「へーっくしゅッ!!ちょっ‥‥‥鼻に入れるのやめい!」


 ケラケラと笑う女の子を見て、ようやく俺はまだ夜だということに気付いた。こんな暗い中を女の子が一人で村から出てくる・・・?


「まだ夜だけど、一人でここまで来たの?」


『そうだよ?美味しい物を食べさせてくれたお礼に、君の鼻にこれを入れに来たの!』


「お礼‥‥‥?ちょっ・・・へ、へーっくしゅッ!もしかして、ピクシー?」


『ピクシー?私はパックだよ?君はなんていう名前?』


「俺はシンだよ。パックはさ、この村を守ってくれてるの?」


『そうだよ!前にね?マッシュに助けてもらったの!だから、マッシュの村を守るって約束したの!』


 マッシュは初代村長のことか?どうやらこの子がこの村を守っている妖精で間違いないみたいだ。俺はパックに妖精のスープの事を聞いてみると、面白い話が聞けた。




 この森の奥には、様々な妖精達が住んでいるらしい。妖精達が住んでいる場所には、山から湧き出た水で綺麗な池がある。


 その池でよく、妖精達は水浴びなどをしているようなのだが、パックの話を聞く限り、妖精のスープとはその池の水の事だという。


 つまり‥‥‥妖精のスープとは、妖精の出汁って事なのか‥‥‥?  


 流石に妖精のスープを飲んでみたいとはいえ、パックの見た目は小さな女の子だ。


 そんな幼女が水浴びをした池の水を、大人である俺が飲むのは犯罪行為のような気がしていたが、よくよく話を聞いてみると違う事が分かった。


 山から出る湧き水は元から虹色に光を放っているようで、妖精が水浴びをしているから、虹色になっているわけではないという。だが、村人達にはあえて、池の水を汲んで持っていくらしいが、その理由を聞いてみると、


『私達が水浴びした後の水を飲んでるんだよ?見てて面白いでしょ?』


 ただのパックによるイタズラのようだった‥‥‥。


「俺もその湧き水を飲んでみたいんだけど、案内してくれないか?」


『えー?美味しい料理を作ってくれたらいいよ?』


 パックと話しているうちに、夜は明けて朝日が顔を出し始めていたので、俺は朝飯の準備をする事にした。


 パックは米料理が気に入っているみたいなので、俺は【オムライス】を作る事にする。


 普通にチキンライスを作ろうと思ったけど、今回は誰でも簡単オムライスをテーマにしてやっていくぞ。


 米を炊く時に、鶏肉を入れて、ケチャップ、オイスターソース、バター、塩コショウで味付けをする。軽く中身をかき混ぜて、あればで良いんだけどローリエで香りづけなんかしてもいいな。


 こうやって炊くと、バターのお陰でパラッとしたチキンライスが出来るんだ。余ったチキンライスは冷凍庫で保存しておけば、いつでも手軽にオムライスを作る事が出来るからな。


 さて‥‥‥オムライスと言えば半熟の卵がたまらんよな。でも、あれって結構作るの難しそうに思うだろ?今回、俺がやるやり方なら、誰でも半熟オムライスが出来るから、是非やってみてくれ。


 ただ、フライパンの状態が悪いと無理だからな?フッ素樹脂加工のフライパンがお勧めだ。


 卵は、泡だて器でしっかりと溶きほぐして、塩コショウをいれてまた混ぜる。


 熱したフライパンにバターを入れ、溶けたら卵液を入れる。この時、フライパンを前後に揺すりながら、絶えずゴムへらでかき混ぜてくれ。


 半熟のスクランブルエッグ状態になったら、一旦濡れ布巾にフライパンを置いて、熱を冷ます。


 後は適量のチキンライスをフライパンの中央に乗せて、フライパンを奥に傾けるようにして、手前から中心に向かってチキンライスに卵をかぶせる。この時はゆっくりできるから、火を消していた方がいいぞ。


 次に、フライパンを手前に傾けるようにして、奥の卵をかぶせる。


 形を整えたら、皿の上にフライパンをひっくり返せば、綺麗なオムライスが出来上がるぞ。


 後はケチャップをかければ【半熟トロトロオムライス】の完成ッ!


「熱いから気を付けて食べるんだぞ」


『なにこれッ!?見た目が可愛いね!‥‥‥美味しいッ!!頬っぺたが落ちちゃいそう』


「ははっ。喜んでもらえて良かったよ。じゃあ俺も‥‥‥美味いッ!半熟の卵がなめらかな口触りで、まろやかな卵の味、美味しいうえに流し込むように食べられるから、スプーンが止まらんッ!!」


「「グルルルルッッッッ」」


「‥‥‥すんません。今、作ります」


 ノワル達の分を作っていると、リーシアも匂いに釣られて起きて来たので、皆が満足するまで作り続けた。




「パックちゃん可愛いわ‥‥‥今、何歳なの?」


『わたし?んーと‥‥‥182歳ッ!』


「ブハッ!!‥‥‥パックは見た目と違って、長生きしてるんだな‥‥‥」


『そう?それより、早く皆の所にいこーよ』


「じゃあ、案内してくれるか?」


『うん!』


 こうしてパックに案内され、俺達は妖精の池に向かう事になった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 どうも。ゆりぞうです。

 オムライスのソースは、赤ワインとケチャップで作るとより美味しいですよ。

 まあ、私の場合赤ワインがあったら直ぐ、飲んでしまうからオムライスを作る時にはいつもないんですけどねw

 では、ここまで読んで下さり、ありがとうございました!

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