19品目 たこ焼きパーティー

 俺達が屋台を出して一か月が経った頃には、周りの屋台にも色々なお好み焼きの屋台が増えてきた。


 豚玉の様な一般的なお好み焼きや、チヂミなどを屋台の店主たちは創意工夫をして、出している。今迷宮都市では、お好み焼きがブームになっているのである。


 火付け役の俺達はというと、元祖お好み焼き屋台という事で、まだまだお客さんは来てくれるものの、当初よりは落ち着いて来ていた。


「なんだかんだ忙しかったけど、こうやって目の前でお客さんが食べて、笑顔になってくれるのを直に見れるから屋台もいいもんだな」


「ふふっ。長かったようであっという間だったわね。それより聞いた?迷宮の上位探索者のパーティーが、最深部まで到達したらしいわよ?なんでも、迷宮都市始まって以来の快挙とか言ってたわね」


「よく食べに来てくれるガンテツさんのパーティーだろ?‥‥‥もしかしなくても、俺のせいだよな‥‥‥?」


「そうでしょうね。最近、他の冒険者達も調子が良いって言ってたし、まず間違いないでしょうね」



 俺が屋台を出し始めてから、急に迷宮の攻略が進みだした事を見ると、やっぱりリーシアが前言っていた通り、俺はなんらかの料理のスキルがあるのはほぼ確定したな。


 んー‥‥‥このまま暫くは屋台を出してのんびりとしようと思っていたけど、俺のスキルがバレたら面倒な事になるのは間違いないな。


「よし、決めた。今日で屋台は終わりにして、次の場所に行くか」


「商業ギルドの人達もシンがもう、屋台を出さないって聞いたら泣くでしょうね。断れるの?」


「ぐっ‥‥‥そこはお好み焼きの正しいレシピを渡して交渉してみるよ」



 夕方前には完売し、商業ギルドに屋台を返しに行くついでに、迷宮都市から出る事を告げると、リーシアが言った通り、泣きながら必死に止められたよ。


 なんとか宥め、お好み焼きのレシピを商業ギルドに渡す事を告げると、渋々だが了承してもらえた‥‥‥。


 その日は宿に帰り一泊してから、次の場所に旅立つことにする。


「次の場所って言っても、何処に行くか決まってるの?」


「まぁな。ここは迷宮都市だろ?いろんな場所から冒険者が集まってくるからな。その中のお客さんが話してた事で、少し面白そうな話を聞いてさ。」


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 屋台を出し始めて3週間くらい経った頃、二人の冒険者が面白そうな話をしていた。それは、妖精の話だった。


「妖精様にも、お好み焼きを食べさせてあげてぇな。きっと、喜ぶべ」


「んだな。こんだけうめぇもんなら喜ぶにちがいねぇな。お礼にもしこたまもらえるだろうしな」



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「妖精のスープ‥‥‥?確かに気になるわね。それでシンはその村の場所を聞いたの?」


「勿論。二人は結構な田舎でさ、トロン村という名前で、ここから馬車で二週間かかるんだと」


「ノワル殿とゴマに乗れば、3日もかからなそうね。じゃあ、明日には行く?」


 早速、明日にはトロン村に向かって出発する事にして、今日の夕飯は迷宮都市最後だからパーティーでもしたいな‥‥‥あの食材もある事だし、バーバラさんに厨房を貸してもらえるか聞いてみよう。




 バーバラさんに聞いてみると、21時には食堂を閉めるそうなのでその後なら良いとの事。せっかくだから、バーバラさんも誘うと喜んで参加すると言ってくれた。



 21時になり、食堂に向かうと他の客は居なくてバーバラさんだけが食堂に居た。


「今日は誘ってくれてありがとうね。それで今日はどんな新しい料理を見せてくれるんだい?」


「バーバラさんにはお世話になりましたからね。今日はこの不思議な形の鉄板を使って作っていこうと思います」


「丸い穴がたくさん空いてるわね‥‥‥一体何を作るのか気になるね‥‥‥」


「今日、俺が作るのは『たこ焼き』という俺の故郷の料理なんです。家に皆を呼んでたこ焼きパーティーを開催する位には、一般的な料理ですね。それでは作っていきますね」


 基本的にはタコ焼き粉を使うと思うけど、今日はあえて小麦粉から作っていこうとおもう。


 小麦粉をボウルに入れて、その中に出汁と卵を入れてよくかき混ぜる。


 後は刻んだネギと天かす、そしてデビルオクトパスをぶつ切りにしておく。後はタコ焼きプレートに生地を流し込み、具材を入れていく。


「ここからが、腕の見せ所ですね。このピックという物で周りの生地がうっすら固まってきたら、こうやってクルッとひっくり返す!」


「「おぉ!!」」


「上手くできたな。後は丸くしたいからピックでたこ焼きを刺して、持ち上げて落とせば綺麗に丸くできるんです。少し、焼き色を付けてあげれば、『タコ焼き』の完成ッ!!熱いから気を付けて食べてくださいね」


「じゃあ早速頂くわね‥‥‥あちッ…はふはふ‥‥‥。美味しいじゃないか!!外はカリッとして、中はモチっとしてる。それにこのデビルオクトパスが良い味だしてるわね‥‥‥こんな超高級食材なんて初めて食べたよ」


「本当だ‥‥‥美味しいッ!!気持ち悪い見た目だったから、ちょっと不安だったけどタコの弾力が癖になる。噛むほどに味が染み出て来るわ」


「喜んでくれて良かったよ。まだまだあるからたくさん食べてくれ」


 リーシアやバーバラさんも、たこ焼きをひっくり返してみたいというので、やらせてみたら最初から上手に出来ていた。こうやってテーブルの上で、皆でワイワイしながらやれるのもたこ焼きパーティーの良い所だよな‥‥‥。


 この後、夜遅くまで3人でたこ焼きパーティーをしたわけだが、翌日になりノワル達を迎えに行くと、匂いで美味しい物を食べたのがバレて、尻尾の往復ビンタをお見舞いされたよ‥‥‥。風呂に入ったのに何故バレた‥‥‥?

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 どうも。ゆりぞうです。

 近況ノートでも報告するとは思いますけど、実はこの作品と同時にもう一つ小説を書いてたわけなんですよ。

 えー‥‥‥あのゆりぞうが本気を出した作品でございますw

 タイトルは『スライムすら倒せない俺はメンブレ寸前です・・・。』

 現代ファンタジーの作品です。

 明日のこの時間くらいに公開すると思うので良かったら覗いてくださいね!

 では、ここまで読んでくれてありがとうございました!!


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