17品目 屋台飯その2

 迷宮で出たドロップ品を、自分たちが使わない分はギルドに売り、シンたちは一度宿まで戻ってきていた。宿では別々に部屋を取っていたけど、今はリーシアと一緒に俺の部屋で話をしている。


「結構稼げるんだな‥‥‥これなら暫くは金に困らなくて済むな」


「迷宮は死と隣り合わせの場所だからね。それより、本当にケガはないんだよね?」


「それな‥‥‥どうなってんだ俺の身体。」


「あの、ね?‥‥‥シンは冒険者が強くなる為にはどうすればいいと思う?」


「え?そうだな‥‥‥普通に鍛錬とか魔物を倒せば、それが経験となって結果として強くなってくんじゃないか?」


「それも間違いじゃないけど‥‥‥」


 リーシアが言うには、鍛錬なんかも勿論強くなっていくには重要な事らしいけど、実は魔物を食す事でも身体は少しだが強くなっていくらしい。


 だけど、俺はこの世界に来てからそんな時間は経ってないし、魔物だってそんなに多くは食べてないはずだ。


「最初はシンが迷い人というのが関係してるのかな?とも思ったけど、確かにユウジは強いけど、シン程頑丈じゃない。ユウジが出来なくて、シンが出来る事は料理よね?」


「え?俺の料理が原因なのか?」


「確信はないけどね。でも、私もシンと一緒に行動するようになってから、なんだか身体が凄い軽いのよ」


 この世の中には、固有スキルというのが存在し、もしかすると俺もなんらかのスキルによる効果なのでは?という話であった。


「自分が持ってる固有スキルって、どうやって皆は分かってるんだ?」


「まず、シンみたいに固有スキルを持っている人の方がめずらしいんだけどね・・・鑑定を持っている人物に視てもらうしかないけど、多くは貴族なんかに仕えてるから普通は視てもらえないわね」


「あんまり、そういう人とは関わりたくないから、鑑定は別にいいか・・・このままでも困る事はないし。それより、飯食いにいこうぜ」


 もし俺の料理を食べる事によって身体能力が向上していく、という事なら俺が古民家レストランを開業したらどうなるかは少し考えれば、思いつくんだろうけど、俺はこの時気付くことは無かった。



 朝早くから迷宮に潜り、今は昼時。腹が減った俺達は、全て屋台を周ったわけではないので、もう一度屋台エリアに向かう事にした。


「昨日とは違う物を食べてみたいな‥‥‥お?あれは‥‥‥」


 俺の目に飛び込んできたのは巨大な焼きトウモロコシ。


「でっか‥‥‥おばちゃん、これも迷宮から取れた食材なのか?」


「いらっしゃい!そうだよ。低階層に出現するジャイアントコーンっていう魔物からドロップする食材だよ!甘くて美味しいから一本食べてみたらどうだい?」


 流石にでかすぎるから半分に切ってもらって、リーシアと食べる事に。


「甘くて凄いおいしいわ!」


「トウモロコシの表面に塗ってるソースが良い感じに、トウモロコシの甘みを引き出してるな‥‥‥低階層は質が悪いって聞いてたけど、滅茶苦茶美味しいじゃんか」


「そりゃ良かったよ。低階層は確かに質が悪い食材がドロップされる事が多いけど、ジャイアントコーンだけは特別なのさ。なんでも、下手に近づいてしまうと、自分の粒を飛ばして自滅するからドロップ品が出ないらしいのよ。だから入手するのは難しいって話だよ」



 おばちゃんも長らく迷宮都市で屋台をやっているらしく、迷宮には詳しいようだったので、お勧めの屋台を聞くと、


「深階層に出現する魔物でヤリイカってのが居るんだけどね?それで作ったイカ焼きなんかが絶品だよ!」


 おばちゃんに場所を教えてもらい、その屋台に向かうと長蛇の列が出来ていた。


「おばちゃんが言うだけあって流石に人気だな‥‥‥」


 暫く待つと自分の順番がやってきたので、お代を払いベンチで食べる事にした。


「肉厚ッ!!それに、このイカ焼きに付いてる香辛料がスパイシーで、どんどん食べたくなるな!」


「身も柔らかくてすぐに噛み切れるし、本当に美味しいわね!」


「こんなに美味い物がたくさんあって、この都市はなんて良い場所なんだ‥‥‥なんだか俺も屋台を出したくなってきたな」


「シンもやってみればいいんじゃない?商業ギルドで出店申請と場所代を払えば屋台で料理を出せるみたいよ?屋台の貸し出しもしてるみたいだし。一回商業ギルドに行ってみる?」


 リーシアからその事を聞いた俺は、直ぐに商業ギルドに行って出店申請をしたが、3日後にしか空きがないようなので、それまでは迷宮に潜って材料を集める事にした。

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