異世界でも料理人してます〜夢を叶えるまでは絶対に諦めない。目指せ夢の古民家レストラン!〜
ゆりぞう
プロローグ
俺の名前は
そんな俺が今何をしているのかと言うと、小さい頃からの夢である古民家レストランを開店させる為に物件を見て回ってるんだが、中々良い物件がない。
不動産を何件も見て回って内見もしたけど、安いけどボロボロ過ぎて改装するより、解体して新しいの作った方が安いんじゃね?といった物件や、人口三千人ほどの村の古民家を紹介されたり。
田舎の古民家とは言ったけど、流石にそこまでの田舎じゃなくてもうちょっと人が居てくれないと困るというか――せっかくオープンさせたのに人が来ないんじゃ俺が破綻しちまうし。
んー、俺の条件が厳しすぎるのか?そう思ってしまう程、紹介される物件は誰も買うわけないだろ!という位ひどい物件ばかりだった。
仕事も夜遅くに終わるから、休みの日にしか物件探しは出来ないし、どうしたもんかな、と思って高校からの友人に相談したらある不動産を紹介されたんだ。
早速次の休みにその不動産に行ってきたんだけど、紹介された物件が中々良い条件だったので早速内見をしてみることにした。
その物件の場所は俺が住んでる場所から車で一時間程の場所にあり、周りは田んぼや畑が広がる所だったが、都心から近いという事もあったし、過疎地でもないので俺はその日のうちに契約した。
その後からがドタバタだった。オーナーに辞める事を伝えたが、泣きながら説得されたけど料理長という名前ばかりの役職で、給料もクソ安いまま働かされてた事もあって、俺は心を鬼にして一か月後に辞める事をなんとか渋々認めてもらえた。
辞めるまでの一か月間は副料理長への引継ぎや、休みの日を利用して知り合いの改装業者との話し合いをしながら過ごしていた。
そして一か月後、俺の夢の古民家に足を踏み入れていた。
「ここから俺の夢が始まるんだな――よしッ!!まずは片付けから始めるか!」
この古民家は物を自分で片づけるという条件で相場より格安で買えたんだけど、内見した時はそこまで物はなかったし一人で片づけられると思っていた。
早朝から始めた掃除だけどゴミなんかも捨てる物もそこまでなくて、夕方位には全部終わった。
「あーッ!!終わった…。なんだかこんなにガッツリ掃除なんてした事ないから腰が痛い――あれ?」
掃除が終わって寝転んでた時に俺は違和感を覚えた。廊下の先の行き止まりになっている壁が他の壁とは色が違うというか、真新しい壁の色をしていた。
「あれ?なんでこんな分かりやすいのに内見の時に気付かなかったんだ?」
その壁が無性に気になり、とりあえず壁を叩いてみたらやっぱり他の壁と返ってくる音が違う。
暫くどうしようかと考えたけど、どうせ後から改装するしこの向こうにある空間が気になった俺はハンマーを持ってきて壁を壊してみる事にした。
壁が薄かったからなのか、意外と簡単に穴が空いた。徐々に穴が広がっていった先に見えたのは1つの扉だった。
「なんだこれ?不動産屋からは何も言われてないんだけど」近づいてみると扉は引き戸になっているみたいで、錆付いた鎖と壊れた南京錠が床に落ちていてすごい不気味だった。
とりあえず不動産屋に確認してみようと電話をかけてみたんだけど、担当の営業マンには繋がらなかった。
折り返しを待つかどうかで悩んでた俺だけど、確認だけしてみるかと思って扉を引いてしまった。
扉の先は真っ暗――というより真っ黒で、携帯の明かりを付けようとポケットにしまっている携帯を取り出そうとしたら、不動産屋から電話がかかってきた。
「うわッ!!びっくりした…。もしもし?相田さんですか?東雲ですけど、ちょっと聞きたいことあるんですけど――」
「$%%*‘――ザッ―――ザッ――」
「あれ?ここそんな電波悪いのか?おかしいな――」
そう言いながら元来た道を帰ろうとした瞬間、俺の意識は無くなった。
◇
「あの物件を購入した人が失踪するって有名で全く売れなかったのに、相田先輩よくあの物件売れましたね。ちゃんと事故物件って事を購入者に話したんですか?」
「…別に誰かが死んだとかそういうわけじゃねぇんだから言わなくても問題はないって。大体そんなのたまたまに決まってるだろ?――そんな事言ってたら古民家購入者から電話来たよ。とりあえず1回シカトしよう」
「うわぁ…哀れな購入者。電話かかって来たって事はなんかあったんじゃないですか?入居って確か今日でしたよね?」
「流石にヤバいかな?はぁ…めんどくさいけど掛けなおすか。もしもし?相田ですけど、どうしましたか?あれ?もしもし?――なんか勝手に切れたんだけど…」
「先輩ヤバいんじゃないですか?一回、古民家を見に行った方がいいんじゃないですか?」
「いや、俺には電話は来てない――そういう事にしとこう。分かったな?」
「先輩最悪ッ!!まぁ俺は関係ないんで別に良いですけど、黙ってるかわりに晩飯奢ってくださいね!」
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