意味が分かると怖い話 オリジナル

芽春

私だけの成人式

私は孤児院で天涯孤独のまま育った。

昔から話すのが苦手だった事も有り、誰とも仲良くなれないまま歳を重ねて

しまい家でたった一人成人式を迎える事になった。


だが、そんな私でも一つだけ決めていた事が有る。

なんとなく酒といえば大人なイメージがあったので、

酒を飲むことを成人の儀式のように捉えていた私は

二十歳になった瞬間に酒を飲む事に決めていた。


私の誕生日、4月4日は後数分で訪れる。

目の前のテーブルに置いた、酒の詰まったビンを眺めながら待ち詫びる。

この酒の調達には苦労した。

甘いのか苦いのか、ああ、楽しみだなあ……


家の外から響く救急車のサイレンをバックに思いを馳せる。


その時だった。家のドアをノックする音が響く。

なんだよ、これから良いとこなのに……


そう思いながらドアを開けた私は酒を飲みそびれる事になった。

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