滅世の君へ綴る
塊宮麗央(くれみやれお)
始節
ついに、この時が来た。
五百年俺を閉じ込めたこの灰被りの白檻は、最早泥にも及ばぬ硬さだろう。
彼女の体温を、モニター越しに感じる。
童貞だった俺が、この滅世にてようやく卒業だ。人肌のなんと心地よいことか。
俺がしてきた全てのことは、この瞬間のため。
「彼ら」にしてみれば、種全体を危機に陥れてまで平凡な夢――愛する「君」をこの手に抱く――を叶えようとした大罪人だろう。
まあ先に共食いし始めたのは、「彼ら」の方だが。
この世にはもう社会だとか、人間だとかは無いわけだが、どうでもいい。
「僕ら」の存在よりも重要な事は無い。結局のところ世界という奴は、頭蓋についた目玉が捉える、百度かそこらの角度で起きる出来事。
見えない過去も、どこかで苦しむ貧しい「彼ら」も、「今」に比べれば灰より軽い出来事だ。
白く透き通った指が、俺を囚えたこの液晶を解していく。
「やっと見つけたわ、私の変態こじらせ彼氏さん」
――やはり彼女は素晴らしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます