第4話 メルルは黙示録ノ竜人になる
ひとまずは衝撃の事実とともに疑問の一つは解消した。
しかしメルルにはまだまだ疑問がある、その最たるものが…
「…歴史の話は分かりました…それで、結局、私はなぜここに連れてこられたのですか?」
『うむ、実は先の話には続きがあってじゃな…』
「…続き、ですか」
先ほどの話に続きがあると、シンギュラリティは言う。
『…竜の奴ら、今度は竜人を使って対立をしだしたのだ』
「竜人を…使って?」
竜人、先ほどの話の最後に少しだけ出ていた竜の力を分け与えられたという謎の存在。
『竜の祝福を受けた人間である、大罪ノ竜人、美徳ノ竜人、奴らは双方その力を「竜騎装」という名の特殊な全身鎧を使って行使する』
「全身鎧…」
(竜騎装、なんか戦隊モノの変身ヒーローみたいですね…)
そんなどうでもいいことを思うメルル、以外にも竜騎装はメルルの想像にかなり近い物である。
『先の協定は、今後竜同士で争わないことが前提であった、故に今の現状、我が大人しく封印されている必要もなくなった』
この点は当時の人が竜を信用しなった故に掛けた罠だ。黙示録ノ竜は封印する、しかし協定破りが発覚した時、黙示録ノ竜は自ら封印を解いて復活するのだ。
「…は、はぁ」
メルルは思う、だから何なのかと、自分とどのような関係があるのだと
『ふむ、貴様…他人事だと思っているな?』
「…まあ端的に言いますと」
『このままでは竜の対立に巻き込まれ、人は滅亡の危機だぞ?』
「…話の流れから推測するに…それを阻止するためにあなたが復活したのでは」
『そうだ…ああ言いたいことはわかった、我が竜どもを鎮圧すればいい、そう思っているのだろう』
「…」
『しかし、それでは…フェアではないであろう』
「…はい?」
(いま、この竜…なんと?)
『我は誇り高き人類の英知の結晶、例え相手が身勝手な竜どもだろうと、条件は対等にする』
「…つまり?」
メルルは物凄く嫌な予感がした。
『貴様を…黙示録ノ竜の竜人とすることに決めた』
「…ちなみに拒否権は?」
『竜人にならぬと、貴様はここから出れん』
メルルは思う、一番身勝手な竜はお前ではないか、と。
「…はぁ」
メルルは自然と体の力が抜けてその場に座り込む。
(どうやら私はよっぽど普通の人生という物に縁がないようですね…)
やはり自分はそういう星の元に生まれたのだろうか、そう思うメルル。
「…で、具体的な目的は」
『ほう、竜人となる覚悟ができたか』
「どうせそうしないとここから出られないのでしょう?」
『無論』
「ならいいです、もうどうでも、さっさと説明してください」
メルルは前世から何かとやけくそになる癖がある。
『ふむ…とりあえず、特に人類を敵視している「大罪ノ竜」の竜人が抹殺対象だ』
「…抹殺対象…殺すのですか?」
『殺しはせん、ただ竜人に備わった竜の力を抹殺するのだ』
(竜人の力を奪うということでしょうか?)
メルルはそう解釈した。
「では「美徳ノ竜」たちは…?」
『奴らは基本的に今は人類の味方のようだ、故に中立を維持する…場合によっては協力関係を築くこともできるやもしれん』
この機械竜、頑固なようで案外、柔軟な部分もあるようだ。
ということで話は固まった…いやメルルにとっては固まってしまった、というべきか。
「では、私はさっさとこの村を奔放すればいいのですか?」
どこにいるのかもわからない大罪ノ竜人達、この身で探すしかないだろう。
『いや、貴様はそのまま村で生活していればいい』
「…なぜ?」
『目的はわからぬが、奴ら、なぜかこの村を狙っておる』
「…村を?」
『いくら大罪ノ竜たちとて天敵たる竜滅装を持つ竜狩り人を狙う意味がわからないが…もしや奴らなにか竜滅装に対する策をろうしたのやもしれん』
なぜかはわからないが、大罪ノ竜たちはこの村を狙っているようだ。
(…もしかして、この村に生まれた時点で普通の順調な人生とか、無理だったのでは)
『…貴様、どうやら「普通の人生」とやらにやけに憧れているようだな』
「…心が読めるのですか?」
『すでに貴様は黙示録ノ竜人となったからな』
どうやらメルルの知らぬうちに契約はすでに結ばれていたようだ。
『…しかし、ならば都合がいいかもしれぬぞ?』
「都合が…いい?」
『貴様は正体を隠して襲撃してくる大罪ノ竜人たちを抹殺しながら、表では普通に村で生活すればいい』
「…そんな」
『竜騎装は全身鎧…つまり着脱時を目撃されなければ、問題ない』
「…」
メルルは考える。
(確かに、それならバレる心配はあまりなさそうです、それに…)
これは、メルルが持つ、日常への渇望と、非日常へ憧れ、そんな一見矛盾したものを同時に満たすことも可能であるのだ。
「…いいですね、それ」
メルルは決断する、これは願ってもない渡り船だと。
『ふむ、ならばこれからは、その方針で行くぞ?』
「ええ、よろしくお願いします、シンギュラリティ様」
そうしてメルルは笑顔で頭を下げる。
…メルルは知らない、世の中そんな都合の良いわけがない。そもそも彼女が渇望する「普通の人生」というものが、いかに人間にとって高望みであるのかも。
黙示録ノ竜人~竜狩りの隠れ里を追放された「竜狩りの竜人」は自由に生きる~ @TOKAGE123
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