第6話

 私と先輩は車の中にいる。いつも運転するのは私だ。パワハラっぽくて気に入らないが、今は仕方ない。立浪先輩は寝ているから。


 あの毒人参ドクニンジンは、私が交通課に居た時に飛燕ひえん総一郎そういちろうの交通違反をもみ消していた事実に行き着くかもしれない。あのクソ漆原うるしばら刑事を何とかしなければ。でも、まずはこの男だ。


 今、助手席で寝ている立浪たつなみ宗太郎そうたろうも所詮はただの男だった。一晩寝たくらいで色気づき、ネクタイはいつもと違うし、香水もつけている。それなのに、今朝のメールでは「妻がいる、すまない」だと。もうビビッて。男はみんな同じ。勝手に沼って勝手にビビッて勝手にい出ようとする。


 こいつも飛燕と同じように沈めてやろう。別の沼に。飛燕とこいつの両方を誘惑した九重ここのえ葛子かつこはムカついたから始末したけれど、女同士だから綺麗きれいな風呂に沈めてやった。でも、こいつは汚い泥沼で十分。ハンカチに染み込ませた薬が効いているうちに、さっさと沈めてしまおう。


 どうせ私は「沼らせ女」だから。


 了

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