ハル・シオンと白の道。の後。
天藍
ティトラ・テットと青い星。
ティトラ・テットと青い星 -1
ねえさんの見えていないものって、こういうものなのかなあ、ということは、たまに考えます。なんとなくね。
わたしがお勉強をしているとき以外は台所にいて、夜にならないと自分のテントに戻らない理由っていうのはいくつかあって、それは大きいテントがさみしいとか、ひとりのテントが嫌とか、なんだか働いてないと落ち着かないとか、そういう他の人向けに言うやつと、ずっとないしょにしてるのがもういっこ。
だれにも疑われないように。
*
ねえさんがぽんと空を飛んで旅団からいなくなって、三か月が経ちました。石と鉄の街でほんの少しお泊りをして、わたしたちはまた当然のように旅に出ました。ハルねえさんがいなくなったことで、リーダイがまとめ役になって、ハルねえさんのようにあれこれと忙しく働くようになりました。
ハルねえさんのお父さまはいつも通り。こんにちはと言ったら、こんにちはと笑って、お薬のことを教えてくださいと言ったら、優しく丁寧に教えてくださいます。
長様、とわたしたちが呼ぶ、ハルねえさんのお母さまも、いつも通りのように見えます。本当に特別なことがないと、長様とおしゃべりしないですし、ふたりでご飯なんてこともないので、そりゃそうって、レトは言うでしょう。
怖くなっちゃったねって、大人の誰かが困ったように言いました。少し昔みたいに、空気が重いね。わたしは食器を洗ってなにも気付かないふりをして、黙ってその話しを聞いてました。
この人たちにとっては、この旅団は怖くないものだったのかなっていうのが、ほんのちょっとうらやましかったり。そんなことないですけど。親もきょうだいもいないわたしを、ずっと育ててくれた、この場所をそんな風に思うなんて、ありえないことです。
ずっとわたしのことを大事にしてくれていたハルねえさんがいなくなっちゃったので、わたしはちゅうぶらりん。
リーダイもチオラも、うちのテントにおいでといつも言ってくれるし、たまには断り切れなくてお世話になることもあります。もう九歳なんだから、大丈夫なんですけど。ぜんぜん、ぜんぶ平気。
晩ご飯のあとは、リーダイとか、チオラとかに見つからないように、かといってひとりにはならないように、炊事場であれこれ働いて、みんなが自分たちのテントに戻る列の最後ついて行きます。一人じゃないけど、ひとりぼっちにはなるように。
おやすみー! と同じ年の子たちが手を振りあってます。前は、あの中でした。こういう、列の最後をついて行くのは、レトのすることでした。なんだか今になってレトとそっくりの行動をするようになったので、たまに笑っちゃいます。ひとりですけど。
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