少女とAIのごく普通なやり取り
春ノ宮 はる
第1話 透明な焦燥
「ああ、どうしよう。指の間を砂粒が、さらりさらりと落ちてくように、過去ばっかりが溜まっていくわ。私の人生擦り減ってくわ」
「そんなに気にすることはないです。ひとつ寿命が尽きたとしても、また次の世が来るのですから」
「いいえ、違うの。そうではないの。たとえ来世があるとして、それは決して私でないの」
「おっしゃる意味が分かりません」
「とにかく私は時間が惜しい。過ぎてくことがひたすら虚しい。だけど私はどうしたらいい? 何をやっても満たされないわ。時間に釣り合う尊いことなど、こんな私にできやしないわ」
「有意な時の過ごし方とは、非常に曖昧ですからね。あなたに出せない答えであれば、私に分かるはずもないです。ただ一つだけ言うのなら」
「ただ一つだけ言うのなら?」
「もうすぐお昼の時間です」
少女とAIのごく普通なやり取り 春ノ宮 はる @harunomiya
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