婚約者に、「婚姻はちゃんとするから、学園にいる間は自由恋愛がしたい」と言われました

@keganiaoba

第1話

「アンバー、君に頼み事がある」


王立学園の入園が迫ったある日。

婚約者のアレックスに呼び出されて、口火を切られて私は嫌な予感がした。



「王立学園に行く間。僕は自由に過ごしたい。もちろん恋愛をちゃんとしたいんだ。もちろん、君との婚姻はちゃんとする」


アレックスは思い詰めたような顔をしている。

よほど、考えに考え抜いた結果の上で言ったのだろう。

嫌だとは言えない。


アレックスと私は政略結婚だが、関係は良好で仲は悪くないと思っていた。


思っていたのは私だけなのね……。

私はアレックスの事を好きだった。もちろん、今も好きだ。


涙が出そうになるのを堪えて、私は「構いませんよ」と頷いた。


アレックスが私以外の女性を連れて歩く姿を見るのが怖くて、涙を何度も流した。


そして、入園式を終えて初授業の日、アレックスは私の教室へとやってきた。


「アンバー!僕と結婚を前提に婚約してくれ!そして、王立学園に通う間は、僕を婚約者としてではなく、恋人として見てほしい!」


ちょっと、何言ってるのかわからない。


婚約はすでにしている。結婚を前提に婚約ってどういう意味なのだろうか。

婚約者だけど恋人として見てほしい。という意味なのだろうか、自由恋愛はどこにいったのだろう。


「えっと、自由恋愛をしたいんじゃないんですか?」


「君という素晴らしい女性がいるのに、なぜ他に目移りしなきゃならないんだ!僕は君のことをこんなにも愛しているのに、婚約者ではなくて恋人同士になりたいんだ!」


アレックスは言いながら、あ、言っちゃった。と、顔を真っ赤にさせて恥じらっている。

羞恥プレイを食らっているのはこちらなのに。


クラスメイト達は「正気かコイツら」と言わんばかりに私たちを見ている。


「はあ」


「今日の帰りにカフェに行こう!これは、婚約者としてではなくて恋人として誘っている」


少し面倒な誘い方だが、私はそれを受ける事にした。


「わかりました」


「僕ってなんて幸せ者なんだろ。こんなにも可愛い恋人と婚約者で結婚までできるなんて、はあ、死んでも、いや、死んだらダメだ!」


アレックスは言いながらデレデレと笑っている。


しばらく王立学園で、婚約者同士の自由恋愛が流行した。


デートの誘いに「これは、婚約者としてではなく恋人として誘っている」という決まり文句が、今年の「王立学園の流行語大賞」を獲る事になるなんて私もアレックスも思いもしなかった。

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