第20話 推しと観覧車

もうすぐ、閉園ですね。最後に、お願いを聞いて貰っていいですか?」




どうしたのだろう?改まって。




「どうしたんだ?未来たん」




「実は、そのドリームランドに来たら、最後に乗りたいアトラクションがあるのですが」




「それは、なに?」


未来たんが乗りたいと言うのなら最後に叶えてあげたい。




「では、言います。観覧車に佐藤さんと二人で乗りたいのです!」




観覧車かー、遊園地といったら女の子が乗りたがるアトラクションの一つだよな。


俺も、未来たんと2人で乗れるのなら、乗ってみたい。




「いいな。乗ろうか」佐藤は快く承諾すると未来たんはぱぁっと顔を輝かせて


「やったぁ!佐藤さんと観覧車ー!」と子供のようにはしゃいで喜ぶ。




 佐藤も、嬉しくなり、二人で向かう。




観覧車に向かう途中、遊園地に来て、未来たんと手を繋げていないことに今更ながら気が付いた。




 友達同士だからやっぱり、女性と手を繋いだらダメなのだろうか?


 でも、せっかくの遊園地周りのカップルは皆、仲睦まじく手を繋いでいる。




 どうしても、羨ましく見えるのだ。




「未来たん、俺からもお願いがあるんだけど、いいかな?」




「はい、なんですか?佐藤さん。わたしも言ったのですから、遠慮しないで言ってください」




今の未来たんに俺の欲求をぶつけても快く受け入れてくれるだろう。




 相手から受け入れて貰えることを見越して言うのは、少しズルい気がしたがここは


言ってみることにした。




 「未来たん、引かないで聞いて欲しいんだけど......」




「はい、なんですか?言ってみてください」未来たんは、意を決したように言う




「実は、俺......」




「実は?」




「この遊園地に来てからずっと思っていたんだけど、未来たんと手を繋ぎ歩きたい!」




「え?手を繋ぎたいんですか?!」




「は、はい」




言ったー遂に言ってしまったー!恥ずかしい!!


恋人でもない俺が、そんなことを言って引かれてしまっただろうか?




「なんだー、そんなことでしたかー。わたしはてっきり......」




「え?てっきり??」


なんだ?何を言われると思ったのだろう??




「いえ、なんでもないですっ!」




「そ、そう?」




なんだ?俺が、もっとスゴイお願いをするのかと思っていたのか?!




手を繋ぐより、スゴイことってつまりは......キス、とかか?




 いやいや、それはないだろ!俺たちは友達同士なのだから。


 だってそういうことは恋人同士がすることだろ?!




こうして、未来たんと観覧車に乗った。




 観覧車はグングン上昇していく。




 それにつれ、ドリームランドの夜景が一望できて、綺麗だ。




「佐藤さん、夜景がきれいですね」未来たんは窓に張り付いて目を輝かせて言う。






「そうだね。でも、未来たんのほうがキレイだよ」




未来たんの瞳が輝いていて、素直にキレイだと思った。




 というか、恋人でない女性にこんな歯の浮くようなセリフを言って流石にキモかったか?




「佐藤さん......ありがとうございます。なんだか照れちゃいますね」




未来たんは、顔を赤らめて、俺から顔を逸らして言う。




 本当に引かれていないか?!大丈夫だろうか?




「佐藤さん、今日は、通り魔から、わたし達を助けてくれて、格好良かったですよ」




「そう?あの状況なら当然のことをしたまでだからな。未来たんが無事で良かった」




あの時、逃げ惑うことをしないで、通り魔に立ち向かって良かった。




 未来たんの笑顔」を守れたのだから行き過ぎた行為だったもしれなかったが


最良の行動だったと思う。




 だって、俺の大切な人を守れたのだから。




 


そう、夜景を見ながら物思いに浸っていたら、観覧車は地上へと到着した。




「楽しかったですね!佐藤さん」未来たんは上機嫌で満面の笑みで言う。




未来たんが楽しめたようで、俺も大満足だ。




 「良かったな。じゃあ、もう、閉館だからホテルへ向かおうか」




「ほ、ホテル!?あわわ.......い、いいんでしょうか?私たち友達ですよね?」




あれ?なにか誤解していない?




「未来たん、リゾートホテルのことなんだけど」




「ああ、リゾートホテルでしたか!わたしはてっきり......」




この続きを訊くのは野暮だろう。




 純粋な未来たんのことだ。手順をすっ飛ばし、ホテルで行為するのかと動揺したのだろう。




 だが、俺は紳士だ。大切な行為はちゃんとした関係となり来る日まで大事にとっておく。




 未来たんんも、こういうことは恋人としての手順を踏んでから最後に行うと考えるはずだ。




 そのときまで大事にとっておこうじゃないか。




 そう、心に誓って、未来たんとリゾートホテルへ向かったのだった。


















                   ***






リゾートホテルに着いた後、ビュッフェレストランで料理を堪能した佐藤たちは自室に戻った佐藤は、ドリームストアで買った例の物を未来たんに渡そうとタイミングを伺う。丁度よく、未来たんは部屋の端に設置してあるお洒落な小さい腰掛けに座り目の前の小さいテーブルにお菓子を乗せて、食べている。


まだ食べるのかこの子は……




よし、今だ!と俺は未来たんに声を掛ける。「今日は、楽しかったね。未来たんは楽しめたか?」


しまった!声が少しうわずってしまった。




「。……?」としばしの沈黙が流れる。




イヤだなこの沈黙。何この人、テンパってキモいんですけどwなんて思われていないか心配になる。




「はい、すごく楽しかったですよ!今日はありがとうございました!」




俺の心配なんて杞憂だった。未来たんは快く返してくれた。


そんな、素晴らしい一日を貰ったのはこっちの方なのに……この子ほんとに天使だ!




良かったキモいとわれたらどうしようかと思った。






気持ちを伝えるなら今だ!と意を決してDストアで買ったムーさんのぬいぐるみをホワイトデーのお返しも兼ねて渡す。






「未来たん、これ。ホワイトデーのお返しなんだけど、受け取ってくれるか?」




「あー、ムーさんのぬいぐるみー!わたしこれが欲しかったんですよ貰っていいんですか?」






「ああ、未来たん、ストアで欲しそうにしていたから」




未来たんがこのぬいぐるみを欲しそうにしていたのは気づいていた。






「あ、ありがとうございます……大事にしますっ」とギュッとムーさんを抱いて喜んでくれた。


その愛くるしい姿がとても愛しくて俺もギュってしたくなる。




この絵図らが最高に可愛くて思わず、頭をなでなでする。




「んっ……」と未来たんは気持ちよさそうに目を細める。




「いい歳してぬいぐるみで喜ぶとか、子供っぽいとか思いましたか?」




「いや、そんなことないよ。可愛いと思うぞ。いい歳ってまだ二十歳だし……」




正直、中学生がぬいぐるみで喜んでいるようで尊くて可愛い。






「佐藤さん、子供扱いしないでください!こう見えて、わたしは大人なんですよ!」




と、未来たんは未来たんは大人顔負けな大きさのバストを誇って胸を張って言う。すると彼女の大きな双丘そうきゅうが強調されて目のやり場に困る。






「そ、そうだよな。未来たんは大人だよね」


未来たんの胸は大きい。大人顔負けだ。


そこだけは立派な大人だった。


「ちょっと、今、どこ見て言ったのですか?!佐藤さんのえっち!」と未来たんが両腕で胸を隠して罵倒する。




「違う、そういう意味じゃなくて……」


だからといってどういう意味かも説明できずにいたのだった。




深夜、お互いに床について寝ていると体重がかけられベッドが軋んだ布団の中に未来たんが潜り込んでくる。




 え?どう言うこと?一つのベッドで一緒に寝るのか?前にもこんなことあったような……




「佐藤さん、今夜、一緒に寝てもいいですか?」と未来たんが甘えてくる。顔との距離が近い。鼻と鼻がくっつきそうで未来たんの甘い吐息が当たる。




 シャンプーのいい匂いが漂ってきて鼻腔をくすぐる。理性が吹き飛びそうだ。ヤバイ!




「変なこと考えていませんか?まあ、佐藤さんがどうしてもしたいと言うなら受け入れるんですけどね……」




え?いいのかこで俺が押し倒したら未来たんはそれを受け入れてくれるという






でも、いきなりそんな不純なことはダメだ!俺は、未来たんを大切にしたいからそれは来たる約束の日まで大事に取っておく。今は、未来たんの鼻をぷにっとつっ突いておくだけにする。






「え?いいのですか?しなくて」




「それは、俺たちが恋人同士になって未来たんから、したいと思った時まで大切に取っておきたいから今はいいよ。」


 一夜の過ちで出来てしまったら未来たんの負担になってしまう。




 俺も今の経済状況では未来たんと子供を養っていけない。




 したくないといったら嘘になるが、それは、自信を持って二人を養えると思えてからでなければいけないのだ。




「それじゃ、そんな紳士な佐藤さんにわたしからご褒美をあげます。目を閉じてください」






言われるままに俺は目を閉じる。すると頬に柔らかくてしっとりとした感触があった。




「はい、ご褒美は終わりです」






「え?何、今の?」


もしかして」キ......




「女の子からのキスしたのに『何?」はないでしょう!」




「え…あっ……」俺は、今されたことに気づき急速に心臓が跳ねた。




その夜は心臓がバクバクで眠りにつけないのだった。




               ***


読んでくれてありがとうございます。




最終回じゃないです!




まだまだ続きます。




応援してくれると嬉しいです。


フォローしてもらえると喜びます!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る