第16話 や…やばいかも…

ぞろぞろと藤田先生のところに向かう夜空達。移動途中で一人の生徒が「座禅疲れた」とこぼすと、みんながうんうんと共感していた。夜空も実際座禅は疲れた。普通やらないからな座禅なんて。


そうこうしているうちに藤田先生のいる場所に着いた。


「全員着いたようだな。俺は始めにも紹介された藤田だ。今日はよろしく。早速だがここでは自分のスキルを使って奥に見える的にスキル効果を当ててくれ」


そう言いながら奥の方に指を向けた。それにつられるように夜空達もその方向を向いた。指さした所には遠くからはよく見えないけど何かの生き物のような形をしていた。あれにスキル効果を当てれば良いらしい。


「あの的はいかなる効果のスキルを受けても壊れることは無いから、思う存分やってくれていいぞ」


全力でやっても良いとなるほどなるほど。ならお構いなしにやろうと、夜空は思った。打つ順番は相談の結果、じゃんけんになった。勝った人から打っていくみたいだ。この間、藤田先生は相談の間に入ってこなかった。


「「じゃんけーん、ぽん!!」」

あいこ。

「「あいこで、しょ!!」」

あいこ。

「「あいこで、しょ!!」」

あいこ。

「「あいこで、しょ!!」」

あいこ。


これだと埒があかない。というか、この人数でじゃんけんしたら中々終わらないよね…。そう夜空が思った時。

「「あいこで、しょ!!」」

夜空含め六人が負けた。そう、夜空は負けた。この時点で夜空がやるのは六番目以降になることが確定した。勝った人同士、負けた人同士でじゃんけんをして、夜空は九番目にやることになった。割と最後の方になってしまった。

(さ…最後の方…?)

夜空はがっくりと肩を落とす。そんな夜空を見てか周りのメンバーが夜空を慰めてくれた。


「大丈夫だって。ただ順番を決めただけだよ。そんなに気を落とさないで」

「ありがとう、そうだよね。今思えば最初の方だったら、緊張していたかもしれないし」


その後、グループの一人が順番を決まり終わったことを藤田先生に伝えに行くと、開始は十分後と言われた。その間に準備を済ませておけだそうだ。夜空は九番目だけれど、念入りに準備体操をしておいた。ぐっと腕を伸ばして準備完了。


数分後。

「時間になったぞ。最初の生徒は前に出てきなさい」


最初の生徒が前に出た。言われたところに立った生徒は最初だからか、深呼吸をしていた。そして、落ち着いたのかスキルの発動準備を始めた。掛け声と共に足元に模様が浮かぶ。その後に手を高く上げ、的のある方向に手を振り下ろす。すると、何処からか生まれた風が的を綺麗に呑み込んだ。離れたところに居る夜空達にもその風は伝わってくる。相当な強さがあるようだ。分かりやすく言うなら、台風の時に吹く少し弱い風のような強さだった。ちなみに風に呑まれた的はというと、ガタガタと揺れているだけで破損は全くしていなかった。的は本当に壊れないようだ。スキルって恐ろしい…。

一人目が終わり、二人目も無事終了した。次に次にと順番が回り、とうとう夜空の番になった。指定されたところに立ち、スキル発動準備を開始する。


(的にスキル効果を当てれば良いんでしょ? 【共鳴】のどの効果を使おう…?)

少し悩んだのち、使う物を決めた夜空は気を引き締める。


「『限界解放』!【共鳴(レゾナンス)】!」


いつものように白色の模様が浮かび…浮かび? あれ? なんかおかしくね?

いつもの白い模様の一部に色が付いている。今までは全面的に白。他の色は無かった。

違和感を覚えたが、足元に白い?模様が浮かび上がる。悩んで決めた夜空が使う物はこれだ。


「【破滅の槍(ロンギヌス)】!」


そう叫ぶと、夜空の左手に青い炎が棒のような形を作り、【破滅の槍】を形成させていく。炎が収まると、綺麗な大きな槍が夜空の左手に握られている。それを的に向けて投げるために大きく振りかぶる。


「行っけぇぇぇぇえ!!!」

力いっぱい投げ飛ばすと、空気を切り裂くような音が鳴り、的目掛けて一直線に飛んでいく。しかし、そこでトラブルが起きた。なんと投げた槍が空中で止まった。止まったかと思った矢先、信じられない事に槍が分離していき、四本にまで分離した。四本になった【破滅の槍】はそのまま的に刺さっていく。一本目、二本目、三本目…四本目。


ミシッ…。

メキッ…。

バキッ…。

ボキィッ…。

ドサッ……。

コロコロ……。


っと、何かが落ち、転がる音。


「へ…?」


いや、待て待て。そんなはずは…。夜空は戸惑いながら的のある所を凝視する。そこには地面に倒れている的の姿。


なんとスキルで守られていて壊れないはずの的が四本の【破滅の槍】を受けて、折れてしまった。これには全員—


「「「えぇぇぇぇ!?!?」」」


と叫ぶのだった。当の本人は冷や汗を流している。

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