第15話 叩かれたって表現、もしやちょっと危ない?

目を瞑った夜空は何も考えていなかった。ただ時間が過ぎるのを待つだけ。


二分後、何処からか「ぺしん!」と叩かれたような音がする。誰かが先生に叩かれたようだ。

その数十秒後、同じ方向からこれまた「ぺしん!」と叩かれた音。一回目の音で集中が切れたのだろうか。そんな事を横流しに考えていたら夜空の肩に強い衝撃が襲った。そして、叩かれた事を理解する。叩かれた時間、開始から五分。振り出しに戻ってしまった。


(何で!?僕動いてなかったと思うんだけど…?)


又もや疑問が増えたが、気を取り直して再度頭を真っ白にする。無心、無心、無心。そのまま五分が経過した。残り半分。夜空が五分を取り戻した時、グループの一人が十分座禅をクリアしていた。目を瞑っているため夜空にそのことは分からない。


夜空が一回叩かれてから十分。夜空も十分座禅をクリアした。クリアした時には既に三人居た。夜空は四番目のようだ。まだ座禅を組んでいるのは九人。その九人が終わるまで夜空はじっと待った。特に何も考えることもなく。

そこから全員が終わったのは十五分後だった。トータルで三十分くらいだろう。


「全員終わったな。上限四十分になるより前に終わることが出来たのは凄いぞ。それにこのタイミングで言うが、俺はずっとスキルを使っていた。【限界突破】の【心読み(マインドリーディング)】っていうんだ。俺のスキルは他人の思考を感じることが出来るものなんだ。だから例え体が動いてなくても、雑念が入っていたら叩いていた」


(【限界突破】!?)

夜空はギョッとする。周りも似たような反応だった。なんと、夜空達の座禅の取り組みを見ていたのはとんでもない人だった。夜空は初めて【限界突破】というのを見た。それに、気付かないうちにその効果を受けていたようだ。先生のスキルを軽く説明してもらって夜空は座禅中動いていないのに叩かれたのを疑問に思っていたが、これで腑に落ちた。先生は動いた人は当然のように叩いたが、それに加えて心を読んで雑念がある人も叩いていたようだ。


「次は藤田先生のところで指導だから、そこに移動しなさい」

「「はい!」」


新たな発見で驚いた様子で移動していく夜空達を田中先生は後ろからじっと見守っていた。

これにて、田中先生の座禅指導は終了。次は藤田先生の指導だ。何をするのだろうか。

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