俺は、脱いだら凄いんだから

ヒコしろう

第1話 虚弱体質の脱ぐ理由


「まぁ、待てよ!


準備ってものが有るから…」


と言いながら、村の近付くの森で上着もシャツも…そして、ズボンまで脱ぎ捨てる俺…


今日の〈お相手〉はゴブリン三匹…


パンツ一丁でツルハシを構える俺は、


「安心しろ、全員順番に相手してやる!」


というが、


ゴブリン達は、


「グゲ?」


と首を傾げて、俺の事を見ている…


…勘違いしないで頂きたいのは、

〈パンツ一丁〉だからとて、性的な意味で相手するのではない…これにはとても、とても深い〈訳〉が有るのだ…


さて、何処からお話すれば良いのか…


まず、俺〈オルナス〉の、ややこしい身の上から話そうかな?


簡単に言うと、俺は〈孤児〉である。


両親は村や街を回る行商だったらしい…しかし、村から村に移動する時に魔物の群れに襲われたらしく、


オムツ一丁の俺が奇跡的に助かったのみで、両親共に魔物に食べられたらしい…


そして、そんな俺を拾ってくれたのが、鍛治師の〈オルグス〉爺さんだ。


爺さんは、物好きというか…厳つい見た目と違い、子供が大好きだ…


一応、育ての親の名誉の為に言っておくが、〈性的〉な意味ではない!

純粋に世話焼きで子供が好きなのだ。


孤児など珍しくも無いこの世界だが、孤児院も無い小さな村で孤児を手当たり次第に連れて帰り、育てる人間はそうは居ない…


爺さんには血の繋がらない子供が何人もいる…


俺も会った事のない兄や姉が居るらしいが、現在家に居るだけでも俺を含めて四名…


爺さんの弟子として工房に残っている〈オルフェス〉兄さん …兄さんというが、もうちゃんとしたオッサンだ…


〈オル兄ぃ〉も赤子の時に拾われて爺さんに名前を付けられたらしいが…


爺さんは、自分が〈オルグス〉だから〈オル○○〉と名付ける…〈オル兄ぃ〉イコール〈オルフェス〉兄さんなので、後に続く〈オル〉チームが困ってしまう…


俺の下にも二人、病で親を失った兄妹の〈ジル〉と〈シーラ〉が居る…この二人は病の母親から爺さんが預かったので〈オル◯◯〉では無い、


だが、この二人が俺を呼ぶ場合…


俺の呼び名が〈オルナス〉のオとナを取って、


〈オナ兄ぃ〉に成っている…


あまり、反応しないように生活しているが、


あまりと言えばあまりな呼び名である…


爺さんには〈感謝〉しているが、もう少し名前はヒネって欲しかった…


〈○○グス〉でも良いじゃないか…


などと愚痴りたい気持ちもある。


あと、俺〈オルナス〉少年、十歳は、前世の記憶がある…


といっても、しょうもない前世の記憶…


この世界とは全く違う、魔物も居ない平和な世界の記憶が…


虚弱体質で、まともに運動も出来ず、

体を鍛える為に父方の祖父の道場で剣を叩き込まれたが、やはり体は弱いまま…


大人に成り、騙し騙し働いても入退院を繰り返す有り様、


そして、前世の最後は、湯治で訪れていたド田舎の隠れ湯にて、入浴中に見たこと無いほどデカい赤い毛の猪に素っ裸のままカチ上げられて血ダルマにされて、


…死んだ…


薄れゆく意識の中で、


〈せめてパンツだけでも履いていれば、走って逃げれたかも…〉


〈あぁ、虚弱な俺では逃げきれないか…〉


〈習っていたのが剣ではなくて素手でも出来る武道ならばあるいは…〉


〈やっぱり、虚弱では勝てないな…〉


〈あぁ、生まれたままで鍛えなくても強い体が欲しかった…鍛えて尚虚弱では…〉


と、俺の命が尽きる瞬間、


「スマナイ我のミスだ…その願いを叶エテやる…」


と片言のセリフを聞いた次の瞬間、


気がつけば〈オルグス〉爺さんに抱かれていた…


なので、両親が死んだ後に〈俺〉として覚醒したのだが、


…まぁ、大変だった…


言葉や文字…常識に食習慣…


それに、何より〈前世の記憶持ち〉とバレない様に頑張った。


〈キモい〉と思われたくないからだ…


そして、もう1つ…この世界の人達の身体能力の高さだ…


井戸から汲んだ水瓶を


「うんしょ、うんしょ」と可愛く掛け声をかけているが、当時幼稚園ぐらいの姉〈エリス〉が運んでいるのだ…


バケツ2~3杯分はある瓶など少女には持ち上げる事すら困難なはず…


しかし、俺は確実に健康体に成ったが、異世界人のパワーの無い人間、


つまり、


今回の人生も〈虚弱体質〉扱いが決定したのだった。


しかし、


数年経ち、俺も色々出来る様になり、


ある日異変に気がつく…


井戸で水浴びする時に、パンツ一丁で水を汲むためにロープをたぐるが、


「えっ?何時もの重さを感じない!」


と…羽の様に軽い満水の水汲みバケツを確認の意味も兼ねて、二回ほど汲み上げるが…


〈やはり軽い!


俺も成長して力がついたのか!?〉


と喜んだが、


翌朝いつもの様に水を汲もうとすると、やはり重たくて持ち上げるのに大汗をかくはめに成った。


そして俺の脳ミソはとある事実にたどり着いた。


〈俺の体は特殊な制約?がある!〉


つまり、


丸裸だと、ちゃんと強い体だが、装備をすればする程〈弱くなる〉のだ…



もしも、死の間際聞こえたあの声が〈神様〉なら、声を大にして言いたい。



〈生まれたまま、鍛えなくても強い体は、そういう事では無い!!〉


と…


だが、産みの親の両親が食われた魔物に、オムツ一丁の俺が食われなかったのは、この仕様が有ったからだろう…


つまり、俺〈オルナス〉君、十歳は、


〈脱げば、脱ぐほど強くなる特殊性癖…いや特殊能力〉を持ったお子さまなのだ…


〈オムツ一丁〉>〈一般的な大人〉


という式が成り立つ。


まだパンツ一丁でも許される子供のうちに〈レベル〉的な物を上げて強く成れば、服を着て弱体化しても〈一般人〉として生活出来るかもしれない…


オルグス爺さんは〈恩返し〉など期待していないが、俺は何とかして爺さんに〈恩返し〉がしたい、


それには、


俺自身、着衣時の身体能力が、〈せめて一般人レベル〉を目指したい…



という訳で、現在の状況に至ります。


三体の緑色の醜悪な人相の子供のような魔物にパンツ一丁で立ち向かう十歳の子供…


絵面としては絶体絶命な場面だが、


パンツ一丁の俺は〈余裕〉だ…


「さぁ、かかってらっしゃい!


俺、脱いだら凄いんだから!!」


と、ツルハシを振り上げてゴブリンに向かって走り出す俺だった…

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