三十一文字の歳時記

四辻 重陽

令和三年葉月より令和五年睦月まで

令和三年


葉月


雨の中 薄暮に鳴いた 蜩は 知るか知らぬか 何か思うか

道端に ぽつりと咲いた 白百合は いずこより来て いずこへと散る

吐いてでも 酒を飲めよと 急く頭痛 緩慢な死が 頭を過る

鈴虫の 鳴く丑三つに 出歩きて 無人の街で 影と戯る


長月


暗がりに 響く雷鳴 雨の音 夏の終わりの 集中豪雨


令和四年


如月


底冷えの 名のみの春に 凍えつつ 南の島の 災禍を思う


長月


絶命の 悲鳴を上げる 油蝉 途切れた声は 夢幻か


師走


繰り返し 写し取っては 壊れてく データと言えど 避けるは能わ


令和五年


睦月


初雪に 圧され倒れた 枯れ尾花 雪は融けても 立ち上がり得ず

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