能面
梅田 乙矢
能面
私は病院のベッドで目を覚ました。
どうして病院にいるのかよく分からなかったが、母の嬉しそうな声が聞こえて医者を呼びに病室を出ていく音が聞こえた。
頭に
しない。
もしかして結構な期間意識がなかったのかな…
そんなことを考えていると廊下をバタバタと駆けてくる足音が聞こえたのでドアの方を見た。
医者と母が病室に入ってきたのだが、
私はその顔を見て固まってしまった。
二人とも能面を
なんの冗談?
呆気にとられている私を尻目に二人は何かを
話している。
その後、どこか痛いところはないかなど色々
聞かれたがそんなことより能面が気になって仕方ない。
私は母に
「どうしてそんな物被ってるの?」
と尋ねた。
しかし、母は
「何を言っているの?
何も被ってないわよ」
と
私は口を開きかけたが、看護師が入ってきてまた唖然とする。
看護師も能面をつけている。
一体なんなのだろうか?
全く理解できない。
その後、しばらくして退院することになったのだが、能面の謎は解けなかった。
解けないというより謎は深まるばかりで病院から一歩外に出ると歩いている人、車を運転してる人、店員さん全員が能面なのだ。
私が意識を失っている間に何が起こってしまったんだろう…。
家に帰り着いてもやっぱり面を被った父、弟が出迎えてくれた。
何度も何度もどうしてそんな物をつけているのか問いただしてみたが、返ってくる答えはみんな同じで
「何言ってるの?そんな物つけてないよ」
だった。
退院してから久し振りに高校に行って友達に再会しても全員が同じ顔で話しかけてくる。
憂鬱で仕方ない。
どこを見てもみんな同じ能面で違うのは声と髪型と体型ぐらい。
たまに
その場合はだいたい怒っている。
私以外の人間がみんなお面をつけるようになっていた。
理由を誰も教えてくれないし、何だか仲間
はずれにされているような気がして
私はネットで能面を注文し、みんなと同じように面をつけて生活するようになった。
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