第5話


 ポシェットから結界石を出して、荷馬車から降りると、あちこちに焚き火の後のある広場のような場所だった。休憩場所としてよく使われているみたいだね。

 ふたりはそれぞれ敷物とテーブルをバッグから出しているところで……


 「今日の昼は宿屋で頼んでおいたものよ」

 「そうなんだ」



 テーブルの上に次々と出されていくのはサンドイッチかな?

 宿屋さんはサンドイッチを何種類も準備してくれたみたい。そのためここでは火は焚かないらしい。

 こわばった体をほぐしてから靴に浄化をかけてから敷物に座る。こうしておけば靴を脱がなくてもいいし、何かあってもすぐに走れるからね。


 「「「いただきまーす!」」」


 私はお肉が挟んであるサンドイッチを選び、かぶりつく。美味しい……でも、火であぶったらもっと良かったかもしれないな。

 水筒のお茶を飲みつつ、そのために火を起こすべきか悩んだけど……

 あっ!そうだっ!


 「ティア、何してるのかしら?」

 「え?生活魔法で火を出してサンドイッチあぶってるんだよ?美味しそうでしょ?」


 火魔法を使ったら丸焦げだからね!生活魔法がちょうどいい。

 焦がさないよう気をつけつつ全体をあぶって……早速、いただきます!

 うん、やっぱりほかほかの方が美味しいね!火を焚かなくてもできる手軽さがいいよね!


 「お、美味そうだな!俺もやってみよ」

 「あら、私のもついでにお願い」

 「おう、まかせろ!」


 ふたりもあぶったあとにかぶりついている……気に入ったようだ。よかった。

 私もふたつめのサンドイッチをあぶることにしよう。今度のはベーコンとチーズが入ったものだ。あぶったらチーズが伸びてさらに美味しく感じた。


 「あ、そうだ。さっきスウィの実採ったからデザートに一緒に食べる?」

 「ええ!」

 「おう!いいな!」


 あっという間にスウィの実がなくなり、美味しい食事を終えた。


 「そういえば、ふたりはポーションの見た目からでも品質とかわかったりするのかな?」

 「まぁ、なんとなくだけとわかるわよ?でも、そんなことするなら鑑定すればいいじゃない」

 「鑑定ってそんなスキルないでしょ?」


 鑑定スキルってものすごく珍しいって聞いたことあるし……


 「ん?鑑定の魔道具ならもってるぞ?」

 「え?そうなの?」


 ポーションをよく使うふたりなら見た目からでもわかるかと思ってダメもとで聞いたんだけど……まさかの魔道具持ってたとは。


 「ええ、たしか……私?いや、あなたが持ってるわよね」

 「おう!ちょっと待ってな!」


 お父さんが鑑定の魔道具を探す間に、私も作ったポーションを出していく。


 「これなんだけど……さっき、ポーションを杖ありと杖なしで作ったら、だいぶ雰囲気の違うものが出来たからさー」

 「そういわれると確かに違うように見えるわね」

 「うん、 杖の効果なのかわからないけど、もし鑑定できるのなら調べてみたいなーって」

 「あったぞ!」


 お父さんが手にしているのは片眼鏡のようだ。


 「それが鑑定の魔道具なの?」

 「おう!昔ダンジョンで見つけたやつだな……ただ、人や魔物には使えないがな」

 「そっかー……ポーションは調べられるならお願い」

 「おう!」


 それぞれ、初級体力ポーションと初級魔力ポーションの杖を使用せず作ったもの、杖を使用したもの、杖を使用しスウィの実を入れたものを大まかに分けて置いてあるのでお父さんはテキパキと鑑定していく。


 「ほう……杖不使用のポーションも相当品質高いが、杖を使用したポーションは限りなく中級に近い初級ポーションとでたぞ?」

 「えぇー!」

 「あら、すごいじゃない!」


 試しにスウィの実入りの体力ポーションを3人で分けて飲んでみることになった。味の違いもチェック……


 「美味しい……よね?」

 「おお。今まで飲んだポーションで1番美味いな」

 「ティア……これ増産すべきよ!」

 「だな!これ飲んだら他の飲みたくなるぜ」

 「確かに……」


 今までと比べたら普通に飲めちゃうもんね……これなら子どもでも飲めそうだ。それに疲れもすっかり取れた気がする。


 「スウィの実が良かったのかな?それとも杖のおかげで、混ぜるのはどんな果物でも問題ないのかな?」

 「試してみましょう!」

 「だな!とりあえず持ってる果物出すか!」

 「うーん、でもあと5本分くらいしか体力草ないから探さないと……」

 「とりあえず1本ずつ作ってみて、味見してからどうするか決めても遅くないわ」

 「わかった」


 周囲に人気はないけど、念のため荷馬車の中で体力ポーションを作ることに。

 出来上がったポーションはすぐに試飲するので瓶に詰めずコップに入れておく。ポーション瓶の節約のために。私もリサイクルしたいと思うし浄化で洗浄と乾燥の代わりはできるけど、蓋がないから結局使えないよね……


 そして、それぞれ違う果物を混ぜた体力ポーションができた。


 杖を使って作ったから、色やキラキラ度は先程作ったものとそう変わりはない。あとは味だ……ごくり。


 「じゃ、飲んでみよっか……」

 「そうだな」

 「ええ」


 飲んだ結果……うーん、以前の開発版よりは飲めるけど、さっきのスウィの実入りと比べると微妙……やっぱり杖とスウィの実の組み合わせがよかったのかなぁ?


 「よし、スウィの実をもっと探すわよ!」

 「薬草類もだな!どこかに群生地なかったけ?」

 「ええ!少し先に川があったし、あの辺りにありそ気がするわ!」

 「なぁ、杖ももっと上物用意したらポーションも美味くなるか?」

 「そうよね!どこかのダンジョンで探しましょう」

 「いや、これで十分だから!」


 ダンジョンで捜すっていっても、この杖よりいいものは深い階層にしか出てこないというし、それも確実に出るとは言えないんだから……うん、危険が伴うしこれがいいよね!


 こうして、旅に薬草と果物を組み合わせた美味しいポーション作りが加わった。

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私ですか?聖女やらせてもらってますけど……え?そちらが本物の聖女だから私は用済みですか? 瑞多美音 @mizuta_mion

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