~元に戻ったカノンの生活編 Chapter 2~
第87話~カノンの兄~
視点は変わりアルストロメリア王国。カノンの自室。
月日は3月の頭。
カノンがおまじないの本の秘密や歴史を調べてから数日。
カノンはリーデル子爵の事件後の処理に追われていた。
「……雇用問題に税金問題…被害女性達の生活とアフターケア…やる事が多過ぎますわ。元子爵の事件も無事に終わって、おまじないの本の謎も解明して少しは落ち着くと思ってましたのに…とりあえず、被害にあった女性達のアフターケアはこんな感じかしら。一度お父様に相談ね…。」
カノンはすでにまとめていた書類をさらに細かく手直ししていた。
その書類を手に持ち自室を出て父、オリヴァーの書斎を目指した。
「お父様、ご相談があるのですがよろしいでしょうか。」
「おぉ。入ってもよいぞ。」
「失礼します。」
カノンはオリヴァーの書斎に着きドアをノックして声を掛ける。
返事が返ってきたので書斎に入ると、父ともう一人応接用のテーブルを前にソファに腰かけていた。
オリヴァーが一人ではない事に驚き、すぐに呆れた顔になる。
「……殿下…なぜまたここに…。数日前にお泊まりしたばかりですわよね。……いえ、もうお聞きするのは
「そんな事って、つれないなぁ。リーデル子爵が治めていた領地の件で相談があって来たんだ。」
カノンの言葉にライラック殿下は軽い様子で応える。
カノンはその様子に呆れながらも一応仕事で来たという事を知り、オリヴァーの隣のソファに腰を下ろし、二人の前に書類を差し出した。
二人は書類を受け取り、先に口を開いたのはライラックだった。
「カノン嬢、これは?」
「例の事件の被害にあった方々の今後の対応策ですわ。領地の件でご相談と言うならぜひわたくしも混ぜてくださいまし。」
カノンの言葉にライラックとオリヴァーは顔を見合わせ承諾した。
「それじゃ、カノン嬢の話から聞きたいな。」
「わたくしのはその書類に書いてある通り、衣食住の提供をしたいのです。できれば木造の建物に温かみのあるお部屋…個人の好きな物でお部屋を埋め尽くすのもありですわね。」
カノンの提案を聞き、二人は驚いた様子でまたも顔を見合わせる。
カノンはその様子に疑問に思っていると、オリヴァーが説明した。
「ちょうど、殿下と話していた内容に領地の廃屋が入っているんだよ。しかも木造だ。驚いたな…。」
「…まぁ…そうだったのですか…。それならすぐに状態を確認して受け入れる準備を整えましょう。」
「そうだな。さっそく建築に詳しいウッドに相談してみるとしよう。…あとは雇用か…。それと、防犯も欲しいな…。」
ライラックとオリヴァーが話していた領地問題の中に木造建ての廃屋が入っていたらしく、カノンはすでに出来上がっているものを手入れするだけならと幾分か気持ちが軽くなった。
ゼロから建てるのは時間もそれなりにかかる。
女性達の心情を思うと早く事を進めたいと思っていた為話が着々と進む事に安堵した。
オリヴァーがこぼした防犯の方もカノンには策があったようで、またも提案を持ち掛ける。
「防犯でしたら、わたくしに考えがありますわ!女性でも出来る護身術を取り入れたり、お父様がリーデル家へ派遣した凄腕のジェードとシェルにも手伝って頂きたいのです。」
「……女性でも…出来るのかね…。いや、我が娘もしているくらいだから出来るのだろう…。はぁ…いつの間にこんなに強くて活発になったのやら…。」
カノンの防犯の提案にオリヴァーはため息を交じえ、頭を抱えた。
「そういえば、フローライト侯爵。領土も広がり業務も多くなってきている中、家業はこのまま貴殿が務めるのかい?たしか…カノン嬢には兄君がいたはず…。」
カノンとオリヴァーの話を静かに聞いていたライラックがふと思い出したようにオリヴァーに疑問に思っていた事を訪ねた。
その問いに頭を抱えていたオリヴァーが答えた。
「ご心配痛み入ります。その件でしたら、解決します。出家…もとい、他国へ独自留学していた息子が近々帰ってくるのですよ。」
「……お兄様が…帰ってくる…。」
オリヴァーの返事を聞いたライラックは安心したような表情をしていたが、その
「カノン嬢、青ざめた表情をしているけど、何かあるのかい?」
「ぁ…いえ…えぇっと…。お兄様は基本的に明るい方なのです…。それはいいのですが…。」
そうカノンが言いにくいようでもごもごと話をしていると、書斎のドアが勢いよく開き掛け声とともにカノンの姿を見るなりある人物が抱き着いてきた。
「ただいまーー!!僕の可愛い妹ーー!!会いたかったぞーーー!!実に3年ぶりだなぁ…。あー美人!麗しい!変わらないなぁ。いや、3年前より格段と美しい!」
「…フロックスお兄様こそ、相変わらずですわ。おかえりなさいまし。」
カノンに抱き着いてきたのは先ほど話題に上がったフローライト家の長男でカノンの兄だ。
カノンの兄は重度の妹思いのようで抱きしめたまま離そうとしない。
それを呆れたカノンが離れるように少しきつく言うと、兄、フロックスは渋々離れてくれた。
フロックスはライラックがいるのに気付き、侯爵家としての挨拶を交わした。
「…とまぁ、明るいのですが…少しうるさい方なのです。」
「つれないなぁ。けど、まぁ、元気そうで何よりだ。ここに来るまでに少し前の噂や今の現状も少しは耳に入れているから、どんな様子かと思ったら…心配するまでもなかったね。今後は僕も家業に専念するからよろしくね。それと、他国にもアザレアの事が広まり始めているよ。もしかしたら国をあげての事業になりかねないかもね。」
フロックスはカノンに関する噂や今の国政の事を少し耳にしていた為、今後の話をするべくカノン達の話に加わった。
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