第83話~美桜と占い師~

美桜が眠りについたあの後、美桜の両親は峰岸君や原さんに何度もお礼を伝え、原さんにタクシー代を渡そうとしたのだが、原さんは「大切な友達の為にした事なので」と受け取らなかった。

その代わりに今度夕ご飯をご馳走する事にして、この日は解散となった。


学校の方も月曜日は念のため大事を取って休むように母に言われ、すごく心配を掛けたので素直に母の提案を受け入れた。


美桜の体調も回復し、火曜日に学校に登校した際に部の顧問の先生や主将、部の皆にお詫びを伝えるとこんを詰めた事をこっぴどく怒られた。

それでも大事に至らなくて良かったと安堵され、今後はこんな無理はしないようにと念を押された。


美桜が倒れた後の大会の様子を聞くと、無事に団体戦も本選出場するとの事だ。

美桜が意気込もうとしたら、主将にもの凄い剣幕で止められた。

今後は程々に練習をしようと考えを改めるのだった。


大会の応援に来ていた美桜のファンの子達からも心配の声を掛けられたのでその度にお詫びとお礼を伝えまわった。



そうして学校生活を何事もなく送り、大会の翌週の土曜日の放課後。



この日学校が午前中で終わり、部活も土日は休みという事で美桜は原さんや峰岸君と駅前の新しいショッピングモールへ来ていた。


大きい見た目のショッピングモール。

中は案の定とても広い空間が広がっており、いろんなお店が並んでいて原さんは意気揚々としている。

そして正面入り口から入って真っ先に目に入るサービスカウンター。

その後ろの壁に掛けてある大きなデザイン画は例の美桜と峰岸君が考案し手掛けたデザイン画だ。


「おっきぃ~!!ひろ~い!あ!あれ!美桜ちゃんと峰岸君が手掛けたって言うデザイン画!!ものすごく大きくて綺麗に飾られているね!ふふふ…二人の初の共同作業…ふふふ…ケーキ入刀の前に共同作業するなんて…。」

「い、いのりちゃん、落ち着いてください。笑い方とそのお顔すごく不気味ですよ。それに、共同作業ってそんなんじゃないですよ。」

原さんの楽しそうな笑いに美桜は恥ずかしくなり否定する。


三人はおしゃべりしながら、ショッピングモールの中のいろんなお店に入り商品を見て回り楽しんだ。

一通り見て回った所でお昼ご飯を食べていなかった三人は、どのお店に入ろうか相談していると、峰岸君がスーツ姿の男性に声を掛けられた。

どうやら、峰岸家にゆかりのある方のようで、少し話してくると言って美桜達から少し離れて男性と話し出す。


その場に残された美桜と原さんがお昼の話の続きをしようとした時、原さんがお手洗いに行きたいと言い、美桜に一言残しその場を去って行った。


一人残された美桜はどうしたものかと周りを見渡すと、こじんまりとしたブースが目に入り、なぜだか自然とそちらに足が向かった。


美桜は携帯を使って峰岸君と原さんに一報連絡を入れ、その目に入ったブース、占いのブースに足を運んだ。


美桜は初めての占いのブースに緊張しながら入る。

中には椅子が二つ、テーブルが一つ置いてあり、そのうちの一つの椅子に女性の占い師さんが座っており、いらっしゃいませと空いてる席に案内してくれた。


「は、はじめまして…よろしくお願いします。」

美桜は緊張しながら椅子に腰かける。


「はじめまして。占いつきの館にようこそ。私はるなと言います。今日はどういった内容を占いますか?」


やわらいかい雰囲気をまとった占い師のるなさんに軽い自己紹介を求められ、緊張しながらも話す美桜。

自己紹介が終わったところで、こちらではタロットカードで占うという説明を受け、占ってもらう内容を美桜は考えた。

だが、何を占ってもらえばいいのか答えは出なかった。

美桜が今悩んでいるのはアザレアの事。

そのアザレアの事をどう伝えていいかわからず俯いたまま悩み、考えているとるなさんが声を掛けてきた。


「少し…カードで過去からの流れをみてみますね。」

そう言ったるなさんはタロットカードを手際よくきり、机の上に並べていった。


「んー…少し前…辛い環境に身を置いていたのかしら…。けど…何かそれを覆すくつがえような大きなきっかけがあったのね…。自信を取り戻すような…自分の求めていたものが手に入るような…自分自身が何か変わるきっかけになる事が…あったのね。」


るなさんの言葉に美桜は驚き聞き返す。

「……すごい…そんなにわかるんですか?」


「細かい所まではわからない事もあるわ。けど、カードの意味を読み解いて相談者さんに伝えているの。もう少しみてみますね。」

るなさんはまたカードをきり机に並べる。


「美桜さんは…何かやり残した事があって、それをずっと気にかけている。それは、特別な力が働くのね…。動こうにも簡単にできる事じゃないから悩んでいるのね…。あら…?このカード…ふふ、面白いわね…あなたと強く結ばれている魂があって、『ソウルメイト』…『運命の人』と言う意味で、お互いに共通点が多くそれが特別な力を働かせる原動力のようね…。けど…その力が消えかかってる…。あなたが初心に帰り、強く願う事でその方も同じ思いでもう一度…チャンスが来るわ。今言えるのはこんなところね…。さて、次は何をみてみますか?」


るなさんの占い結果を一通り聞いた美桜は、心のモヤが少し晴れ、占いとはこんな気持ちにさせてくれるのだなと感心し、一つの決心を固める。

「…気持ち…晴れました。もう一度チャンスが来る…それが知れただけでも私、大丈夫です!やり残した事、やり遂げます!占いってすごいですね!こんなに前向きにさせてくれるなんて。」


美桜は笑顔でるなさんにお礼を伝える。


「私の場合、当たるうんぬんより、導く事をモットーにしているの。そんな風にスッキリした顔されるとこちらもすごく嬉しいわ。あなたの未来に幸が訪れますように。料金は学生料金で半額頂戴します。」


美桜はお会計を済ませ、再度お礼を伝え、軽く頭を下げて占いのブースを出た。


先程、美桜達がいた場所にはすでに原さんや峰岸君が戻っており、どこに行っていたのか聞かれた。

その話をするために美桜は二人に提案を持ち掛ける。


「お二人に話したい事があります!今から私の家に来ませんか?私でよければ、お昼ご馳走します!」


美桜の提案に二人は顔を見合わせ、疑問に思いながらも提案を受け入れてくれた。

三人は一ノ瀬家に向かうべく歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る