第73話~オープニングセレモニー(後編)~
美桜と峰岸君が話している
その会話の中で鳴宮さんが突如驚きの声を出した。
鳴宮さんの驚いた声に会話に参加していなかった美桜や峰岸君、兄がどうしたのと会話に混ざる。
「美桜ちゃん!雅君!今回のデザイン、貴方達がアイディア出したって本当なの?!だとしたらすごい才能よ!デザインの考案について聞いたらいっちゃん達が言葉を
そういえば母がデザインが決まらないと言って提案をしたなと美桜は思い返していた。
峰岸君の両親の話からデザインの文字は峰岸君の考案だけでなく、執筆もしたと知った。
美桜はそのデザインを見てみたくなった。
だが、どういうわけか会場のステージに目を向けてもデザイン画が見当たらない。
美桜が不思議に思いながら会場内を見渡しデザイン画を探している間にもデザイン画の話は続いている。
「いっちゃんのアイディアで額縁にも見える囲いのデザインは、さっき聞いたから……。ね!美桜ちゃんのアイディアのアルストロメリアの花!そして雅君のあの文字!このアイディアを思いついた時の事を聞かせてくれないかしら!」
鳴宮さんはデザイン画がどのようにして出来上がったのか知りたいようで、目を輝かせながら美桜と峰岸君に詰め寄った。
「「な、鳴宮さん…近いです…。落ち着いてください…。」」
「あら、ごめんなさい、私ったら…。つい興奮して…それじゃ、美桜ちゃんから聞かせてちょうだい。」
鳴宮さんに詰め寄られた美桜と峰岸君は同時にたじろぎ、同じ言葉を発した。
二人の言葉に落ち着きを取り戻し、最初に美桜から話を聞こうと体を美桜に向ける鳴宮さん。
「えっと…お母さんが描いたデザインが夢で見たデザインに似ていて…。夢の中ではアルストロメリアの花がすごく大事に扱われていたので…それを参考にしたんです。」
美桜は入れ替わった事や異国の話は出来ないと判断し、夢で見たと伝えられる範囲で伝える。
美桜の説明に納得してくれた鳴宮さんは「大切な夢なのね」と優しく微笑み次に峰岸君から話を聞こうと彼に体を向けた。
「僕は…父さんがどんな印象で文字を書こうか悩んでいるのを見て、デザイン画を見せてもらって…。すごく綺麗なデザイン画で担当したのが一ノ瀬さんの…美桜さんのお母さんが描いたものとは知らなくて…。けど、なぜだか美桜さんのイメージが頭に浮かんだのであのような文字の形になりました。」
峰岸君の説明に美桜は頬を赤く染め、鳴宮さんや美桜と峰岸君の母は口元に手を当てて「まぁ…」と軽く驚き二人の関係を少なからず察した。
その様子に父二人は鈍い反応を示すが、兄はまた少し不服そうな表情が出て飲み物取って来ると言ってその場を去って行った。
その場に残った美桜達が話の続きをしていると、他の招待を受けた人達が声を掛けながら近づいてきた。
どうやら他のスポンサー企業の幹部やトップ、または会社経営をしている同業者の方達らしく、仕事の話など大人な話になり始めたので美桜と峰岸君はそれぞれの親に閉会式までには戻ると言ってその場から離れた。
美桜達が離れた後、飲み物を取りに行っていた兄が戻り、美桜達がいない事を母に聞く。母は「さぁ…どこかしら…」と二人の事を濁した。
その事に内心悔しがり、仕方ないと諦め大人達の会話に混ざる兄だった。
「一ノ瀬さん…閉会式まで時間はもう少しあるし、気分転換に外に出てみない?」
会場から一度出て会場の扉の前で気分転換の提案をする峰岸君に美桜は戸惑いながらも頷き「行こう」と手を差し伸べた峰岸君の手を取った。
峰岸君が先に歩き出し、美桜は峰岸君に付いて行く形で二人は外を目指して歩きはじめる。
二人がたどり着いたのはパーティー会場の10階上にある休憩場所として使われるテラスガーデンだ。
昼間は街の様子がよく見えるだけだが夜は夜景が綺麗な場所として一部では有名だ。
峰岸君がこの場所を知っていたのは会場の下調べの時に夜景が綺麗な所だとネットで知ったのだ。
「ここ…夜景が綺麗ってネットにあった場所なんだ。ここなら一部の人しか知らなくて静かだからゆっくり休めると思う。体調はどう?さっきは平気そうにしていたけど…隠してない?」
「大丈夫ですよ。少し座っていたのもありますし…。それに…雅君に会えましたから。疲れがなくなりました。」
峰岸君はテラスガーデンを見渡し人がいないのを確認し、美桜の体調を心配して美桜の顔を覗き込む。
美桜の大丈夫と言う言葉に安堵したのは束の間で、今度は美桜の不意打ちな言葉と笑顔に頬を赤くし覗き込んでいたのをやめ、慌てた様子で「夜景を見よう」とテラスガーデンの夜景が見えるとこまで移動し、美桜も峰岸君の後を付いて行った。
「わぁーー!すっごく綺麗です!雅君!ここに連れて来て頂きありがとうございます!」
「一ノ瀬さんが気に入ってくれたならよかった。」
夜景を見た美桜は歓喜の声を出し、峰岸君にお礼を伝える。峰岸君もそんな美桜の様子に「連れて来てよかった」と嬉しく思い優しく微笑んだ。
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