第60話~判決後の会議(後編)~
王は王妃の言葉に驚き、渋っているようだ。
「うーむ…領地や政策をフローライト家に…。」
だが、王妃はさらに後押しする発言をする。
「陛下、わたくしはフローライト家を大変信用しております。アザレアの件や今回の件の調査に証拠集め、それに事後処理に関する考え。
どれも素晴らしい功績だと思うのです。フローライト家の領地が増える事に渋っているようですが、功績を考えると領地が増えるくらいどうという事はないと思います。
これを機に爵位を上げるべきだとも思っています。いかがでしょうか。」
王妃の発言に他の貴族達は渋るような発言をささやいているが王妃は気にせず続ける。
「皆様、わたくしの提案に渋るようなお声があるようですが、カノン嬢のように政策に関するお考えをお持ちですか?
ご自分達の財を削ってまで政策を立て直そうという覚悟はおありですか。
カノン嬢はそういった今と今後の事を見越した上で政策に関する考えをまとめ、発言をしたと思うのです。王宮は王都しか持てない規則です。こればかりはどうにも曲げられません。ですから貴族の方々にお任せしたいのです。」
皆の渋っていたささやきが黙り込む。
「今一度、皆様に問います。今後は良しとして今現在、ご自分の身を削ってまで政策を立て直す覚悟はおありですか。」
王妃の問いに返答する者がいない中、カノンの父オリヴァーが手を挙げ立ち上がる。
「発言失礼します。私は娘の案に賛成しどこまでも協力すると決めております。
どんな現実も覚悟の上です。
王妃様からの称賛のお言葉、大変嬉しく思います。我々を信用して頂き大変感謝致します。」
オリヴァーが王妃の問いに真っ直ぐに答え、頭を下げて感謝を述べる。
「わたくしもよろしいですか。」
手を挙げ立ち上がったのはアイリスだ。
「わたくしの家、カーネリアン家もフローライト家と同じく侯爵家ですが、カノン嬢の意見はとてもすばらしいのでこのままお任せしようと思います。…ね?お父様?ね?」
アイリスの圧にたじろぐカーネリアン侯爵。アイリスの言葉に従わざるを得なかった。
一連の様子を見ていた王はしばらく考え、王妃の提案を受ける事にし、皆に異論はないか問う。
皆もしばらく考えたが、手に負えない問題があり過ぎて断念していく。
それなら考えがすでにまとまっているフローライト家に任せた方が賢明だと判断した。
皆の意見がまとまった所で王が会議の結論を述べる。
「リーデル家が治めていた南の街ペオニーとその他の領地をフローライト家が治める事とし、今後の政策に関する計画書の提示を求める。さらに先のアザレアの件や
こうして無事に会議は終了した。
会議の後、王と王妃、殿下のライラック三人がそろって別の扉から会議室を出たのを見たカノンは急ぎ足で追いかけ王妃を呼び止めた。
王妃が何故あそこまで後押ししてくれたのか疑問に思ったのだ。
「王妃様。呼び止めてしまい、申し訳ありません。発言をお許しください。」
「えぇ、構いませんよ。どうしたのですか?」
「お許し頂きありがとうございます。先ほどの会議…どうしてあのようにわたくしの提案に強く後押しをして頂いたのですか?」
「その事でしたか。わたくし…貴方の事、大変気に入っていますの。それに、会議では渋るそぶりを見せていたけど、本当は陛下も貴方の事気に入っていますのよ。アザレアの件やお菓子の件、女神祭の政策など面白い発想だわ。それに民たちの事を考える真っ直ぐな姿勢…。とても感心していますの。
それだけではなく判決の日、あの低俗にあのような拷問を与えた時はなんだかモヤが晴れた気分でしたわ。わたくしを見るあのおぞましい目や陛下や殿下を非難して、とても不快でしたの。罰を与えてくれた貴方には感謝しています。
感謝と言えば…以前、体を張って息子を助けてくれた事、大変感謝します。
お礼が遅くなってごめんなさい。」
「王妃様からそのような…。もったいない限りです。こちらこそ感謝申し上げます。それに謝罪など…わたくしはただ、殿下のお背中を守らねばと思っただけですわ。」
カノンの問いに快く答えてくれた王妃。
王妃はカノンの最後の言葉に頭ではわかっていても普通はそのような考えが当たり前には出ないものなのですよと苦笑いしながら答えた。
カノンの疑問も解決し、呼び止めた事を改めて謝罪しお辞儀をした。
三人はカノンのお辞儀のあと微笑みその場を後にした。
カノンも三人の背中を見送り父のオリヴァーのもとへ戻っていった。
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