第65話~カノンの積み重ねてきたもの~

原さんと屋上でバレンタインや恋の話、想いを語り合った日の放課後。


美桜は空手部のある武道館の入り口まで来ていた。

一つ深呼吸をしてドアノブを握り扉を開け中へ入る。


美桜は空手部の主将が誰か新入部員歓迎会の時に見ていたのでその記憶を頼りに緊張の顔立ちで中に入り主将の所に行く。

「あ、あの…主将さん。今までお休みしていてすみませんでした。それと、今日も…お休みを頂きたいと思い直接許可をもらいに来ました。」


「一ノ瀬さん!久しぶり!冬の大会以来だね。いやぁ~空手始めたばかりなのにベスト8はすごかったよ!あ~…それと…私はもう主将じゃないんだ。さっき交代したばかりなんだよ。冬の大会も終わったし、受験を控えてるから…。今日は引継ぎと部活を最後に見ていたいなと思って顔出したんだ。」

元主将は美桜の声掛けに答え、少し寂しそうに話す。

現在の主将は美桜の隣のクラスの子に変わったらしく、美桜は元主将に挨拶をして現主将に声を掛け訳を話す。

今日は致し方なく、明日からまた部活参加という話でまとまった。

ちなみに空手教室の方も家に帰ってから休んでた分の謝罪と明日からまた通うと連絡を入れた。



――翌日

今日の美桜は部活に出るために道着を準備し、髪をポニーテールにまとめ上げる等気合十分だ。

前日家に帰った際、さっそく空手に関して調べたり試合動画を観たり実際に空手の技を練習した。

カノンがしていた朝のランニングは美桜も体力作りに必要だと思ったのでやり始めた。

準備が整った美桜は姿鏡で最終確認をして勢いよく家を出て学校へ向かった。


学校へ着き、原さんや峰岸君に容姿を指摘され、部活復帰の説明をした美桜は二人から激励をもらい一層気合いが入る。

気合いが入ったまま授業を一日受けてたのでクラスメイト達から何の気合だと疑問に思われていた。



――放課後

武道館に着き更衣室で道着に着替え、準備を進めていく美桜。

「よし!準備整いました。昨日できる事もしました。あとは実践あるのみです。」


準備が整った美桜は練習場に向かう。

部員が皆集まり、各々部活開始の準備をしていた。

新主将が部活開始の目安時間を伝え、皆がその時間に間に合うように準備を早めたり準備運動を始める。


時間が来たので皆が間隔を空け並ぶ。まずは皆で型の確認を一つずつしていく。

一通りの方の確認が終わったので実践に入って行く。

美桜は3試合目で相手は一つ下の後輩だ。

前の2試合を観てイメージトレーニングをしていた。


美桜の試合の番になり美桜と後輩の子二人がそれぞれ位置に着く。

「(カノンさんが頑張って身に着けた空手の技術…。中身が私だからと言って諦めたりしません。)」

美桜は開始の合図とともに相手に技を繰り出したり勝負を仕掛ける。

相手も負けじと技を繰り出し、その攻撃が美桜に当たった。

「(やはり個人練習やイメージトレーニングだけでは動きが鈍いです。もっと動けるようにしなくては…。それに…わかってはいましたが、攻撃が当たると痛いです。攻撃が当たらないように間を取ったり、避けたりしなくては…。あの世界のダンスの応用でステップを活かして避けれないでしょうか…。)」


美桜はどうやっても運動ができないでいたが、体を動かすコツをカノンと入れ替わった際にカノンが身に着けていたダンスで学んでいた為それを空手に応用出来ないかと実践してみるが、動きが異なるため上手くはいかない。

だが、ダンスで相手の動きに合わせてステップを踏むのでその要領で相手の攻撃に合わせて避けてみる。

これは上手くいったので避け方はこの方法を実践していく事にした。


不慣れな空手に苦戦し、結果は敗北に終わった。皆からは調子が悪かっただけと励ましをもらったが、美桜は納得しておらずさらに決意を固める。

「(カノンさんが努力を積み重ねてきた空手…。私も…やると決めたからには途中でやめたくないです。カノンさんが私の体で一生懸命に練習をしていた事もあり動きはなんとかなっていましたが…まだ足りません。インターハイまで残り数か月…。それまでに動けるようにしなくては。)」


それからインターハイまでカノン同様に部活と教室、自主練に励んでいく美桜だった。

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