~おまじないの本の秘密 美桜編~
第63話~美桜が調べた本の秘密~
現代日本。年明けの朝。
クリスマス以降、美桜と家族がちょっとずつ距離を縮め、カノンと入れ替わった時同様に食卓を囲み会話が増える。
その何気ない変化が美桜には新鮮でちょっとずつだけど前の仲が良かった時のように『家族』という関係に安心を覚え始めていた。
元旦である今日も家族で初詣に来ている。
家の近くの小さな神社だが元旦の朝という事もあり人がいっぱいだ。
「美桜、寒くない?足元気をつけてね。」
「大丈夫だよ、お母さん。ありがとう。お参りの後おみくじ引いてもいい?」
「いいわよ。今年のおみくじは何が出るかしらね。」
美桜は母と会話をしながら、兄は父と後ろで会話をしながら参拝の順番待ちをしていた。
美桜達の順番が回ってきてお賽銭を入れ二拝二拍手をして目を閉じて心の内で祈る。
「(家族と友達ともっと縁が結べますように。それと、今年も皆にとって良い年になりますように。)」
美桜はカノンを含む自分と関わりを持った人達の事を思い浮かべ願った。
最後に一礼してお参りを終える。
美桜達の参拝が終わりおみくじを引きに行った。
この神社のおみくじは百円を別箱に入れて、大量のおみくじの中から自分の手でつかみ取るおみくじだ。
美桜がお金を入れ、大量のおみくじの中から一つだけつかみ取り、中を開いて見ると「大吉」だった。
内容は学問、恋愛、商業上手くいくと書かれていた。
おみくじの内容に美桜は嬉しくなり、自分のお財布にしまった。
皆で家に帰り、ここ何年かは一人で過ごしていた新年も、今年は違う。
家族そろってうどんやおせち料理を食べまったり過ごす新年になった。
幸先良いなと美桜は笑みがこぼれる。
――お正月が過ぎ、冬休みも残りわずか。
美桜はカノンと入れ替わっていた間の学校の勉強を復習していた。
もともと予習もしていたのでどうにか新学期には勉強が追いつきそうだ。
冬休みの宿題も出たようだが、カノンが終わらせてくれていた。
キリの良いところで勉強を止めて、おまじないの本について調べようと机の上の小さい本棚にしまってあったおまじないの本を手に取り中を開く。
「英語……なのはわかっているけど…。ここまで崩れた字だと全部解読するのは難しい……。」
英語で書かれているのはわかっていたが、改めて文字を見ると字が崩れていて読めるものもあれば読めないものもある。
美桜はどうしたものかと考えながら何か飲み物を取りに行こうと部屋を出てキッチンに向かう。
美桜がキッチンに着き、考え事をしながら冷蔵庫の中を見つめているとリビングでテレビを見ていた兄に声を掛けられた。
「……冷蔵庫の中を見つめてどうした?飲むもんねぇの?」
「そういうわけじゃ…ないけど…。」
「……なんか悩みがあるなら…聞いてやらんでもねぇ…けど…。」
美桜の
その兄の言葉に一瞬目を丸くするが、少し考え相談するだけしてみようと思い悩みを打ち明けた。
ただ、おまじないの本という非現実的な本の事なので兄にどんな反応されるか不安になりうつむきながら伝える。
「ふーん…。大事な本なのか。」
「うん、すごく。私に変わるきっかけをくれた大事な本。」
「そうか…。その本持ってそこに座って待ってろ。」
兄は美桜の不安とは反対に悩みを受け入れ、見ていたテレビの電源を消してダイニングテーブルで座って待つように美桜に伝え、自分の部屋に戻っていった。
美桜は兄の言う通りに自分の部屋からおまじないの本を持ってきて、ダイニングテーブルを前に座って待っていた。
しばらくして兄が自分の部屋から戻ってきた。
その手には分厚い辞書と紙やペンを持っていた。
兄は美桜と向かい合うようにして腰かける。
「例の本…見せてくれないか…。」
兄の行動に驚きつつも本を渡す美桜。
「(お兄ちゃんがこんなにも協力してくれるなんて…。)」
そんな事を思っていたら、兄が辞書を開きながら紙にペンを走らせ始めた。
「えっ…ちょ…お兄ちゃん…その本の文字…わかるの?すごく字が崩れているのに…」
「んー…頭文字とか間の文字とか…読める文字を推測してそれっぽい単語を辞書から引っ張ってきているだけだ…。パズルみたいで面白いぞ。」
兄は平然として言うが、文字の推測をするにしても何通り以上もある。
それを目の前でやってのけるのだ。兄の才能は伊達ではないと改めて実感する。
兄の様子を見ていたが、自分も手伝うと兄に伝え美桜も辞書を引いたり、推測したり二人で作業をしていく。
最後のページまで差し掛かり、ペンを走らせていた兄の手が止まった。
「一応…終わった…のか?所々文字が消えて読めないのもあるし、最後の方なんか英語とは思えない文字なんだが…。」
兄と二人で解いた単語を並べてみるといかにも本の内容という文が出来上がった。
あとは文章としてまとめるだけだ。
美桜は兄の協力に嬉しく思い、本の秘密を分かる事も出来て感情が高ぶり満面の笑みでお礼を伝える。
「ありがとう、お兄ちゃん!あとは自分で頑張る!」
「…おぅ。」
美桜の笑顔と言葉に兄は照れてそっぽを向きながら返事をする。
兄の返事を聞いた美桜は軽快な足取りで部屋に向かい兄が解いてくれた文字をまとめ文章にしていく。
『我、まじないを作りし者。我が作りしまじないをここに記す。―――。』
その文言から本の内容は始まった。―――。
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