第二章~元に戻った二人の生活~
~美桜の生活編~
第42話~美桜と峰岸君とクリスマス~
美桜が夢から覚め迎えたクリスマス当日。
起き上がり辺りを見渡す。見慣れた部屋の中だ。ベッドから出て姿鏡で自分の姿を見る。そこには現代の美桜の姿が映っている。
「元に戻っている…のですか?今までのは夢だったのでしょうか…。日付とかは…。」
美桜がスマホやカレンダーを確認すると美桜の現代での最後の記憶からだいぶ進んでいる。
机の上には日記があり中を読んでみると美桜の筆跡ではない文字がびっしりと書いてあり夢の中でカノンが言っていた出来事と一致している。
「あちらの世界の事…夢ではなかったのですね…。そして夢の中でカノンさんが言ってたことも…。そういえば、カノンさん、今日の出来事もカレンダーに書いてるとお話の中で言ってました。確認しなくては。」
美桜はカレンダーに近づき予定を確認すると美桜の顔がみるみる真っ赤になる。
「み、峰岸君と、お、お茶会!?カノンさん!全然そんなこと言ってませんでした!あ!でも詳しくは日記に書いてあると言ってました!ど、どうしましょう?!約束したのはカノンさんですが、姿形は私なので私が約束した事になるんですよね?!あの峰岸君と…。恥ずかし過ぎます…。ですが…。約束を破るのは失礼にあたります…。ここは、意を決して。時間は14時ですね。それまでに日記を確認して着ていくお洋服の準備など済ませなくては。」
心を固めた美桜は準備に取り掛かる。
眼鏡は外し髪はポニーテール、淡いピンクのマフラー、白いニットワンピースにブラウンのコート、ムートンブーツを履くというコーデを考え準備をしていく。刻々と時間が経ち、美桜は少し早めに待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所に着き早く着きすぎたかなと時間を確認すると時間まで30分ほどある。
クリスマス当日で飾りつけが華やかな街の中を散歩するのも悪くないかなと考えたが、人が多い中を歩き待ち合わせ場所に間に合わなかった事を考えるとこのまま待つことにした。
すると美桜が到着して10分も経たないうちに峰岸君が来た。
「一ノ瀬さん!ごめんね、お待たせ!もしかしてだいぶ待たせてしまったかな?」
峰岸君が心配そうに美桜を見るが美桜は直視できずに顔をそらしながら答える。
「い、いいえ!つい先ほど着いたばかりです!人が多いので遅れたらと心配になって早めに来てしまいました。」美桜は緊張しながら話す。
「そっか。よかったぁ。僕たち考えていること同じだね。僕も遅れたら申し訳ないと思って早めに家を出たんだ。時間は少し早いけど風邪ひかないうちにさっそく移動しよう。(今日の一ノ瀬さんの恰好可愛いなぁ…って何を考えているんだ僕!しっかりしろ!全力で一ノ瀬さんをサポートするんだ!)」
そう言って歩き出す二人。美桜は峰岸君に着いて行く形で一歩後ろから歩くが峰岸君が美桜の歩幅に合わせ美桜が人にぶつからないように肩を寄せたりする。
その様子に美桜は終始ドキドキしっぱなしだ。もちろん峰岸君も同じ様にドキドキしている。
「(そういえば、今から向かうのは…。日記の通りだと…。本人に聞くのもなんだか変ですが…ここはやはり思い切って…)あ、あの、峰岸君…私たちが今向かっているのは…」美桜は恐る恐る聞いてみる。
「僕の家だよ。…って、あれ、一ノ瀬さん口調戻ってる。それに名前も苗字呼び…。」美桜の問いに答える峰岸君だが、中身がカノンじゃないため当然ながら以前の美桜の口調に戻っていることに峰岸君の表情が曇った。
「あ、ご、ごめんなさい。約束していたのに行き先を聞くなんて…。口調は…その…戻しました…。名前は……み、雅…君…。」
峰岸君の表情が曇ったのを見た美桜は謝罪に加え言葉を濁したり名前呼びを訂正するが、呼びなれないため恥ずかしさで顔を真っ赤にしてうつむき加減に言う。
その姿に峰岸君もつられて顔を真っ赤にする。
「(一ノ瀬さん可愛い過ぎる!落ち着け!とまれ!僕の鼓動!いや!ドキドキ!鼓動が止まるのは違うだろ!)」峰岸君の内心はパニック状態だ。
二人は顔を真っ赤にしながら峰岸君の家にたどり着きお茶会の準備に入る。
美桜は峰岸君の家のお手伝いさんに来客用の茶室に通され待つように案内された。
峰岸君は別室で準備を済ませて和装で茶室に入ってきた。
今回のお茶会はカノンが和菓子を好きになり和菓子は茶道でも出されるお菓子という事を知り峰岸君に茶道の事を聞いたところ、『ならば』という事で峰岸君がもてなす事になったのだ。
「一ノ瀬さん、おまたせ。それじゃ、さっそくお茶を点てるね。あ、コート預かるよ。今は正座して座ってくれているけど足がきつくなったら楽な体制になっていいからね。」
峰岸君は笑顔で美桜を気遣い、お茶点てに入る。その姿に美桜は見惚れていた。
「(わぁ。峰岸君慣れた手つきで流石です。とても上品でかっこいいです…。)」
実は美桜は峰岸君が旧家の出身なのを以前から知っていた。ネットで茶道を調べているときに峰岸家がコラボしている企業の記事を見つけたのだ。美桜もカノン同様和菓子が大好きで茶道に興味があった。なので今回のお茶会は本当に驚きと嬉しさでいっぱいだ。
「こちらをどうぞ。ぜひお菓子もお召し上がりください。」お茶を点て終わった峰岸君がお茶と和菓子を美桜の前に出す。
「お点前頂戴いたします。」美桜は作法を一通り独学だが学んだので実践する。先に出された和菓子から一口切り分け口に運ぶ。
次にお茶の入った器を2回回し一口飲む。一口飲んだら器を一度胸元まで持ってくる。
「お加減いかがですか。」峰岸君が美桜に尋ねる。
「大変おいしゅうございます。」美桜はお茶やお菓子を堪能し、器を畳にそっと置き。
「ありがとうございました。」と美桜は最後に手を畳に付け頭を畳に近づけお辞儀して感謝を伝え、最後まで作法にのっとった動作をする。
「ありがとうございました。」峰岸君もお辞儀を返す。
「一ノ瀬さん、自然と作法が出来てるから僕まで作法が出てしまったよ。気軽にと思ってたのに。どこか教室でも通ってたの?」
峰岸君は美桜の作法に嬉しさで笑顔になり質問してみる。美桜は独学だという事を伝えたらすごく驚かれたが褒められて美桜も笑顔になる。今度詳しく習いたいと美桜は峰岸君に伝えると峰岸君は照れながらも快く引き受けてくれた。
「(初めての茶道ですが独学でも勉強していてよかったです。お茶会のきっかけを作ってくれたカノンさんに感謝ですね。峰岸君のおかげもあってすごく楽しいお時間でした。もっと一緒にいられたらいいですのに…。)」
お茶会は終わったが、もう少し一緒にいたいという気持ちがあった美桜。峰岸君も同じだったようでクリスマスの街を見て回ることを峰岸君が提案したら美桜は顔を赤らめながらも二つ返事をし再び街に出る。この日ちょっとだけ距離が縮んだ二人だったが、峰岸君はまだ自分の気持ちに自覚がないようだ。
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