第36話~飾りのひらめきと砂糖の相談~
美桜がオリヴァーに祭りの飾りつけの相談をした翌日。
さっそくオリヴァーはウッドを屋敷に招き談話室で美桜含め三人で女神祭に関する美桜の提案を話し始める。
「カノン様の発案はすごくいいものだが……。短期間でそんな準備ができるかどうか……。電球の数も足りないし、電球を木にくくり付けるとなると電球の熱さで火事にもなりかねないんです。ましてや色とりどりの電球があるなど聞いた事ありません。木箱や樽ならいっぱいあるんだがなぁ…。カノン様の思う高さには到底届いていないですし…。」
この世界は昔のノーマン国王の物作りによって技術はそこそこ発展しているが、現代のような科学や技術はまだまだ発展はしていない。そんな中でできる事はないかとウッドやオリヴァーは考えるがなかなか思い浮かばない。
二人が腕を組みながら考え込んでいると、美桜が以前読んだ簡易的に書いてあるこの国の歴史書を思い出し飾りつけの方法を思いつき、いまだ考え込む二人に話を持ち出してみる。
「こういうのはどうでしょうか。―――。」と美桜は二人に説明する。
それを聞いた二人はそれは面白い!そんな方法があったなんて…と驚きつつも提案を受け入れてくれた。飾り付ける街の範囲なども決め話がまとまり早速始めようと動いてくれた。
ウッドは各職人にかけ合い協力を求め、オリヴァーは女神祭の事を街に号外を出すためにそれぞれが動く。
美桜はというと屋敷の人達に声を掛け、夜会のお菓子の事を厨房に相談したりアザレアの加工場に行ったりとせわしく動く。
美桜が夜会のお菓子の相談をしようと厨房に行った際に料理長から試作品だという焼き菓子を美桜一人ではとうてい食べきれない量をもらった。全然試作品には見えない焼き菓子を量も多い為アザレアの人達に差し入れようといつもの軽装な服に着替えアザレアに向かう。
アザレアに着き北側の農園と加工場に向かう美桜。
向かう途中、すれ違う人々に頭を下げられたり握手を求められたり手を振って声を掛けられたりしたので美桜もそんな街の人達の行動に答える。
その様子を影ながら見つめる者がいた。
美桜が農園と加工場に着くと作業が順調に行われている様子が目に入る。この間よりも配置されている木の本数があきらか増えており、実を収穫している者もいれば木を植え替えている者もいる。
加工場にいたっても面積が大きい建物を作っているはずなのに3分の1くらい出来上がっている。作業員が美桜の姿に気が付くと街の人達同様に頭を下げたり手を振ったりしている。その行動に美桜もまた応える。
砂糖の実の加工場に着き中に入ると数十人はいるだろう女性たちが年齢問わずに働いている。ハサミも順調に納品されているようで二人一組で殻割作業と殻と中身の仕分け作業、袋詰め作業に分担して行っているようだ。
作業している皆は集中して美桜の姿にも気づかないので端のほうでテーブルに向かい紙にペンを走らせている加工場の人事など全体を任せている責任者に声を掛ける。
「お疲れ様です。作業、順調そうでよかったです。困った事などは起きてませんか?」
「カノン様!!お姿に気づかず申し訳ありません!カノン様やオリヴァー様達侯爵家の方々のおかげで今のところ困ったことは起きておりません。ご心配、痛み入ります。カノン様は本日もご視察ですか?」
「何事もなくてよかったです。何かありましたら遠慮なく仰ってくださいね。今日は視察というよりも少し相談があってきました。」
美桜が夜会でお菓子の披露がある事やそのために砂糖が必要なことを説明し砂糖の生産が追いつくか相談した。
その相談に責任者は今の作業速度なら問題ないとの事で、余裕をもって夜会の二日前までには侯爵家に納品できるように手配すると言ってくれた。
それを聞いた美桜は安堵し持ってきていた試作品のお菓子を差し入れで渡して侯爵家へ戻るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます