第25話~アルストロメリア王国の歴史~

美桜が鍛冶職人や仕立て屋に特注品を頼んでから2日が経つ。


どちらもいまだに仕上がらず美桜は講義で受けた内容の復習を書庫でしていた。

本がいっぱいあるという理由もあり書庫を選んだ。

ある程度復習が終わり何か本を読もうとした時この国の歴史本が目に入る。

簡易的でとても分かりやすい内容で書かれている。


――。

むかしむかし、ノーマン・レイン・アルストロメリアという物作りが大好きな国王様がいました。

この国は鉱物が豊富に取れるため炭鉱業や加工業があります。鉱物の中でも銅が多く取れる時期がありました。国王様はこの鉱物で何かできないかと考え込み部屋に引きこもりました。皆は「国王が部屋に引きこもり物作りなど…」と言っていましたが、この物作りが後に国が発展することにつながるのです。


部屋にこもり数週間、いろいろ考えたり作ったりしていると国王様は一つ大きな事業を起こそうとひらめくのでした。国王様は腕の立つ鍛冶職人を数人集め、この銅で細長い線に加工してほしいと頼みます。鍛冶職人は国王様の言葉に疑問を思いつつも仕事に取り掛かります。国王様の言う通りに作業して出来上がったものは銅線です。


それから国王様は服の仕立て屋にゴムの木で銅線を包めるような繊維の塊を作ってほしいと依頼します。そうして出来上がったものは細長い筒状のゴムです。

もう一つ、発光部分を覆う球体を作ってもらうようにガラス職人に依頼をしました。これらを組み合わせて出来たのが今の生活では当たり前になっているこの国の電球というわけです。


その電球と電線をいくつも作りつなげ建築家の指導のもと十何年と時間はかかりましたが、お城を含め各家庭へ電気を通しました。

電動力は人が朝から晩まで交代制でいくつもの大きな歯車を数十人で手押しで回しています。これに手回し発電と名付けました。

これは国民の仕事の一つとなりました。


スラム街出身の人や他の街の人達が行っています。

スラム街がある理由もそれなりにあります。

天災や大飢饉、これらによって家や職を失い国が総出で復興に精を尽くしても現状は変わりませんでした。


スラム街の人達は簡易的な家を建て生きていくためには職に就かなければいけないのですが、必死に職を探しても職の数が圧倒的に足りません。

人はあふれているが職になかなか就けずにいる。よってまだまだ貧しい人が多いというのがこの国の現状です。


この現状をどうにかしようと考える者はいて生活が豊かになるよう、職が生まれるよう日々研究している者もいます。これがアルストロメリア王国という国の歴史の一つです。――――。


簡易的な歴史本を読み終わった美桜は職があれば解決の道は開けるのだろうかと考える。

「職がなく生きていくのも大変というのは放っておけないです。リリーさんや他の方に話を聞いて詳しく調べて侯爵家として何かできないか考えてみましょう。一度スラム街の現状も見てみたいですし。この歴史本の現状がどれだけ進んでいるかも知らなければ」

そうして美桜は自分にできることを探すため書庫を後にし皆に聞きまわる。


「リリーさんや庭師さん、料理人さん達に聞いてみましたが…やはり…。あの簡易的な歴史の本のような現状が今も続いているのですね……。

……そうだ!この国はまだお砂糖が普及していないのですよね。でしたらお砂糖の栽培・収穫・殻割…一連の作業をお仕事としてスラム街の方々に提案するのはどうでしょうか。その前にお砂糖がどれだけ重要か知ってもらわなければなりません。また忙しくなりますね!!」


歴史本といまだ相違がない現状を知った美桜は現状打破のために準備に取り掛かるのだった。

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