Sid.32 新居に家具家電も用意

 瑞樹の友人たちには、新居の傍にあるカフェで待機してもらう。うちよりお洒落なカフェだ。うちと同じく自家焙煎が売りのようだし。これじゃあこっちに客は来ないな。

 一旦別れてトラックに乗り込み、リサイクルショップへ向かう。瑞樹も同乗してるわけで。


「三年使ってますけど」

「五年以内なら買い取り可能だそうだ」


 ただし壊れていたり、傷だらけ、なんてのは買い取り不可能だけどな。綺麗に使われていたなら、千円二千円で買い取るだろう。それを売る時は八千円とか一万で売るわけだ。

 洗濯機二台、冷蔵庫二台。電子レンジ一台、三合炊き炊飯器一台。

 よくよく考えたらベッドも、使用年数が少ないから売れたかも。捨てちゃったよ。無駄なことをしたなあ。

 旧東海道を進み東海道目指し進み、藤沢バイパスで一号線に合流。少し進むと左手にリサイクルショップがある。駐車場にトラックを入れるが、入って左側の駐車スペースは、トラックの荷台に合わせた高さの足場がある。そこに押し込み下車して店内へ。


 店員に声を掛け買い取り希望と伝えると、トラックの荷台に乗り込み、それぞれ査定をし始め電卓を弾き「全部で五千五百円です」と。炊飯器はタダ同然。洗濯機は使用感あり。冷蔵庫は綺麗な方だが、小型で少々年式が古い。レンジも綺麗だが使い込まれてる。


「安いけど、まあ仕方ないか」

「捨てるよりましです」


 まあ、冷蔵庫や洗濯機はなあ。捨てるにも金が掛かるし。わずかでも金になるなら良しとするしかない。

 だが。


「大型の冷蔵庫と洗濯機買う予定だけど」


 そう言うと少しだけ上乗せするようだ。


「では、六千五百円で」


 千円上がったから良しとして、すべて荷台から降ろし引き取ってもらう。

 空になったトラックをあとにして、再び店内に入り金銭を受け取り、買う予定の家電を物色することに。


「今日中に買わないと、冷蔵庫も洗濯機も無い状態になるからね」

「あの。リビングとダイニングに置く家具ですけど」

「ソファとかテーブル?」

「何も無いですよね。中古でも買っておいた方が」


 だよなあ。現状、小さなリビングテーブルひとつ。瑞樹の机はあるけど、あれは勉強用だ。ソファだのダイニングテーブルや椅子は必要だな。

 今までとは違うんだし。金。幾らあっても足りないなあ。

 それでも瑞樹との生活のためだ。ここは少し奮発するか。なんて言っても中古じゃ格好付かないけど。

 新品は結婚する時でいい。


「隆之さん。冷蔵庫ですけど、これは?」


 瑞樹が指し示すのは五ドアで、容量四百六十リットル冷蔵庫だ。値段を見て項垂れそうになるが、このサイズだと、どうしても高くなるのは已む無し。

 それにしても容赦無いな、瑞樹。だが、冷蔵庫は高額なもので大型の方が、結果省エネタイプなのも事実。中小型冷蔵庫の方が無駄が多い。


「じゃあ、それで考えておこう」


 嬉しそうに洗濯機を見に行く瑞樹が居る。その後ろを着いて行くしかない俺。

 洗濯機は縦型かドラム洗にするかで迷う。


「乾燥まで考えるとドラム洗」

「乾燥機能なんて要らないですよ」

「楽だけどなあ」

「電気代高くなりますよ」


 自分が洗濯するから縦型でいいとか言ってる。干して畳むまで全部やるから、縦型で節約しましょうだって。冷蔵庫は妥協しなかったが、洗濯は自分次第の部分もあるのか。ここは節約ってことで八キロの全自洗に。

 家具を見るのだが、ソファだのテーブルだの、品揃えは悪くない。


「座面がへたってない奴がいい」

「そうですね。座って沈んでしまうと」


 座面を手で押して確認しながら、デザインとサイズを見て、ついでに価格も見ながら選ぶことに。


「寛げるのはハイバックだな」

「ふたり掛けがいいですか? それとも三人掛け」

「どっちでも」

「リクライニングするソファがありますよ」


 それがいい。楽でしょ。

 と言うことで、リクライニングソファに。ただ値段は八万。もう少し出せば新品買えそうな気もしないでもない。お値段以上が売りの会社の奴なら。

 一応本革と書いてある。それと状態がいいから、これも押さえておく。

 リビングテーブルとダイニングセットも。


「角が丸いこれはどうですか?」


 瑞樹が指さすのはコーナーが丸いリビングテーブル。まあいいと思う。


「じゃあそれで」


 ダイニングセットは四人掛けが多いな。必要無い気もするが、価格は二万円代からあるし、デザインが気に入ればいいか。

 適当に見てると瑞樹が「これがいいです」と言ってる。見るとシックなデザインで悪くは無いか。ダークブラウンのソファと同じ場所に置くには丁度いい。焦げ茶のテーブルに座面と背もたれが白で、フレームが焦げ茶のチェアのセットだ。


「じゃあ、それにしよう」


 ほぼ瑞樹のセンスで選ばれる家具だが、俺に拘りは無いからなあ。瑞樹が気に入るもので揃えても問題ない。


「ベッドもあるんですね」

「そうみたいだな」

「でも、他人が使ったものだと思うと」

「やっぱ気になるよなあ」


 とりあえず最低限必要なものは揃ったってことで、店員を呼び全部持ち帰るから、用意して欲しいと告げ会計を済ませる。


「設置は大丈夫ですか?」

「手伝う人が居るから大丈夫です」


 数人の店員が家具や家電を運び出し、トラックに積み込み終えると新居へ帰る。

 新居のマンション駐車場前に停車。瑞樹には友人を呼びに行ってもらう。荷台のドアを開け降ろせるものだけ先に降ろし、友人たちが来ると荷物を運びこんでもらう。

 瑞樹には置き場の指示をするために、一緒に部屋に行ってもらう。


 無事にすべての作業が終了し、友人たちを部屋に招き、暫し休憩してもらうことに。


「じゃあ、俺はトラックを返してくるから」

「あたしも」

「友達の相手」


 友人たちから「瑞樹、どこまでも付いて行きたがり過ぎ」とか言われてるよ。少しはこっちの相手もしてくれ、ってことで俺だけで返却しに行く。

 帰りは自分の車で帰る。


 車の中で思うこと。

 凄い金を使ったなと。貯金の大半を掃き出して。

 店の改装費用なんて、もはや出しようが無いぞ。ここは信金で借金するしか無いか。

 なんて考えながら新居へ戻ると、瑞樹の友人たちは帰るようだ。


「じゃあマスター、瑞樹と楽しんでくださいね」

「いいなあ、百瀬と楽しい新婚生活かあ」

「マスター、瑞樹はいい子なので、大切にしてくださいね」

「結婚式は呼んでくださいよ」


 まあいろいろ言われるが、おっさんに惚れてくれた貴重な存在だ。一生大切にするさ。

 一階のエントランスまで瑞樹と一緒に見送りをして、全員に「お疲れ様」と言っておいた。

 人件費だけで五万円。業者を使っても似たようなものだが、大きく違うのは融通の利き方だよな。二か所の引っ越し作業に、買ったものの搬入までなんて、業者じゃやらないし。


 部屋に戻ると、さすがに疲れたのか、ソファに腰を下ろす瑞樹は、ぐったりした感じだ。


「疲れただろ」

「あ、はい。そうですね」

「晩飯は用意するから休んでていいよ」

「少し休めば」


 無理しないで休めと言っておいた。おっさんとは言え体力に自信はある。ひとりで店を切り盛りしてきたのもあるし、若い頃に鍛えていたこともあるからな。

 瑞樹は細身だし、体力はそこまで無いだろう。

 冷蔵庫はまだ庫内が冷え切らないから、食材は明日以降入れるとして。


「買い物してくる」

「あ、あたしも行きます」

「休んだ方がいいよ」

「大丈夫です」


 どうしても一緒がいいらしい。


「隆之さんと一緒に居ると元気出るんですよ」


 そうか。嬉しいと思う反面、無理はして欲しくないな。

 車で近隣のショッピングモールへ行き、二人で仲良く晩飯の食材を買う。


「俺が作るよ」

「でも」

「いいから」


 食後ゆっくりしたら、風呂に入ってしっかり休むといい、と言っておいたが。

 食事が済んでソファでゆったり。

 その後、風呂に入るのだが、広くなった風呂にふたりで入って、当然だがしっかりお楽しみとなったわけで。

 そこだけは元気が出るようだ。凄かったぞ。


 ただ、風呂上がりに力尽きたようだ。


「ゆっくりお休み」


 笑顔のまま寝入った。

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