第3章 帝国の崩壊と空から来る災害

3-1

『王よ、アインゼ全域の掌握完了しました』

「ミネルスお疲れさま。それじゃあ、工兵蟻エンジニアアントは樹海の巣から今私たちがいる領主の邸宅跡の地下室まで巣をつなげる作業を開始!調理士蟻コックアントは集めた家畜の死体と食料品の保存するための加工を、畜産家蟻リバストックアントは捕獲した牛、豚、鶏、馬の飼育繁殖を、大工蟻カーペンターアントは破損した家屋の解体と城壁の補修と強化を開始!その他の蟻は兵士や来訪者の死体から装備や装飾品を剥ぎ取って素材ごとに纏めておいて」

“““バッ”””


 私が命令すると各蟻たちのリーダーが勢いよく右前足を挙げ敬礼し去っていった


「ねえミールいつの間に蟻たちに敬礼なんて仕込んだの?」

『私も教えた記憶がないのですが、アンバーさんやミネルスさんたちアンデットの方々がやっていたのを見て覚えたのだと思います』

「ふーん」


 魔力感知と気配察知を使い私たち以外の生物がいない、つまり全ての敵を倒したことを確認できたためミールに生産系統の蟻と一緒に来てもらっていた


「よし、みんなで戦利品の確認をしようか」


 目の前にあるいくつかの品を見つめながら呟いた


『それでは説明させていただきますね。まず神秘遺物アーティファクトですがメルト様を殺した英雄爵が履いていたであろう残影ざんえい深靴ブーツとメルト様の領域を押し返していたと思われる王冠型の神秘遺物アーティファクト、推定聖王の宝冠クラウンはおそらく英雄爵を助けた者が回収したのでしょう、発見できませんでした。そして、来訪者シンセンが持っていた幻城の長盾タワーシールドはシンセンが死に戻りをした際に一緒に転移したのを確認しました。また、精霊の霊刻スティグマは先の侵攻時に存在を確認できなかったためまだアインゼへ持ち込まれていなかったと推測します』


 そこまで説明したフォスが目の前の品の中から一際大きなものを念力で持ち上げた


『そんな中でもこれは回収できました。ご覧の通り晶結の乙女プリズムメイデンと呼ばれていた神秘遺物アーティファクトです』


 その巨大な結晶はとても美しかった結晶の中で光が反射し透明な結晶から虹色の光が漏れ出している、そして何より目が吸い込まれるのはその結晶の中に囚われた1人の少女だろう

 その少女はまるで気持ちよく水面を漂っているような穏やかな表情で白銀の長髪を結晶の中に広げていた。また、その裸体は今まで見たこともないようなほどの透明感のある肌で大事なところは結晶の中で反射した虹色の光が隠している

 流石に全年齢対象のゲームだ謎の光が邪魔して360度どこから見ても隠してくる


 さて、鑑定してみますか。“鑑定”


 境界竜の魂結晶ソウルプリズム

 死に頻した境界竜が死に際に見い出した生と死の境界を用いて肉体をすて魂となったもの

 竜の有り余る魔力が魂を起点に結晶化している

 この周囲だと生と死の境界があやふやになる


 ………これが神秘遺物アーティファクト神秘遺物アーティファクトって物品であって生物ではないんじゃないの?


「これ“境界竜の魂結晶ソウルプリズム”って名前で真ん中の女の子が魂でその周りを結晶化した魔力が守っているだけだから一応生き物っぽいんだけど生き物でも神秘遺物アーティファクトに含まれるの?」


 ほらやっぱりこれ神秘遺物アーティファクトじゃないんじゃないなかな?フォスもアンバーもミネルスも驚いて固まっちゃってるし

 あれ?なんか驚いたは驚いたでも驚愕というよりもう会えないと思っていた人と会えたみたいな驚きの仕方してるように見えるんだけど、え?この女の子?竜?ってフォスたちの知り合いなの?


「この知り合いなの?」

『はい、少し前にドラゴノイドについて説明した時に言った知り合いの竜とは彼女のことです』


 あ〜、スパロちゃんと会った時にそんなこと言ってたような


「うん⁉︎この娘ってドラゴンなの‼︎でも完全に人形じゃんスパロちゃんみたいに角も鱗も羽もないのに!」

『それでも境界竜というのは私の親友にして妖精国の守護竜である彼女の名です』

『おう、姉様の親友でオレのもう1人の義姉姉様だ』


 かなり親しかったのだろうフォスとアンバーがいつになく感情的になっている


『お願いしますメルト様、彼女を私の親友とまた合わせてもらえないでしょうか』


「……それはどういう意味でだい?この魔力の結晶から解放するということかい?それとも君たちのように魂を物に焼き付けて不死者アンデットにするということかい?流石の魔術王でも魂だけの存在を生き返らせることができないのは君たちも知っているだろう」


「君たち姉妹が不死者アンデットとして蘇ったのは私がミネルスを死霊魔術で使役した時に真っ先に地面に額を擦り付け与えたばかりの念話で『どうか新たな主よ私の願いを聞いてください』と自らの永遠の忠義を対価に懇願した結果なんだよ」

『『………』』

「君たちとは仲良くやっていきたいから、私自身堅苦しいのが嫌いだから、普段は多少不敬な態度でも何も言わない。けど、。それならば、、君達は私に、いや、我に対価もなしに自分の願いエゴを通そうというのかい?」


『『『ッツ…!』』』


 私が今まで漏れ出すのを押さえていた魔力を解放するとみんなが息を呑む


 フォスside


 の周りはから溢れるあまりに膨大な魔力とその魔力に宿った虚構の力によって付近の大気が、空間が、景色が歪む。そこにいるのが確かに偉大な王、根源と接続し世界を知った王、魔術を極めし王という存在であることを嫌でも理解し分かってしまう

 今までは良く言え気軽に話しかけられる存在、悪く言えば威厳を感じない存在だった。だが今私の目の前にいるのは思わず息を呑むほどの威圧感プレッシャーと自らの矜持プライドをもつという存在だと魂から服従したく屈してしまいそうになる


『⁉︎申し訳ございませんメルト様、いえ、魔術王様。今までのご配慮に気づかずましてや何もなしに貴方様からの恩寵を授かろうとした不遜極まりない我が行い、何ともうしたら良いか』

「よい、君が私を敬っているのは分かっている。だが、我の尊大な態度に付け上がり自らの立場を忘れるようなことがこれからもあれば罰を下す。尊大な器で臣下を受け止め自らの威厳を示し臣下を導く、これこそが王というものでわないのかい、フォス」

『その通りです』


 あぁ、そうだこのお方は正しく王だ、我が偉大な父と同じ優しき広い心で全てを受け止め、先頭にたち民を率いる偉大な王だ

 そうだ、だからこそ私はこのお方に惹かれたのだろう。一度も今のように威圧感プレッシャーを放ち自らを示すことはなかったけれど、このお方は我ら姉妹の忠臣ミネルスの願いを聞き届け我らの復讐願いを聞き入れてくださり軍を出し自らも戦いその力を我らに示した


『我らが王よ、偉大なる魔術王よ。よろしければ我が願いもう一度聞いてはもらえないでしょうか。我が親友、もう会えないと思っていた旧友と我ら姉妹ともう一度合わせても耐えないでしょうか!我が忠義我が運命を全て貴方に託します!ですからもう一度彼女と合わせてください‼︎』

『私からも頼む、マスター、私は貴方の剣として鎧として敵を打ち滅ぼすと誓う!だからお姉様の願いを聞き入れてくれ』


 愛しい妹の声が聞こえた

 妖精国の騎士となってから聞くことがなかった“私”と自分を呼んで、妖精国に対しての忠義をやめ、貴方の敵を倒す剣になると貴方を守る鎧になると誓った

 これじゃあ、まるで私は妹にまで対価を出させるだめなお姉ちゃんじゃないか


『『どうか我らが願い聞き届けてもらえないでしょうか』』


 メルトside


 ………やっべーどうしよう、まさかここまでガチでお願いされるとは思わなかった。確かにね王である私になんお対価もなく願うのはどうかと思ってるけどそこまで求めてはないよ〜

 フォスもアンバーもちゃんと私を王として敬ってくれてるのは分かってるけどさー、それでも妖精国への、いやお父さん、妖精王への忠義を持っていたし私に忠義を誓えないことを申し訳なくも思っていたのは分かっていたけどさ〜

 どうするの?君たちの忠誠はいらないとか言えないじゃん?だからって受け入れるのも可哀想じゃんか、マジでこれどうしたらいいの?


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 初めましての方は初めまして、前から読んでくださっている方は続けて読んでくださりありがとうございます。作者のH2ゾンビと申します。

 第3章の第1話どうでしたか?いきなり真面目に仕事(戦後処理)をしているシーンから入り、この作品では割とレアなシリアスなシーン、そして最後はギャグみたいなシーンで終わりましたがメルトちゃんの素は一体どのシーンのメルトちゃんなのでしょうか?すっとぼけ

 次回もシリアス?なシーンが続きます

 それでは3−2でまたお会いしましょう

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