追放サイドストーリー5
俺たちは無事にリルドの街へと辿りついた。
まあ無事なのは当たり前だ、ここいらの魔物は弱く数も少ない。
「勇者様、この簡素な建物が冒険者ギルドですか? 」
「なんですの!? このオンボロな建物は……王都の馬小屋の方がまだ綺麗ですわね……」
二人は冒険者ギルドを見ると、あまりのボロさに驚いていた。
確かにここは一番平和で王都からも離れているからあまり物資が届かないかもしれないが、それにしてもボロすぎる。
「この街のレベルが知れたな、まあ依頼も見てみようぜ?」
俺がギルドに入ると身なりのいい穏やかな顔をした、糸目の男が驚いたように近づいてきた。
「これは……! 勇者様ではありませんか! いかがされたのですか? 聖剣をさがしているとお聞きしておりましたが……」
「誰だアンタ?」
「これは失礼しました、私はこのギルドを管理している者です……お見知り置きを」
コイツがここのギルドマスター? こんな田舎に住んでいる割にはかなり身なりのいい格好をしている。
まあいい、こんな奴に用はない……俺が見にきたのはこのギルドに貼ってある依頼のレベルがどれだけ低いかだしな。
「そうかよ、俺はこの街の依頼がどれだけくだらないかを見にきただけだ……アンタに用はない」
そう言ってギルドマスターに背をむけ依頼が張り出されている掲示板の方に行こうとするが。
「勇者様! お待ちください、実はとっておきの依頼がありまして……お話だけでも聞いてはいただけないでしょうか?」
一体なんなんだコイツはしつこい奴だな! だが、とっておきの依頼……少し気になるな。
話だけでも聞いてみるか。
「というわけで北の遺跡に魔族が住み着いたようでして、これを討伐していただけないかと……この街の冒険者では太刀打ち出来る者がおらず困っていたのです」
「勇者様、いかがなされますか?」
普通に考えればこんな依頼は絶対に受けないが、新しい剣と魔道具の力を試すにはちょうどいいだろう。
それにビスクの件でいろいろ抑えているものがあるし、憂さを晴らすには何かに当たるしかない。
「分かった、その依頼を受けようじゃないか! 剣の試し切りにはいいだろうしな」
「ありがとうございます! ではこちらが地図になりますのでお持ちください」
俺たちはギルドを出るとすぐに北の遺跡へ向かった。
魔族なんぞいくらでも倒してきた! あの足手まといを連れながら戦ってきたんだ、今回は余計な雑音が入らない分思いっきり戦える。
「ウィル様! 北の遺跡とはアレのことでしょうか? 今回は警戒を怠りませんわ!」
「グランバルド! 先行して様子を確認しろ」
「ハッ! 私めにお任せください!」
グランバルドが歩みを進め遺跡に近づくと、どこからか声が聞こえてきた。
「人間共、ここになんのようだ? 今すぐ立ち去れば見逃す、私を倒すつもりならばやめておけ!」
!!どこから話してやがる! 声を聞いたグランバルドが駆け足で俺の元へ戻り戦闘体制をとる。
俺とカーリアも戦闘体制をとり不意打ちを警戒するが正直、今の状況だとかなり不利だ。
くそ!! 魔女の魔道具さえあったなら、こんなことにはならなかったのに!。
こんなわけも分からない魔族なんぞに屈するなんぞありえない!!。
「ふざけんな! 魔族ごときにこの俺が引くわけがないだろうが! 舐めた真似しやがって……いい加減に姿を見せやがれ!!」
「そうですわ! 卑怯ですわよ! 姿を見せなさい!」
俺の後ろから何かが地面に降り立った音が聞こえ、振り返るとそこには女型の魔族が堂々と立っていた。
バカが! のこのこ出てきやがって! まともに戦えれば大した敵じゃない!!。
「勇者様!!下がってくだ…………がっ!!!」
「?! グランバルド!! どうし……」
「…………」
なんだ!? なにが起こってやがる!? 魔族が目の前からかき消えたと思ったらグランバルドの重厚な鎧に穴が開き魔族の拳が腹に突き刺さっていた。
ぐったりしたグランバルドが地面にゆっくりと倒れると魔族は呆れたように言う。
「弱い……まさかこの程度であんな大口を叩くなんて……命知らずにも程があるんじゃないか?」
「なっ、なにしやがった!!? いつの間にそこに……!!?」
ありえねぇ……たかが魔族ごときにグランバルドが一撃でやられるだと!? アーマーを着込んでる上に魔道具で防御力も上がっているはず!!?。
取り乱し身動きが取れなくなっている俺の横でパニックになったカーリアが適当な魔法を乱発する。
「ば、化け物!! “岩弾”(ロック・バレット)! “火球”(フレア)! “岩弾”(ロック・バレット)!……」
「はっ!! カーリア! お、落ち着け!! 無闇に魔法を乱発するな!!」
「つっ!! も、申し訳ございません!! わたくし取り乱して……!!」
正気に戻ったカーリアは肩で息をしながら大量の冷や汗を流していた。
おそらく魔法を乱発したせいで精神力が尽きかけているんだ。
でも、流石にこれだけ撃てばあの魔族は死んだはず……。
「なんだ? 今の? そっちの女は駆け出し冒険者なのか?」
カーリアと俺の顔は再び絶望に染まった。
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