追放サイドストーリー4
宮廷魔導士に要求した大量の魔道具を追加で装備し王都を出てから数日。
魔道具に身を包まれた俺たちは魔女の住む森へ足を踏み入れていた。
「くそ! どうなってるんだよこの森は! もう入って4時間は経ってるぞ! おい、ビスク! お前マッピングが得意なんじゃなかったのかよ!」
「す、すいません!! おそらくこの霧を見るに魔女の家の近くではあると思うのですが……結界の力で強制的に入り口に戻されているのかと……」
くそっ!! どうして俺の周りは役立たずばかりなんだ! どいつもこいつも俺の足ばかり引っ張りやがる!。
ハーヴィンは運がいいのか、高難易度ダンジョンの結界だって通り抜けてた……こいつはアイツ以上に使えない!。
「お前の前任は結界なんて余裕で通り抜けてたぞ!? 運がいいのか毎回迷いもせずに! お前、自分でベテランだって言ってたじゃねぇかよ!」
「結界は運の良さだけで通り抜けられるものじゃありませんよ!?」
「正攻法で結界を破るには膨大な知識と経験で針の穴ほどの隙間を見つけ出さないといけないんです!」
コイツなに言ってやがるんだ!? ハーヴィンは自分でも偶然だって言ってやがったし。
それにそもそもアイツにそんな能力があるわけねぇ!!。
俺は、頭に血が上りビスクを怒鳴り散らそうとするがグランバルドが焦った様子で止めに入った。
「勇者様!! どうか堪えてください! そろそろ日が暮れます、とりあえず今日のところは諦めて森を出ましょう! こんな状態で夜になれば我々は……」
チッ! 確かにその通りだ、辺りもだんだん暗くなってきたしとりあえず森を出ることが先か……。
そこから森を出るのにそう時間はかからなかった、さっきまで迷っていたのが嘘みたいだ。
そして、夜になり焚き火の前で座っている俺は、目の前にいるビスクに向かって怒鳴っていた。
「で? 結局テメェはなにが言いたいんだよ! 俺の判断が間違っていたとでも言いたいのか!?」
「前任の方は高難易度ダンジョンに存在する結界も突破できていたんですよね? どうしてそのような方を追放してしまったのかと聞いているのです!」
ビスクもハーヴィンと同じだ! 使えねぇくせに身の程をわきまえず俺に意見してきやがる。
どうして追い出したかだと? そんなのアイツが使えねぇからに決まっているだろうが!!。
思ったことを言葉にしようと俺が立ち上がって怒鳴り散らそうとした時。
「ビスク! 勇者様の判断は間違っていない! あのような男が勇者パーティーにいるなど我々の名に傷がつく!!」
「そうですわ! 平民のくせにいつも生意気な口ばかり! あなたも同じですわよ! 身の程をわきまえなさい!」
「そうですか……どうやら貴方達についてきた私が間違っていたようです、すいませんが、もうこれ以上お付き合いすることはできません」
はぁ!? コイツはなにを言ってやがる? この俺の……勇者パーティーの一員として雇ってやってるんだぞ!?
「荷物は全てお返しします……ではさようなら、もう二度と会うことはないでしょう」
ビスクは自分のアイテムボックスから預けていたアイテムを取り出すと、それらを全て地面に置きリルドの街の方へ去って行った。
くそっ!! これじゃあ魔女の結界が突破できないじゃねぇか! あのクソ野郎! ふざけた真似しやがって……!!
「ま、待ちなさい! まだ、話は終わってませんわよ! こんな夜中に貴女ひとりでリルドの街に辿り着けると思っていますの!?」
俺が言葉にならないほどの怒りでビスクの方を睨みつけていると、カーリアが慌てたように引き留めようとするが全く止まる気配がない。
結局ビスクは止まることなく夜の闇の中に消えていった。
「くそがぁ!! お前らが余計なことを言うからだぞ!! 魔女の森はどう攻略するんだよ!!」
「ゆ、勇者様!! 申し訳ございません! つい出過ぎた事を……!」
「申し訳ありません! わたくしもこんなことになるなんて思っていなかったもので……!」
くそ! コイツらがいくら謝ったところでビスクが戻ってくるわけでもない。
ダメだ、これ以上コイツらと話していると怒りで頭がおかしくなりそうだ!!。
「もういい! 今日はもう寝る! 今日はもうお前らの話なんて聞きたくもない」
俺の背中に投げかけられる謝罪の言葉を無視しこの日は眠りについた。
そして朝……少し寝て気分が落ち着いた俺は、魔女の森を諦めてリルドの街へ行こうと2人に提案した。
まあ、コイツらに聞いたところで断れないことは分かっていたが。
「勇者様……なぜリルドも街へ行くのかお聞きしてもよろしいですか? あの街に我々の求めるものはなにもないと思いますが……」
びくびくとしながら訪ねてくるグランバルドに俺はニヤリと口角を上げて答えてやった。
「決まってんだろ? あの平和ボケした街の依頼がどんなにレベルの低いものなのかを見てやろうと思ってな! 」
機嫌が良さそうな俺を見て昨日のことは忘れたと思ったのか、二人は笑いながら俺に同調してくる。
コイツらみたいにみんな俺の機嫌をとっていればいいんだよ! あんな使えない荷物持ちなんていらねぇ。
俺はビスクのことを頭から消し去ると、リルドの街へと歩みを進めた。
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