〇〇〇〇が開いてる二見さん


 貴重な大型連休をごろごろしながら過ごしてると、呆れ顔のお母さんにショッピングセンターへと連行されてしまった。

 曰く「女の子なのに身だしなみとは無縁の生活ばかりして」とのこと。

 そんなこと言われても、コミュ障のぼっちにオシャレとかムリだし。よく分かんないし、べつに理解したくもない。

 諦めムーブをかましてたらお金を渡され、「服を買ってきなさい」と言われてしまった。

 いいじゃん、この上下スウェット。動きやすいんだし。


 とはいえ、言われたからには買ってくるしかないか。

 私はしぶしぶといった様子で、ショッピングセンター内にあるショップにやってきた。

 入った瞬間、漂う陽のオーラ。私にはきつい。目を開けてられない。

 そんな中、ひときわ輝く姿が目に入った。よくよく見るまでもない、二見さんがそこにはいたのだから。

 

 「っ!」


 私は急いで隠れ、こっそり眺めてみることにした。

 二見さんはひとりで服を買いに来たらしく、両手に服を持っては身体に合わせてみたりしている。

 あれが噂の二見さんファッションショーってやつか。


 なにを合わせても似合う。服にぜんぜん負けてない。

 ほかのお客さんはおろか、店員さんまで見惚れるありさま。私ももちろん見惚れてしまっていた。

 そんなことを何着か繰り返してると、お気に入りのやつが見つかったのか。すぐそばにあったフィッティングルームに入っていった。

 実際に着てみるのだろう。


 私はそう考え、その場を離れようとした瞬間、気づいた。

 カーテンがちゃんと締まってないことに。隙間から、中が覗けてしまってることに。

 二見さんはまったく気付いてないのか、着ていたものを脱ぎだしてる。色白すぎる背中にブラジャーまでもが露わになってしまっていて。

 顔から血の気が引いていく。私の角度からしか見えてないみたいだけど、二見さんの選んだものに興味を抱いた人たち(主に男ども)が、こっちに近づいてきてる。

 ヤバい! このままじゃ、


 『うひょっ、ここはホットスポットかよ。丸見えじゃねーか』

 『ほんとは見てほしいんだろ。ったく、とんでもねぇ女だな』

 『据え膳食わぬは男の恥っていうし? 遠慮なく、いただきまーす』

 

 ――と、なるに決まってる! 密室にさせられた場所で、男たちによる辱めを受けてしまうんだ。

 そんな断行決して許すわけにはいかない。


 私は気配を消し、二見さんのいるフィッティングルームへと近づいていく。

 気づかれないようこっそり、カーテンを閉めていった。


 「ふぅ……」


 これでよし、っと。

 あとはこの場から、――全力ダッシュ!



 結局、服はお母さんに買ってきてもらった。

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