第191話 ナヒョウエ
アジト戻り、そこにいた皆にナヒョウエの事を話した。
「やっぱりカオるんのお店だったー?」
「なひょうえ何て変な名前、カオるん以外いないってw」
「いやでも10年前に一度行ったきりだったからさー」
変な名前!失礼な。焼き鳥屋さんに謝れ。
あと両隣りも変な名前だからな。ゴンザエモン、スケサンカクサン。
「まぁあそこは消耗品と言っても矢と料理だけで皆には必要ない物だったからな」
うちのクランは剣を使う前衛ばかりだ。皆が俺の店を訪れてなくても不思議ではない。
「POTもスクも普通に街で入手出来たし、何で態々新システムを導入したんだか。運営もわけわからん」
「前衛の攻略組以外がゲームから離れて行くのを阻止したかったのですかね」
「あの時点じゃもう手遅れじゃないか?」
「そうだな。結局材料入手のためにソロ活化は進むだろうしな」
「それと課金要素を増やすつもりだったか。けど制作出来る内容があれではね」
「良い点もあった。店内に倉庫がある。それと制作台な。恐らく後々制作出来る物を増やす予定だったんじゃないか?」
「もちろん追加課金で、色々増えたようですが店に課金するプレイヤーは増えなかったようですね」
ああ、だろうな。
俺がやめたあたりからプレイヤー数が段々と下降気味だったらしいから、運営サイドも搾り取れるうちに、と考えたのかも知れない。
「神殿の女神像のさ、POT女神がまだ謎のままじゃないか?あれどうにかならないんかね?」
「そうだなー。先日はカオるんがPOT出してくれたから何とかなったが、カオるんの手持ちも限度があるだろうし、困ったな」
「王都ではPOT…回復薬とか売ってないんか?」
「ああ、売ってるけどね」
「うん。高額なわりに効果がイマイチ」
「多分赤ポより効果低いかもね」
「赤ポよりって、初級回復薬より?」
「うん。瞬間回復とかまずない。あと深い傷は出血止まらん。折れた骨も無理。他のクランのやつからの情報だけどな」
「スケカクさんが亡くなったの惜しいよな。あそこなら作れただろうに」
「ギルドかどっかが転売してるんだよな?うちで店を買い取るか?」
「いえもう遅いかな。中を覗いたら空になってたので、亡くなったと同時に箱だけになったみたいですね」
「そっか、そうなのか。ナヒョウエも俺が死んだら制作台や倉庫も消えるのかな…」
「カオるん、もし出来ればですが、誰かと共同経営にしておいた方がいいですね。可能かどうかギルドで聞いておきましょう」
なるほど、共同経営なら俺が死んでも店は残りそうだ。
だがきっとそれも稀人のみの気がする。
「うん、頼む。それとさ、街の店でも回復薬が作れるって事は、作り方が解れば俺らでも作れるんじゃないか? そりゃあ制作台でサクサクなんて感じにはいかないだろうけど。タウさん、そのあたりももしわかれば調べてくれないか?」
「そうですね。僕たち前衛にとって回復薬は命に関わるアイテムですからね。早めに動いておきます」
「サンキュ」
「クラマス、ありがとー」
「タウさんよろしくお願いします」
「ゴンザはクローズになってたけど生きてるんだよな?この王都にいるのか?」
「いますね。ゴンザレスさんは、確か港に近いあたりに数人と住んでいると聞きましたね」
え、待って。『ゴンザエモン』が店名で、プレイヤー名はゴンザレスなの?まさか本名じゃないよな?どこの国の人?
「ゴンザレスは日本人ですよ」
タウさん、俺の心を読んだ?
「ゴホン、ええと、女神像のスクロールは紙が必要だけど、ゴンザのとこはどうなんだ?ゲームでは紙なんてアイテム無かったろ?」
「それが、この世界では材料が変わってしまったらしいんです。ゲームでは森の木から採れた『パルプ材』を使ってスクロールを作れたらしいのですが、この世界では紙が必要らしいです。王都でも紙の入手は難しいんですよ。羊皮紙が主体の世界ですからね。羊皮紙でも作れますが羊皮紙自体が高額ですから入手が厳しいらしいです」
「店に設置されている倉庫に材料は入って無かったのか?」
俺はさっき訪れた時に店内の倉庫を開けてみたのだが色々と入ったままだった。
エントの枝、矢尻の材料の銀、ミスリル、オリハルコンのインゴット、料理の材料だろう肉や果物、木の実など色々と。
「ゴンザレスさんは店を何年も放置してらしいですから倉庫はほぼ空だったそうです」
「まぁ客もいなかっただろうしな。スクロールはドロップでザクザク出てたからな」
「運営も何をしたかったのかあちこち中途半端でしたね」
「そうなのか。紙ならあるからゴンザに店開けてもらうか?」
「カオるん、紙持ってるんですか?」
「ああ、ほら、職場ごと来たって言ったろ?事務職だったから紙は山ほど持ってる。女神は帰還とテレポとブランクスクの3種類だが、他に解呪や解析もあると助かる」
「職場ごと転移って羨ましいなぁ」
「ではさっそくゴンザレスさんにも連絡を取りましょう」
「カオるん、ナヒョウエはいつオープンの予定なんですか?」
「ううむ、まだ決めていないが、週一で短時間だけ開くかな。趣味の店のような感じだな」
「カオるん、一般客への販売はあまりお勧めしません」
「なんで……」
「王都は人が多い、変な奴に目をつけられるかもしれない。他国の間者もいると思った方が良いです。ミスリルアローやオリハルコンアロー、バフ付き料理が他国に流れる可能性が大きいですね。最悪、カオるんが誘拐される懸念もあります」
「俺…店、開けない方がいいか?」
「開けても良いですが、表向き用にどうでも良い物を並べて置いてはどうです?矢や料理は王都やギルドからの注文販売が良いかと思います」
「なるほど、流石タウさんだ。俺は浅はかでスマン」
「いえ、実はゴルダさんに頼まれています。王都でカオが何をしでかすか不安だってw ムゥナの街のカオるんの店もしっかりギルドが護衛しているそうですね」
そうだった。護衛の冒険者のトリュー達はゴルダが差し向けた人材だったっけ。
「表向き商品って何にするかなぁ…」
王都にも市場はあったし、何でも手に入りそうだな。ま、飾っておくだけだから市場で売ってる物とかぶってもいいか。
「バナナでも並べておくかぁ」
「バナナ?」
「バナナあるんですか?」
「あ、ナヒョウエの倉庫にあった材料?」
「いや、ダンジョンで採れたバナナ。うちでも人気でよく採りに行ってるからな」
「カオるんバナナ持ってるの?今もある?」
皆が寄ってきたのでアイテムボックスからバナナを出した。
ダンジョンの26Fのノールンからドロップする20本くらいが一房になっている立派なバナナだ。
「バナナー!」
「カオるん、食べてもいいか?」
「どぞどぞ」
「うちの子に持って帰るわ。旦那も入れて5本頂戴」
「お、うちも貰っていこう。6本くれ。カオるんゴチ」
「あ、まだあるからそれごと持っていきなよ」
俺はアイテムボックスからバナナを何房か出した。
バナナはどこでも人気だな。
ナヒョウエに並べるのはバナナに決定だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます