第12話 社内清掃②

西北南の3フロアから使えそうな物を収納し終えたので、とりあえず東の資料庫に戻った。



スマホで時間を確認すると夕方の4時をまわっていた。

なんだかんだで随分と時間が経ってしまったようだ。


ぐぅぅ

腹の音で昼を食べていないのを思い出した。

あと、トイレにも行きたい。


トイレは水が流せないだろうけど、男には問題なし。

さっきペーパー収納のために女性トイレにも入ったけど、本当に汚かった。

男性と違い女性の場合は個室で水が流せないと悲惨な状態になるんだな。

見たくなかった女性の真実が・・・・(ガックシ)

ちなみに、この世界のトイレ事情はどうなんだろう。

中松さんが中世の騎士のような人たちと言ってたな…、この世界の文明が地球の中世あたりとすると、あれか?バケツに溜めた排泄物を窓から捨てるやつか?

ううむ、街中を歩く時は気をつけよう。



とりあえずトイレに行って、資料庫に戻ってウエットティッシュで手を拭いた。

それからキャビネットに隠してあったペットボトルのお茶を飲みながらクラッカーを囓った。

キャビネットに隠しておいたマイ災害グッズから手回しの充電機を取り出しスマホの充電もした。


電話もネットも繋がらないから使えないんだけど、持ってないと何故だか不安なんだよ、スマホ。

いや、元からそんなに使う相手もいなかったけどな。



ひと息ついたところで中松さんにメールをした。(スマホじゃなくてステータス画面のメールな)



ーーーー

そろそろ日も暮れる頃かと思うけど、そちらはどんな感じですか?

まだ森の中?それとも抜けたかな

さっきの話では、走っていると言ってたけど体調は大丈夫?

それから何か新情報があったら教えてください

ちなみに俺は資料庫でお菓子をつまんでいます

ーーーー



「送信」と、心の中で念じてメールをとばした。


さて、と立ち上がり、

「収納の続きをしますか」と気合を入れ直した。


西、北、南の三フロアでの収納は済み、あとは、ここ東側の資料庫のみだ。

資料庫の中はほぼ資料しかないので使い道はない。

収納してもアイテムボックスのゴミになるだけだ。

しいて収納するとしたら、隅に置いてある未使用のダンボール箱(ひと束10箱)が10束と、踏み台、ゴミ箱くらいかな。


あとは、こっそり溜め込んだマイ災害グッズな。

キャビネットの扉を開けてマイグッズを次々とボックスに収納していった。


ちなみにマイ災害グッズとは、前回のような大地震とかの帰宅困難時に、あったらいいなと思うものを地道に会社(資料庫)に持ち込んだ物だ。

もちろん社員には内緒で。


衣服関係はユニシロで夏・冬それぞれ下着からスウェット上下、ズボンやシャツ、トレーナー、ジャケット、厚手のダウンも。

災害時は階段の昇り降りが必須になるだろうから、シューズやスニーカーも2足ずつ。(ちなみに普段は革靴通勤)

雨も考えて長靴と雨合羽、折り畳み傘もある。


それから職場近くの薬局で歯ブラシ・歯磨き粉の安売りをしていたのでつい大量に買ってしまった。

歯ブラシ10本入りの箱を10箱と歯磨き粉10個入りの箱を10箱、

こんなにどうすんだよと思いもしたけど、まぁ普段会社用でも自宅用でも使えるからな。


シャンプーや石鹸は悩んだ。

職場に風呂はない。

だが帰宅困難が1ヶ月続いたら‥‥‥痒いはずだ!

うん、水道さえ復活すればイケル、たぶんイケル。

というわけで購入した。とりあえず2個ずつ。


ブラシ、爪切り、綿棒、など諸々を適当に。

リップクリームとハンドクリームは普段から必須アイテムなので、このさいと箱買いしておいたのをアイテムボックスに突っ込んだ。


以前にリップを塗ってるところを職場の女性に見られた時、

「キッモーイ!ハケン!オエッ」と言われた。

はぁ、もう…お前は小学生か!

男だって唇は乾燥するし、手も荒れるんだよ。(特に俺は作業多いし!)



あと薬系。

胃薬、風邪薬、痛み止め、消毒液、ガーゼ、包帯、絆創膏など。

ホカロンと冷えロンとマスクは箱買いしていた。


それから飲み物と食べ物。

2リットルのミネラルウォーターはもちろん、スポーツドリンクやお茶、コーヒー、紅茶などのペットボトル。

カロリンメイトやウイザーインゼリーのような栄養補給食。

チョコ、クッキー、せんべい、ポテチ、飴、グミなどのお菓子類。


せんべいがなぁ、日持ちしなくて大変だったんだよ。

キャビネにしまって3ヶ月もたつと賞味期限が切れるので、

常に日付を確認して入れ替えないとならなかった。

仕事用のパソコンにエクセルで『賞味期限一覧』を作成したっけ…。


賞味期限が切れる直前の物を社員達に配って歩いた。

「おやつです ど〜ぞ〜」と。

もちろん配る順番が1番でないとすぐ不機嫌になる面倒くさいやつが多すぎて、もはや誰から配ってよいのか…。

高齢順なのか?性格悪い順なのか?

マジ面倒くせぇ。


しかも、みなさんにはお配りしますが俺は食べてませんよアピールしないとうるさいうるさい。

『ハケンのオヤツは禁止されてるから』と必ず言われる。

食ってないし!てかそれ、どこの法律だよ!


おっと、話が逸れた。

野菜が取れない保存食だと栄養が偏るからパックの野菜ジュースも用意した。

あと缶詰系もたくさんある。

パンの缶詰、焼き鳥やコンビーフの肉系缶詰、ツナや鯖缶の魚系缶詰、

桃やパイン、みかんなどの果物系缶詰など、ビタミンは取らないとね。


カップ麺やパスタ、パスタソースもある。

給湯室にはガスコンロがあると聞いていたし、電気やガスが復活したら温かいものも食べたくなると思ったから用意してみた。


資料庫のキャビネット棚まるごとひとつが俺専用の収納箪笥になっていた。

キャビネットにしまいこんであったそれらをひとつ残らずアイテムボックスに収納した。

全部入った。

まだまだ入りそうだけど、アイテムボックスの収納量って無限なのか?


大仕事を終えて、座ってさっきのお茶を飲んでいたらメールが届いていたのに気がついた。

中松さんからだった。



ーーーー

鹿野さん無事ですか?

私は街に着きました。

鹿野さんに教えてもらったとおり女性騎士さんがいたので妊娠の事を言ったら、森を出たところで馬車に乗せてもらえました。


他の人達は歩きだからまだ街に着いていないです。

事務室を出たのが11時くらいで、森を抜けたのが2時頃かな。

森を抜けるのに走って3時間くらいかかったかな?

足場の悪いジャングルを大人数で団子状態で移動したので、走ったというより早歩き程度のスピードでの3時間です。


森を出たところに別の騎士さん達が待機していたみたいで、とりあえずそこで休憩しました。

その時に女性騎士さんに話しかけてみたらすごくイイ人で、心配してくれて荷馬車に座るとこを作ってくれました。

私はそのまま荷馬車に乗って街まで来ました。


みんなは歩きで最初は馬に乗った騎士さんや私の乗った荷馬車も一緒に移動してたけど、みんなの進みが遅くてこのままだと日が暮れそうだからってすぐに別行動になりました。

馬と荷馬車はスピードをあげて、街の門が閉まるギリギリに滑り込みました。


多分みんなは途中で野営?野宿?するみたい。

ちなみに門は朝日が登る頃から日が暮れる頃まで開いてるそうです。


あ、大事な事を伝え忘れるところでした。

あの森は"死霊の森"と言われて恐れられているそうです。

昼間でも薄暗く死霊系の魔物が多く出るそうです。

夜になると魔物の数がグンと増えてその上強いのも出るみたいです。

あと、今日は騎士さん達30名で来たと言ってました。

魔物に出会っても倒すのに時間がかかるとドンドン寄って来るので、

とにかく走れ!走り抜けろって、すごく急かされました。


鹿野さん 夜は絶対外に出ないように気をつけてくださいね。

てか!魔物って何よ!ここどこなのおおお!


また明日、情報をゲットしてメールしますね

ーーーー



中松さんイイ子だなぁ。

彼女のメールのおかげでいくつか明らかになった。

ここから森を抜けるのにだいたい4時間かかる。

魔物は死霊系で夜は特に湧く。

森から街への方向と距離がわからないけど、それは明日メールしてみよう。


お礼のメールを飛ばして、資料庫の奥に寝床を作る事にした。

ダンボールでベッドでも作ろうかとアイテムボックスから出したときにステータス画面を見て思い出した。


「マップ出しておかないと!」


赤い点が近づいて来たら警戒しないとな。

と、マップボタンを押して、ひっくり返りそうになった。


昼間マップを見た時はまばらだった赤い点が、

今は森の中にウヨウヨと増えていた。

しかも、いつの間にか建物の中にも入って来てるぞ!!!

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