俺得？仕事中に転移した世界はゲームの魔法使えるし？アイテムボックスあるし？何この世界、俺得なんですが！

第7話 資料庫でこっそり確認

皆がフレンド登録やメールを試しているのを横目に、俺はまた資料庫に戻る事にした。

みんなの眼中に入っていない俺はこれ以上ここにいてもしかたがない。

どうせ誰も俺にフレ申請はしてこないからな。

それなら誰もいない静かな場所でいろいろ確認したい事がある。

中松さんも言ってたけど、「フレンド」ボタンの下にある残り4つのボタン。

「マップ」「アイテム」「パーティ」「クラン」まずはこれらを探りたい。

本当は中松さん達も誘って一緒に資料庫に行きたかったけど、中松さんは人気者でフレ登録やメールに引っ張りだこになってしまっていた。

なのでしかたなくひとりで確認をする事にした。

真っ暗な資料庫でさっきのランプをポチっとつけて、ステータス画面を開いた。

まず「マップ」から。

指でマップの文字に触ると目の前に半透明のマップが展開された。

これ、この22階のフロアマップだ。

東階段横の部屋の中に青い点がひとつ………俺だよな。

西側と南側の事務室には黄色い点が数えられないくらいウジャウジャとある。

黄色い点は職場の皆、つまり”人間“と言うか“敵”ではない者だな、たぶん。

スマホ画面を広げる時みたいにスワイプ？親指と人差し指でバインと広げてみたら、マップがアップになった。

この部屋の棚やキャビネットの位置がハッキリ写し出された。

次に、二本の指で画面をプインと摘むようにすると逆に小さくなり、

さっきの状態の22階フロア全体に戻った。

もっと広域を見れないかと、さらにプインと摘んでみたら、道がない広場のような図の真ん中に小さな真四角。

切り取られた22階が森の中にドン！と置いてあるような地図が写し出された。

フロアの大きさと比較するとかなり大きい森(？)だな。

しかも、所々に赤い点がある。

これ、赤い点ってモンスターだよな？

ステータスが見れるとか、もろゲームチックなことからして、マップの赤い点はモンスター以外考えられないからな。

自分=青 他の人=黄色 敵=赤 だよなぁ。

まあ、森の広さに比べて赤い点はまばらだし、四角いこのフロアからはけっこう離れているので慌てはしないけど、とりあえずは要注意。

ちなみにマップは三本指で触った状態で上下左右斜めと好きな場所に移動ができた。

目の前にあったらさすがに邪魔なので助かった。

次のボタン「アイテム」をチェック。

ボタンを押すと予想通り、ゲームキャラが持っていたアイテムがズラッと表示された。

良かった。

フレンド一覧がクリアされていたから、もしかしたらアイテムも空っぽかもしれないと覚悟をしていた。

アイテム残してくれてありがとう、神さま。

ボックスの中には見覚えのあるアイテム名が並んでいた。

ゲームの時に持っていたアイテム名を全部覚えていたわけではないのだが、間違いなくそうだろう。

ふと、不思議な事に気がついた。

「ラインエイジファンタジー」はキャラのアイテムの収納量に制限があるゲームだった。

アイテムボックスに入るアイテムの数と重さにかなり制限があったのだ。

例えばHP回復用のポーションを1000個持とうとすると重くて倉庫の前から動けなくなる。

STR(強さ)やCON(体力)の値が高いナイトやドラゴンナイトでもせいぜい500個持つのがやっとだった。

ウイザードはSTRやCON値が低いため300も持つと動けなくなった。

そのため、長時間ダンジョンにこもりたくても、ウイズならPOTは100個くらい、エルフなら矢はせいぜい3000本弱くらいしか持てなかったので、どうしても狩りの途中で街の倉庫まで取りに戻らなければならなかった。

それくらい、あのゲームはキャラのアイテムボックスの小ささがネックだったな。

アイテムボックスを満杯にして狩りに行くとモンスターを倒した時に落ちるドロップが一切拾えなくなる。

なので狩りに行く時は出来るだけ荷物を少なくしていた。

常にどのキャラも最低限の荷物にしていた。

そしてキャラが持てない分の荷物は街の倉庫に突っ込んでいた。

街の倉庫はゲームアカウントごとの使用となるので自分が持ってるキャラの共通倉庫となる。

ちなみに倉庫から物を出すのに一回の使用料として30G必要だった。

Gというのは、ゲーム内のお金の単価である。何の略かは覚えてない。

しかし今、自分のアイテム一覧には、ＷＩＺが持っていたとは思えない量のＰＯＴが入ってる。

ステータス画面に記載されてた名前がカオ(ＷＩＺのキャラネーム)だったからアイテムもＷＩＺキャラが持ってた分だと思ったのだが、違うのか？

ＤＫＮ(ドラゴンナイト)は結構な量のＰＯＴを持たせていたが、名前はカオじゃなかったはず……。

ＤＫＮは、10年以上前のやめる頃に作ったキャラで…名前は何だったかな。

エルフキャラは確か『カオリーン』で、ドラゴは…ドラゴは、あ！『カオゴン』！

は、恥ずかしい、抹消したいネームだな。

ステータス画面に出てなくて良かった。(ホッ)

いや、名前はともかく、アイテム欄をサクッと下まで見てみると、どうも3キャラ分のアイテムが一緒に入っているようだった。

WIZの装備もELFの武器もDKNの武器装備もある。

この世界はゲームの時のような「キャラチェンジ」ではなく、

全キャラの職業をひとりで持っているという事だろうか？

たしかにステータスの職業欄には4つ載っていたし。

それにしても3キャラ分のアイテムが入っているという事は、この世界でのアイテムボックスはゲームよりもかなり多くの容量が入る仕様なのか？

容量が大きいのは助かるな。

しかし、残念ながら共通倉庫に預けていた大量の物は入っていなかった。

ゲームキャラがそれぞれ身につけていた物とそれぞれのアイテムボックスに入れていた物のみのようだ。

けれど、最低限の荷物だとしても、3キャラ分の武器、装備、回復薬などの消耗品が入っていただけでも儲けものだ。

ゲーム未経験の人たちは手持ちアイテムどころか、アイテムボックスさえも使えないみたいだしな。

大森さんはステータス画面にフレンドボタンしかないって言ってたもんな。

さて、アイテムの取り出しはどうやるんだろう？

アイテム一覧の上の方にあった赤ポを取り出してみようか。

ゲームでの初級回復薬は見た目はフラスコ型の入れ物に入った赤い液体だった。

なので皆、回復薬を赤ポ(レッドポーション)と呼んでいた。

レッドポーションの絵に触ると数字のついたスクロールキーが現れたので、とりあえず、一個で。

ボトっ

わっ！

突然空中に現れた小瓶をすかさずキャッチした。

ちっちゃい瓶に入った赤い液体。

たぶん回復薬。

試しに飲んでみたいけどケガしてないしなー。

数に限りがあるのでもったいない。

アイテムボックスに戻しておこう。

‥‥‥戻すのってどうするんだ？

「収納」と言ってみた。

手に持っていた小瓶が消えた。

うん、戻ったね。

でも、回復薬がゲームのようなデカイ瓶じゃなくて良かったよ。

ゲームじゃ狩りの最中にPOTの100や200は一気にガブ飲み…回復薬をセットしたパソコンのキーを連打しまくるわけだけど、この世界で怪我をするたびに500mlガブ飲みとか無理だから。

持っているアイテムを全部確認したいけど、時間がかかりそうなのでとりあえず次のボタン「パーティ」を押した。

画面はパーティ画面になり、フレンドの時のように「メール」「念話」「登録」「解除」があった。

たぶんフレ同様にパーティの登録、解除、パーティメンバーとのメールや念話ができるのだろう。

最後のボタン「クラン」もフレンドやパーティと同様だった。

ゲーム「ラインエイジファンタジー」ではクラン(血盟)というグループに所属することで色々な恩恵を受けることができた。

たとえば、通常のパーティだと8名までだが、クランでは50名までパーティを組む事が可能だ。

他にもクランアジトの使用や、クラン倉庫の共有、大人数でゲームを楽しむのが好きな人は大概クランに所属をした。

ゲーム初心者はクランに入る事で他のプレイヤーにゲーム内の情報

を教えてもらったりもした。

単騎を好む者も一応クランに加盟をして、ひとりで行くのが難しい狩場などに参加したりしていたようだ。

俺もゲームでは一応クランに加入していたが、目の前のステータス画面にはフレ同様、クラン一覧に何も出ていなかった。

今はどこのクランにも所属していない状態なのかな？

ゲームの時のフレンドやクランの仲間はこの世界に来なかったのだろうか……。

こっちに来たのは俺だなのか？

どうして俺だけ…。

そもそもこの世界に何故、どうやって、来たのかもわからないのに考えても無駄か。

さて、気を取り直し、資料庫でコッソリ試したかった事、それは！