第2話 人生初のテロ事件に遭遇した?

え?

えええええ?

なんだ?なんだ?

なんで、みんな、倒れているんだよ!


最近観ているTVドラマを思い出した。

まままさ、まさか、 テロ……?


皆んな…死んで……?

どどどど毒ガスとか、かかか、フロアに撒かれたかかか!


人生初気絶なうえに人生初テロ遭遇?

さ、さすが都会だ!

心臓がバクバクし出した。

冷や汗?脂汗?が額から床に流れ落ちた。


落ち着け!落ち着こう、俺!

とりあえず深呼吸…ふぅぅぅはぁぁぁぁ

転がったまま深呼吸を繰り返す。


ふぅ。

で、何でうちのようなショボイ部署がテロの標的に?

いや待て、部署はショボイが、企業は大企業だ。

40階のビル全体に毒ガスが撒かれたのかもしれない。


ビルの全てのフロアがここと同じように社員さんが転がっているのかもしれん。

し、死体が…ゴロゴロと。



どうしよう どうしよう どうしたら

逃げる?

いやまずつつつつ通報?

110番?119番?あれ?911だっけえ?

アワアワ落ち着けええええ


冷静になれ!

このビルがテロリストに占拠されているとしたら、このフロアにまだいるかもしれん。


ガスマスクをつけたテロリストがぁぁ!



逃げるにしても通報するにしても、見つからないように慎重に行動せねば。


そっと寝返りうって自分のデスクにズリズリと近づく。

この時ばかりは自分の席が目立たない隅っこだったのを有り難く思う。

デスクに身を隠しながら、静かにデスクの上の電話に手を伸ばして受話器を掴んだ。


そおっと受話器のコードを引っ張り電話機本体をデスクの端まで引き寄せて静かに床に降ろした。

受話器を耳にあててイチイチゼロをプッシュする。


受話器からはウンともスンともプーともツーとも言わない。


うわー 何でだよ?何でだよ!



あ、そっか。

テロだもんな。

電話線くらい切るよな。

というか、こんなに薄暗いのは日が暮れたのではなく、電気を切られているからなのかもしれない。


う〜〜〜〜む。どうする。


あ!

自分のスマホがあるじゃないか。

普段は職場内での使用禁止をうるさく言われていたので忘れていたよ。

ホッとしながらデスクの引き出しを音がしないようにそっと開けてそこからスマホを取り出した。

周り(テロリスト)の音を気にしつつ、スマホで110番しようとした。


圏外になってたぁ!


のおおおおおおお!

何でこんな時に圏外?


そうだった!

このビル、SOCOMO(大手携帯会社)やハードバンク(猫の携帯)の電波は普通に入るのだが、ZU(俺のスマホ会社)は何故か電波が入りづらいって噂があったんだよ。


まさか本当だったとは。

困ったな。

とりあえず振ってみる。


・・・・・・・

圏外のまま。



仕方がない。

電波をキャッチしに窓際まで移動するか。

俺の席は窓から一番遠い壁際隅っこの一番後ろなのだ。

ここから窓に向かって壁沿いに匍匐(ほふく)前進した。


ハアハア…


俺が働いているチームはビルの西南西にあたり、一面に広く大きな窓があるのだ。

以前に仕事で使用している電波時計の調整を窓辺でやった事を思い出した。

あそこまで行けば、スマホの電波を、キャッチできるはず?…信じてるぞ。



ハアハア…匍匐前進って以外と疲れるな。

自衛隊の人、ソンケーするぜ!

ハアハアハア

いや、俺、もうすぐ50だし?老骨だし?

ハアハア


ハアアアアアアアア

ようやく窓の下にたどり着いたので、スマホをガラスに近づけて、アンテナが立ったか見るために顔を上げた。



え? 

ええええええええ?

なんじゃ、こりゃああああああああ?



思わず大声をあげて立ち上がってしまった。

立ち上がった目の前、窓の外、

ガラスの向こうはジャングルだった。


ジャングルだった。



窓ガラスに顔をつけて何度も瞬きを繰り返すが、目の前には

木、木、木、

これでもかってくらい木が生い茂っていた。


だからこんなに薄暗かったのか。


って、おかしいやろ!

ここ、22階だからな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る