第4話

アクセサリー店 Animaは神獣の森奥深くにあるアクセサリー店だ。

店のドアを開けば、店員であるうさぎの女の子のぬいぐるみであるクゥが迎えてくれる。

そして店長は店の奥で一人アクセサリーを作っているラクリマという無表情な兎耳の女性だ。

森の奥にあるお店だが、ほそぼそとお客は来ている。

かなり立地の悪い店だが、常連客もいるようだ。


その日クゥはかごのベットでうとうとしながら、お客を待っていた。

すると店のドアが開き。


「やッホー!きたゾー!」


緑髪で茶色の目をした少年が現れた。


≪やいとさん!お久しぶりです!お元気でしたか?≫


「元気だゾー!クゥは元気カー?」


≪元気ですよ!≫


やいとと呼ばれた少年はレジカウンターにいるクゥに近づき、談笑している。

1人と一体はどうやら知り合いのようで、話がはずむようだ。


≪ところで今日はどうしましたか?≫


「きららにプレゼントしたいから、選びにきたんダゾ!」


≪なるほど!ではゆっくりと見ていってください!≫


「がんばるゾ!」


ここにあるアクセサリーが特殊とはいえ、十代の男の子がいるには違和感のある空間だが、

どうやらきららという人物への贈り物を選びにきたらしい。

そうしてやいとが商品棚の方にいこうとすると『STUFF ONLY』と書かれたドアが開かれ、ラクリマが現れた。


「…やいとか?」


「あっラクリマサン!お邪魔してますだゾ!」


どうやらラクリマとも知り合いのようで、気軽に挨拶する。

ラクリマはふらふらとレジカウンターへ向かい、イスに座る。


「そうか…まだ店が開いてる時間か…」


≪ご主人どうしたんですか?いつもなら出てこないのに≫


「そうだゾ、様子がおかしいゾ?」


「…あぁ…眠い…」


≪あわわ!あぶない!≫


とレジカウンターに倒れ込むとラクリマの姿が消えた。

黒髪の女性の姿はどこにもないが、レジカウンターの上をみると、全身黒色でたれ耳が白色のウサギが眠っている。


「おー…ラクリマさんがその姿なのは久しぶりニみるゾ…」


≪この感じかなり徹夜してましたね…起きたらお説教です!≫


どうやらそのウサギがラクリマのようだった。

そう、ラクリマはアクセサリーを作るため、人間の姿となっているが、元は神獣であるウサギである。

神獣が人間の姿になるには、相当の魔力操作が上手くないと出来ない。

ラクリマは人間の姿をとるだけでなく、クゥや商品のアクセサリーも作っている。

かなり魔力操作が上手い神獣なのだろう。


「ラクリマサン小さい頃カラ、人間の姿だったかラな~、この姿見るのはよほど疲れた時なんだぞ」


やいとは赤ん坊の頃、この神獣の森に捨てられた子で、神獣に育ててもらった。

やいとの育て親がラクリマと知り合いで、育て親が人間を育てる時に相談に乗ったのがラクリマである。

やいとにとっては育て親の一人ともいえる神獣だ。


「この姿みるト、ここに店あるの納得するケド、普通ならここに店あるのびっくりスルんだって」


≪人に売るのに、人がよりつかないところにありますからね≫


冒頭でも話したが、ここは神獣の森。

神獣を敬う人、恐れる人は絶対に近づかない森だ。

やいとにとって神獣の森は生まれ故郷であり家である。

そのため、やいとは気軽に来ているが普通の人には難しい場所だ。


≪そういえば、プレゼント大丈夫ですか?≫


「あ、そうだったゾ!」


クゥにそう指摘されるとやいとは慌てて商品棚の方に向かう。

やいとがプレゼントを選ぶ間、クゥはラクリマを持ち上げ、自分のベットに運ぶ。

普段なら人間の姿で寝るラクリマだが、よほど疲れていたために人の姿を保てず、本来の姿で眠っている。

魔力操作はかなり難しいらしいので、出来ないほど疲れているのかとクゥは納得した。


そういえばとクゥは思い出す。

チーフーは元子狐だ。

神獣は長生きではるが、チーフーは生まれてから5年ほどしかたっていない。

人間の姿になるにはかなりの年月をかけないといけないと言っていた。

ラクリマは何十年と生きてるため出来ているが、5年しか生きていない子狐が人間の姿になれるのだろうか?

相当魔力操作が上手ければ出来るかもしれない、しかしチーフーが子狐時代からそんな話をラクリマから聞いたことがない。

クゥは少し考えたが、自分はただのぬいぐるみで考えたところで何も分からないと結論をだし、やいとがプレゼントを選び終わるまでカゴに寄りかかりながら待つのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る