森のアクセサリー屋さん
港龍香
第1話
とある世界の森の奥、そこに小さな家があった。
誰かの家だろうか、と近づいてみるとそこはお店のようで、看板が出ていた。
【アクセサリー店 Anima】
人が寄り付かない森のその奥でひっそりと建っているお店は、不思議なアクセサリーを売っているという。
「…こんなところに家?」
「っていうより店だな、アクセサリー店?……ここで?」
「………そういえば噂で聞いたことあるかも、この森の奥に不思議なアクセサリーを売っている店があるって…」
「この神獣がいる森でか?酔狂なやつだな」
男2人、女2人の4人組は店の前で話していた。
神獣というのは名前の通り神の獣、この世界の神様が司っている動物を神獣という。
今いる森はその神獣が生息しており、神に近い獣の近くは恐れ多い、また種として強い獣が多く存在するため、人がよりつくことなはない。
「あー、おれも聞いたことあるかも、都市伝説じゃなかったのかぁ…」
「その不思議なアクセサリーっていうのは?」
「なんでも、身に着けるだけで腕力が上がったり、魔法の威力が上がったりするらしいよ?」
「ふーん…能力アップ系のアクセサリーなのか…仕組みが気になるな」
「同意だな、魔法の威力は想像つくが、腕力があがるというのはどういう仕組みなのかは知りたいな」
「で、でも噂だよ…?」
「目の前に本物があるし、実際に確かめればいいだろう、幸い店は開いている」
女の一人が店のドアを指さすと確かに『Open』と書かれたプレートがあった。
辺境な立地だが、営業はしているようだ。
「噂でも何があるかはわかるだろ…さて、鬼が出るか蛇がでるか…」
男の一人がドアノブに手をかけ、店のドアを開けた。
店に入るとレジカウンターが最初に目に入った。
アンティークなレジに、うさぎみみの女の子のぬいぐるみが横たわっており、見る限り店員はいない。
左側は壁だったため、右側に目を向ければ、数々のアクセサリーが並んでいた。
机に置いてあるもの、ラックに飾っている物、ショーケースに飾っている物がある。
店は広くないため、ぱっと見た感じでもどこにも店員がいない。
本当に営業しているのか?4人がそう考えるなかで、ふと目の端に動く物が見えた。
その動くものを見ようと、カウンターへ目を向ける、その動くものは…
うさぎみみの女の子のぬいぐるみだ。
ぬいぐるみは、2本足で立ち、両手をぱたぱたと上下に動かしている。
動くだけで不思議なのに、何か伝えようとしている。
ぬいぐるみは両手を動かすのをやめ、レジカウンターの端に近づき、床を見ながら左右に頭を動かしている。
頭が2往復した後、両手を両ほほのところに持って固まっている。
何かびっくりしているように見えるその行動から5秒たったあと、何かを思い出したように手を打ち、
カウンターの奥へ飛び降りた。
どこにいったのかと思えば、カウンターと商品棚の間にある、『STUFF ONLY』と書かれた扉のヘリを器用に上り、ドアノブにぶら下がってドアを開け、そのまま扉の向こうにいった。
帰った方がいいのか、それとも待ったほうがいいのか、動くぬいぐるみの印象が強すぎてまだ呆けている4人だが、キイィと扉の音で、再び扉に注視する。
ぬいぐるみが消えたあと、扉は閉められていなかったため多少開いていたが、今はちょっとだけ大きく開いている。
そこから木の棒が現れた。
しかしよく見てみると、下の方は板がつけられており、パッと見た感じ看板のようであった。
看板が『STUFF ONLY』のドアから離れると、パタンと閉まる。
そのまま、カウンターのほうに近づけば、どうやらぬいぐるみが持って歩いていた。
ぬいぐるみは看板をカウンターに立てかけ、小走りでカウンターの裏に回り、すぐカウンターの上へと顔をだした。
立てかけた看板に手をかけ、勢いよく上にあげると…
≪お待たせして申し訳ありません!アクセサリー店 Animaへようこそ!商品は右手の方にございますのでごゆっくり見ていってください!≫
「すっごい丁寧だな!?」
この店のドアを開いた男が、そう叫ぶと看板の文字が≪ほえ?≫と変わり、ぬいぐるみも首をかしげるように、頭をちょっとだけ横に動かす。
その姿を見て、キャパオーバーした4人はしばらく固まっていた。
ここはアクセサリー店 Anima。
身に着けると能力が上がるアクセサリーを売っている不思議なお店。
通販などは行っていないため、欲しい場合はぜひご来店を。
店員のうさぎみみの女の子のぬいぐるみが丁寧に対応いたします。
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