旅立ち②

  眩い光の中上手くその場から抜け出した二人、しばらく走り続けて一呼吸をおいて来た道を振り向く。

  もう家は遥か遠くにあった。

  「リョウガ、あのまま黙って家を出てもよかったの?」

  先に口を開いたのはローザだった。

  「仕方ねーだろ、あーでもしなきゃ連れ戻されちゃうだろ、それに机の上に置き手紙を置いたから大丈夫だ」

  その頃、家に残された女性は酔いは治ったのか家の壁に寄りかかってタバコを吸って空を見上げていた。

  屋根の上に居た鳥が飛び立ちタバコを吸い終え、もう一寝入りでもするかと思い玄関へ向かうとリョウガの大剣が落ちているのを見つける

  「…仕方ね、届けてやるか…」

  そう思い肩を回し始める、やはり大剣だけはあって準備運動なしではきついのかと思いきや。

  その大剣を片手で掴み遠くを見るように目を細め

  「まだ、そんなところに居たのか」

  と笑みを浮かべながら呟くと、持っていた大剣を思い切り投げる。

  見た目とは裏腹に案外とこの大剣は軽いのか?と思ってしまう程に簡単に投げづけた。

  一仕事を終えたかのようにその女性は家に入ろうとした時、何かを思い出したが。

  「まー、大丈夫だろ」と一言を添え玄関の扉が閉じる。

  その頃、ダラダラと歩くリョウガとローザ

  「にしてもあの光はなんだったの?」

  「あれは閃光石だよ、部屋の灯りのやつ」

  ローザの質問に答えるリョウガ。

  「あれ結構な値段するよね…でも、どうしてあんなに眩くなったの?」

  「あれが壊れると中に蓄積していた光が一気に溢れ出すんだよ…きっと」

  そう答えるリョウガは実際に閃光石の仕組みを知らないからである、ではなぜ壊れると眩い光を放つ事を知っているのは。

  かつて閃光石を誤って落とし割ってしまった事があったからだ。

  そんなたわいも無い会話を続けていているとどこからか風切り音が耳に入る。

  音のする方に顔を向くリョウガ、何しているのと様子をうかがうローザ。

  次の瞬間、何かに気づいたリョウガは叫びローザを押し倒す。

  「ローザ、危ない!」

  押し倒され地面に伏せる二人。

  突如リョウガに押し倒され動揺するローザ、そして間も無くヅッガと地面に何か突き刺さり土煙を上げる。

  いち早くリョウガは立ち上がりローザに一言を添え手を差し出す。

  「大丈夫かローザ?」

  「う、うん」

  動揺しながらも差し出された手を握り立ち上がる。

  「まったく、いったいなんなんだ」

  そう不満を漏らし土煙が治るまでまつ。

  程なくして土煙が消えそこに見えた物は一つの大剣だったそれを見たローザは。

  「あれ、これリョウガの剣じゃ無いの?」

  その時リョウガは初めて気づく、自分の大剣を玄関の前に落としたきりだった事を、そして疑問に思い呟く

  「どうして俺の剣がここに・・・?」

  その疑問はローザが答える。

  「きっとリョウガのお母さんが届けてくれたんだよ」

  「まさか、家から投げてきたのか!」

  「相変わらず力持ちだねリョウガのお母さんは」

  「力持ちってレベルじゃねーだろ…」

  そう話していたリョウガの顔を青ざめ始める。

  「どうしたのリョウガ?」

  「これ、母さんが投げてきたってことは…こっちに向かっているかもしれない!」

  「そうかな…」

  家での真っ最中であることをすっかり忘れているローザにリョウガの深刻さを理解できないでいる。

  「街へ急ぐぞローザ!」

  「う、うん」

  そんなのお構いなしにリョウガはローザの手を取り街へ走り出す二人、もちろん今回は剣を忘れずに背中の皮でできたホルダーにしまってね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る